治療・手術
Medical DX編集部 2021.11.26
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

もう一度オンライン診療の本質を見直そう【加藤浩晃先生に聞く】

2021年10月7日、厚生労働省において、「第17回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が行われ、初診からのオンライン診療の取り扱いについて話し合われた。しかし、構成員の間で処方医薬品の制限をはじめとするいくつかの論点において意見が分かれ、指針の改定は持ち越しとなった。早い時期に再度議論を行うとみられる。

こうした既報のほかに注目される点を、加藤浩晃先生にうかがった。

オンライン診療は「普及」させるべき


加藤:まず、2021年の4月から6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果が出されました。以下の図をご覧ください。

厚生労働省ホームページ 第17回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会「資料1 令和3年4月から6月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」より抜粋

加藤:今年の6月末時点までで、電話や情報通信機器を用いた診療を行えるものとして登録された医療機関の数が、16,872と全医療機関に対して約15%、初診からの対応を行っているのが7,178で6.4%という数字が出ました。昨年の6月以降、ほぼ横ばいの数字となっています。

また、6月まででオンライン診療の研修を受けた医師の数が約3万人となり、現在日本に約30万人の医師がいることを考えると、1割が研修を修了したことになります。

──この流れの中で、導入医療機関数を増やすには、どういった施策が必要か、ということも論点のひとつになったようですが、先生はどうやったら導入が増えていくとお考えでしょうか。

加藤:うーん……まず、私はこれまで何度も述べてきたとおり、オンライン診療を日本に「普及」させなければいけない、と考えています。

でも、その「普及」というのは「導入」機関数を増やす、というのとは別の話だと思っています。「普及」とは、オンライン診療を受けたいと思っている患者さんが、診療を受けられるというニーズを満たすものであって、単純に多くの医療機関にオンライン診療を「導入」すればいいというものでもないと考えています。

外来診療の代替ではない


加藤:これもお話ししてきたことですが、オンライン診療は、ひとつの「診療形態」だと考えています。

診療にはこれまで大きく3つのかたちがありました。対面の外来診療、入院診療、そして在宅診療です。そして、新たに4つ目の診療形態として加わったのが、オンライン診療ということになります。

……と考えたときに、そもそも入院診療という形態は、すべての医療機関で行っているわけではありませんよね? 在宅診療もすべてのクリニックが行うわけではないわけです。それぞれの形態に沿った病院が、患者さんそれぞれの必要性に応じた診療を提供しています。オンライン診療も同じなんですよね。

つまり、オンライン診療は外来、入院、在宅というこれまでの診療のかたちと、並列に語られる必要があると思っています。

──コロナ禍における規制緩和があったことから、どうしても、オンライン診療を外来診療の代替として捉えられてしまいがちですが……。

加藤:オンライン診療は外来診療を補完するとされる診療形態なのですが、代替手段ではなく患者さんが受けることができる新たな診療の形態なのだと思っています。外来診療だけではまだ課題として残っていた患者さんのニーズに対応する新たな手段ととらえられるのではないでしょうか。そのため、4つの診療形態の持っているかたち──適用できるもの、できないものも含めたさまざまなポイントを、4つの診療形態を並列にした状態で比較できたほうがいい。そのうえで、オンライン診療を求める患者さんのニーズを確認することが重要だと思います。

──単純に病院への「導入」を求めるのではなく、必要となる患者に向けての「普及」は別ものということになりますね。

加藤:そうなりますね。そのふたつを整理して議論する必要があると思います。10月24日付けの日本経済新聞の記事では、独自で「患者数ベースの普及率」を割り出して、アメリカではコロナ禍の規制緩和によってネット経由の診療が全体の6割、イギリスでは7割の比率に増えた、と書かれています。日本でもこの患者数ベースの数字を割り出すことができれば、より具体的なニーズがわかっていくかもしれないと考えています。

──ニーズということになると、実際にオンライン診療を使った人たちの声も聞きたいところですね。

加藤:たしかに、オンライン診療を始めている医療機関の方、実際に診療を受けた患者さんに、どこが良かったか、やりづらかったか、といった具体的な意見に関しては個々では集められていますが、まとまって集められていません。まとまった意見によって、より建設的な議論ができるといいと思っています。

いずれにせよ、ここへきて指針に関する議論が、だいぶ細部にまで至ってきました。この指針決定を経て、2022年の診療報酬改定に入るため、近々の日程で議論が行われることになるでしょう。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。2021年一橋大学大学院金融戦略・経営財務MBA(経営学修士)。専門は遠隔医療AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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