治療・手術
Medical DX編集部 2020.12.30

ヘルスケア分野に根付くクラウドサービス〜AWS(Amazon Web Services)が描く未来

あらゆる分野で活用されるAWS


クラウド・コンピューティング(クラウド)サービスは、言うまでもなく、インターネットをはじめとしたネットワーク経由でユーザーにサービスを提供する形態のことだ。ネットワークにつながってさえいれば、ユーザーは必要な時に必要なサービスを受けられる。なによりも、多くの作業を効率化することができ、個々の専門的な業務にマンパワーをふりわけられるのが大きなメリットだ。

2006年に当時GoogleのCEOだったエリック・シュミットによるスピーチをきっかけに生まれたこの言葉は、社会に衝撃をもって受け止められ、「クラウドサービスは、近い将来社会の基盤となる」という可能性が唱えられてきた。

だが、当初はあくまで「近い将来の理想像」としての思想として捉えられることが多く、ことに長い歴史をもつ業界には、セキュリティ面や、システムの大幅な変更への懸念などが先に立ち、即座に取り入れられることは少なかった。

こういった風潮も、技術やインフラの発達によって変わってきた。2012年にはアメリカのNASDAQ・北欧のOMXというふたつの証券取引所が統合したNASDAQ OMXグループ(現・NASDAQ)が、金融業向けのクラウドコンピューティングプラットフォーム「NASDAQ OMX FinQloud」を開始。なによりもセキュリティを重んじる業界において、クラウドサービスが開始されたことは大きく、数年後には金融業界で多くのクラウドサービスが立ち上がり、日進月歩の進化を遂げつつある。

この「NASDAQ OMX FinQloud」がインフラとして採用したのが、Amazon Web Services(AWS)だった。AWSはその名のとおり、Amazonが提供しているクラウドサービスで、2006年に設立された。現在では世界に数万社、日本でも670社以上のパートナー企業を持ち、毎月世界で数百万のユーザーが利用するサービスとして成長した。

このAWSが活用される事例として、近年注目されているのが、医療・ヘルスケア分野におけるものである。

新しい医療の可能性〜デジタル療法普及のポイント


その取り組みがわかりやすく紹介されたのが、今年10月に開催された「CEATEC 2020 ONLINE」におけるアマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社 インダストリー事業開発部 プリンシパル(ヘルスケア・ライフサイエンス)佐近康隆氏によるセッション『医師が「アプリ」を処方する時代へ〜CureAppがAWSと切り開く新しい医療〜』だった。

左近氏はここで、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対して世界の取り組みを紹介、Telemedicine(オンライン診療)の急激な普及をあげた。さらに、アメリカではオンライン診療に重要な①遠隔で患者の健康状況を見ることができる「リモートモニタリング」、②これまでの紙の処方箋をデジタル化した「電子処方箋」、③ソフトウェアを使って病気を予防、管理、治療する「デジタル療法」の3つに関して、新型コロナの流行以前から普及の兆しは高まっている、と述べた。

とくに③のデジタル療法を「新しい医療の可能性」としながら、①②とも相互的に普及することが必要である、と左近氏は言う。

「デジタル療法ですべてやるわけでもないので、たとえば電子処方箋とオンライン服薬指導といったところの普及もすごく大切で、そちらもセットになっていると処方箋も電子での服薬指導を受けた後に遠隔での服薬管理といったことと、デジタル療法などさらに組合わさって、より患者さんに高い治療効果を出せるようになっていけると考えています」(左近氏)

このセッションには日本のデジタル療法のトップランナーでCureApp社の最高開発責任者(CDO)兼 医師の鈴木晋氏も登壇。「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー」を例に挙げ、治療用アプリの意義を解説した。

さらにはAWSを利用する理由として、アプリもフロントのサーバーもAWS CloudDevelopmentKitを用いることによってインフラもJavaScriptによって扱うことができることをあげた。

「また、米国の医療系サービスのセキュリティ水準に準拠しているというところも、説明責任を果たすのに安心材料となっております。さらにCloudTrailやSecurity Hubといった監査系の機能も充実しているということで、サーバーレス技術で費用削減と安定運用をしながら、セキュリティ規格の準拠、そして充実の監査ログのあるAWSのサービスが私達の治療アプリのサービスを支えているということになります」(鈴木氏)

さらなるAWSのサービス展開



このように、AWSのサービスは国内外のヘルスケア分野において重要な地位を築いている。

2020年12月8日には、アメリカ・シアトルで開かれた「AWS re:Invent」において、ヘルスケア・ライフサイエンス業界向けの新たなサービス、Amazon HealthLakeを発表。

多種多様なフォーマットのデータを医療情報交換の標準規格であるFHIRのフォーマットに落とし込んで一元化し、クエリ処理、分析、機械学習の実行を行いやすくすることができる。また、医療機関、研究者、製薬企業などは、データの傾向や異常を特定し、病状の進行状況、臨床試験の有効性など多くの用途において、従来よりも正確な予測を行うことができるとしている。

これによって、患者個々に最適な治療方法を促すプレシジョン・メディシンを、強く推進することも可能となるだろう。今後もヘルスケア分野における、AWSの動きに注視したいところだ。



アマゾン ウェブ サービス ジャパン株式会社
https://aws.amazon.com/jp/
Amazon HealthLake
https://aws.amazon.com/jp/healthlake/
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WRITTEN by

Medical DX編集部

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