予防
Medical DX編集部 2020.7.1

生活習慣病から感染症まで 医療はAIでここまで予測できる

■生活習慣病、認知症、ガンの再発リスクを予測〜クオリティ・オブ・ライフのために


AI(人工知能)の長所を簡単に説明するならば、情報処理能力の速さと、新たな情報を次々に取り込んで学習していく、最速の「予測」マシンということになるだろう。ヘルスケアにおける、こうしたAIによる予測のシステムが登場している。

まずは、生活の中にリスクがひそむ、生活習慣病の予測システムについて探っていこう。

SOMPOホールディングス株式会社、東芝などが共同開発しているのが、2型糖尿病・高血圧症・脂質異常症の3つの生活習慣病リスクを予測するAIだ。SOMPOホールディングスのヘルスケアサービスと、東芝のビッグデータ解析技術を結集し、100万人の健診データをもとに、重症化予防への健康指導などに活用することを目指している。

同じく東芝は、2019年よりジョンズ・ホプキンス大学と共同で、心臓病発病のリスクを予測するAIの開発を始めた。開発より3年以内の実用化を目標にしているという。

さらに、認知症予測への取り組みも各所ではじまっている。

例えば、株式会社ERISAはAIを脳MRI(核磁気共鳴画像法)画像の解析に利用している。認知症のリスクを解析する早期認知症画像診断支援プログラムを、島根大学などと共に研究・開発。また、滋賀医科大学とアルツハイマー病に進行するMCI患者を識別する技術も共同で特許出願している

さらには、人間が見つけられないようなガンの特徴を、AIが学習し発見する、というガンの再発を予測するシステムも理化学研究所によって発表されている。

いずれも、健康的な老後、クオリティ・オブ・ライフの向上のためのヴィジョンであるといえるだろう。

Shutterstock

■パンデミックを防ぐためのAI予測


現在最も関心を集めているのは、AIで感染症の広がりを予測する試みについてではないだろうか。近年パンデミックを起こした感染症でも、その感染予測をAIで行っている例が多数ある。

例えば、マレーシアとアメリカを拠点とするスタートアップ企業「AIME(エイミ)」は、デング熱、ジカ熱などの流行を、AIでその時点の状況、条件を解析し、3カ月先の流行拡大を予測できるシステムを作り出した。ちなみに2019年、その分析技術を評価した三菱UFJリサーチ&コンサルティングが、感染症をはじめとしたヘルスケアのデータ解析分野で事業締結を結んでいる。

人の移動、生活、そして気象など、できるかぎりのデータを集取し、AIが情報処理を担い、そこからはじき出された動向をもとに、予測をする……というのが、一般的なAIによる状況予測の流れだ。

収集されるデータは、なにも環境証拠だけではない。ハーバード大学医学部ジョン・ブラウンスタイン博士らが開発した「Healthmap(ヘルスマップ)」は、政府発表や医師からのデータのみならず、SNSに投稿された内容も重要視している。

これは、感染されたと思われる地域での投稿を解析し、感染者の性別・年齢分布、動向までをも分析できるようにするというものである。

■医療データだけではない!SNSが感染を予測?


カナダのブルードット社もSNSなどのデータを自然言語処理と機械学習で解析し、感染症が流行している地域を導き出し、その拡大リスクを解析するシステムを有している。この技術によって、世界保健機関(WHO)のアラートよりも早く、今回の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染拡大を予測していたという報道がなされている。

いずれも、こうした取り組みのきっかけは、2003年暮れ以降、世界的に流行したSARS(重症急性呼吸器症候群)だったという。

日本では東日本大震災の経験をもとに、AIでSNSから災害情報・危機管理情報を収集・解析してきたベンチャー・株式会社Spectee(スペクティ)が、SNSから新型コロナウイルスの感染状況を監視するシステムを開発している。

スペクティのAIを活用したSNS解析による新型コロナウイルスの感染状況監視システムのイメージ

世界的に流行した新型コロナウイルスを契機に、AIでの予測医療の動きはさらに進んでいる。

AIは確かにすぐれた処理能力を持つものだが、データをどう収集し、どう活用するかは人間、データ・サイエンティストが考えるものである。データを適切に判断する人材を、どれだけ育てられるか。医療においても、データ・サイエンティストが重要な意味を持ち始めているのだ。


東芝:糖尿病などの生活習慣病リスクを予測するAIを共同開発
https://www.toshiba.co.jp/about/press/2018_10/pr_j1901.htm
東芝 研究開発センター:研究開発ライブラリ ジョンズ・ホプキンス大学と共同で心臓病の発病リスク予測AIの開発を開始
https://www.toshiba.co.jp/rdc/detail/1911_04.htm
認知症早期発見プログラムのアジア展開を目指し、メディカル・ケア・サービス株式会社と共同研究契約を締結 | 島根大学医学部
https://www.med.shimane-u.ac.jp/docs/2018041100014/
アルツハイマー病に進行するMCI患者を識別する技術に関する国内特許を取得|株式会社 ERISAのプレスリリース
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000007.000041196.html
AIME Healthcareとの覚書締結について | 三菱UFJリサーチ&コンサルティング
https://www.murc.jp/publicity/news/news_190924/
Flu & Ebola Map | Virus & Contagious Disease Surveillance
https://healthmap.org/en/
AIを活用したSNS解析による新型コロナウイルスの感染状況監視システムを開発、関係機関に導入 | スペクティ(株式会社Spectee)
https://spectee.co.jp/news-release-20200206/
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Medical DX編集部

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