治療・手術
加藤 泰朗 2020.10.12

MR技術で実現!3次元オンライン診療が拓く未来の診療【遠隔医療のDX】

MR技術の活用で変わる診療のかたち


自宅にいながら、医師と対面しているかのように診療を受けることができる。そんな医療サービスの実現が、もうそこまできている。

順天堂大学は2020年9月17日に、世界で初めてとなる3次元オンライン診療システム「Holomedicne」を開発したと発表した。

3次元オンライン診療システム「Holomedicine」(プレスリリースより)

システムを開発したのは、同大学大学院医学研究科神経学の服部信孝教授、大山彦光准教授、関本智子非常勤助教らの研究グループ。システムに使用するのは、MR(Mixed Reality:複合現実)用ヘッドセット「HoloLens」と、マーカレス3次元モーションスキャナー「Kinect v2」だ。

Kinect v2を使って患者の3次元動作をデータ化し、離れた場所にいる医師が装着するHoloLensに送信。HoloLensを介して再構築され、現実世界に投影された患者のホログラムを見ることで、医師はあたかも患者が目の前にいるかのように診療を行うことが可能になる。MR技術を活用した新しい診療のかたちだ。

2次元的な診療方法に不向きな病態に対応


新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、4月から時限的ではあるが、我が国でも従来は認められていなかった初診患者を含めたオンライン診療が全面的に解禁された。この流れのなかで、オンラインを活用した新しい診療スタイルが生み出されてきている。当サイトでも紹介した、慶應義塾大学病院が実施しているオンライン妊婦健康診査などは、その例である。

ただしこれまでのオンライン診療は、電話を使った音声や、ビデオ通話などを使った2次元的なものが主流だ。

一方で、2次元的な診療方法では十分には対応できない病態もある。パーキンソン病患者の運動症状などもその例で、ビデオ通話機能を使ったオンライン診療では医師が患者の状態を詳細に把握しづらいなどの課題があった。

今回、開発した3次元オンライン診療システムを用いてパーキンソン病の運動症状のスコアを評価したところ、対面診療で評価したスコアと相関関係にあるという結果になり、このシステムが対面診療の代わりになり得ることが示されたという。

5Gの普及が実現のカギ


3次元オンライン診療の実現に、環境も整いつつある。

MRをはじめ、AR(augmented reality:拡張現実)やVR(virtual reality:仮想現実)といった新しいデジタルテクノロジーは、その性質上、どうしても扱うデータ量が膨大になる。遠方にある患者の自宅で記録した3次元動作データを診療の場にリアルタイムにつなぐためには、高速で大容量を扱える通信網が必要となる。

2020年の今年は、日本の「5G(第5世代通信システム)元年」として位置付けられ、さまざまな5G商用サービスが開始され始めている。

世界に大きな遅れをとっている我が国の5G運用。今後どの程度発展・普及するかは、3次元オンライン診療実現・普及のカギとなるだろう。

コロナ禍後も広がる3次元オンライン診療の役割


新型コロナウイルス感染症の終息はまだまだ見通せない。早期に3次元オンライン診療が実現すれば、通院時の感染リスクを減らすことに役立つことは間違いない。

もちろんアフターコロナの世界でも、3次元オンライン診療が果たす役割は大きい。

たとえば、パーキンソン病のような進行性の運動障害をきたす神経変性疾患に罹患しており、通院が困難な患者にとっては、通院の時間や移動にかかる費用を軽減につながると、順天堂大学の研究グループは考えている。

現在は患者が撮影した動画をもとに評価・指導を行っているリハビリテーション医療領域でも、3次元オンライン診療の活用が見込めるのではないだろうか。

同グループは、今後はさらに、システム改良を進めるという。さらに、診察時の3次元動作情報データをクラウドデータベースに蓄積して、AIによる機械学習・深層学習を用いた運動障害疾患患者の動作情報の解析を進め、パーキンソン症状やその他の神経症状を自動判定できる診断補助アルゴリズムの構築に応用する予定だ。

3次元オンライン診療が当たり前の診療スタイルのひとつとなる日は、そう遠くないかもしれない。


「3次元オンライン診療システムを開発」
https://www.juntendo.ac.jp/news/20200917-01.html
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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