治療・手術
加藤 泰朗 2020.11.16

アプリを活用した遠隔診療で、糖尿病治療をサポート【遠隔医療のDX】

COVID-19で変わる受診行動への対応が課題


新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の感染拡大は、人々の受診行動の変容をもたらした。通院途中や院内での感染への不安から、受診を控える人が増え、オンライン診療への関心も高まった。こうした行動変容は、定期的な受診が必要な慢性疾患患者の治療に影響を与える可能性がある。

定期的な受診が必要な慢性疾患に、糖尿病がある。厚生労働省が実施した平成28年度の「国民健康・栄養調査」によると、糖尿病有病者と糖尿病予備群は、推計でそれぞれ約1000万人だという。糖尿病予備群を含めた数字は、成人の約5人に1人が糖尿病に罹患していることを意味するもので、現代の国民病と言ってよいだろう。

糖尿病は、定期的な受診(通常1〜2カ月に1回程度)を行えば、多くの場合、通常の生活を送ることができる。一方で自覚症状に乏しく、診療中断につながりやすいという側面もある。診療を控え、治療が中断されると、合併症を発症するなど、糖尿病が重症化する恐れがある。

糖尿病治療の実態の把握と改善を目的に設立された糖尿病データマネジメント研究会の統計資料によると、糖尿病有病者および治療を受けている患者のうち、血糖コントロールを行っていると想定される患者(HbA1c 7.0%以上)の割合は約5割に上る。定期的な受診機会が制限されがちのいま、患者の日常の健康をいかに管理するかは、重要な課題である。

クラウドベースで患者のグルコースデータを共有


2020年10月29日、アボットジャパン合同会社は、クラウド型の糖尿病患者データ管理システム「リブレ View」の提供を開始した。このシステムでは、同社の持続グルコース測定器「FreeStyleリブレ」で計測したグルコース(ブドウ糖)のデータを、クラウドベースで管理することができる。

「FreeStyleリブレ」は、上腕裏側にセンサーを取り付け、連続的にグルコースを測定・記録するデバイスだ。最長14日間装着可能で、グルコース値を毎分測定し、15分ごとに機器(リーダ)に保存することができる。

医師は、「FreeStyleリブレ」で測定したデータをクラウド上で共有することで、遠隔でグルコースデータを経時的に確認でき、糖尿病患者の健康状態に基づいた糖尿病管理支援が可能になる。特に、薬を変えた、治療プランが新しくなった、あるいは血糖値を管理することが難しいなど、注意深く観察する必要がある患者のモニタリングに有用である。

システムに招待したほかの医療従事者とデータを共有することで、医療従事者間で連携しながら、効率的なチーム医療を実施することも可能だ。

遠隔での糖尿病治療支援を可能にする注目のサービス


オンライン診療のMICINとテルモが糖尿病治療支援アプリの共同開発を目指すと発表したことは、当サイトで既に報じたとおり。以下では、それ以外で遠隔診療に活用できる糖尿病治療サポートアプリを2つ紹介する。

H2社の「シンクヘルス」


「シンクヘルス」は、日々の健康状態を記録するアプリ。血糖値だけでなく、血圧や体重、服薬・食事の状況などが記録でき、糖尿病以外の慢性疾患患者の自己管理にも活用が可能だ。

医療従者者は、同社の「シンクヘルス・プラットフォーム」を導入することで、「シンクヘルス」に記録したデータを閲覧できるようになる。患者の毎日の健康状態に関する詳細なデータが得られることで、限られた受診機会でも、効率的で質の高い治療へとつなげることができる。

同社のHPによると、「シンクヘルス」の国内ユーザーは12万人(2020年10月現在)。アメリカの健康メディア「Healthline」で、「2019年血糖管理ベストアプリ」の一つに選出されている。

アークレイ社の「スマートe-SMBG」



「スマートe-SMBG」も、血糖値や食事、運動、服薬、体温、血圧、体温、インスリンなどのデータを記録し、管理することで糖尿病ケアをサポートするアプリだ。毎日のデータをグラフ化することで、視覚的に体調の変化を把握することができる。データはPDF形式で書き出せるので、印刷して医療機関に持っていくことで、医療従事者に日々の健康状態を正確に伝えるのに役立てられる。

また、同社の「e-SMBGクラウド」と連携すれば、クラウドサーバー上でデータ共有することも可能だ。

※※※

2020年6月に開催されたアメリカ糖尿病学会(ADA)のバーチャルミーティング(ADA2020)で、遠隔診療が2型糖尿病患者の血糖コントロールに有効だという報告がなされた。アプリによる糖尿病患者の健康管理の重要性は、今後ますます高まるだろう。


糖尿病データマネジメント研究会 基礎集計資料(2019年度)
http://jddm.jp/data/index-2019/
Intensive Use of Telehealth Improves Glycemic Control Among Rural Patients with Type 2 Diabetes
https://www.diabetes.org/newsroom/press-releases/2020/intensive-use-of-telehealth-improves-glycemic-control-among-rural-patients-with-t2d
印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
他カテゴリの記事を読む

DXによる医療・ヘルスケアの
変革を伝えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。