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加藤 泰朗 2021.5.26
世界の医療DX事情

アフリカのイノベーションをリードする南アフリカとモロッコの医療DX

CONTENTS
  1. ■アフリカのイノベーションをリードする3国
  2. ■患者と医療関係者をつなぐヘルスケアプラットフォーム
  3. ■医療従事者間で情報共有し、医療格差の是正に貢献

■アフリカのイノベーションをリードする3国


世界の国々で進められている医療DXを紹介するこの連載。今回も引き続きアフリカでの注目のサービスを紹介する。

アメリカ・コーネル大学、フランスのビジネススクール・インシアード、世界知的所有権機関(WIPO)が発表した、イノベーション能力ランキング「グローバル・イノベーション・インデックス(GII)」2020年版によると、アフリカ最上位は南アフリカで、131カ国中60位である。南アフリカ以外で80位までに入っているアフリカの国は、チュニジア(65位)とモロッコ(75位)だけである。

そこで今回は、この3国のうち、医療分野でのデジタルイノベーションが進んでいる南アフリカとモロッコのサービスについて、「D to P(Doctor to Patient)」「D to D(Doctor to Doctor)」を切り口に見ていくことにする。

■患者と医療関係者をつなぐヘルスケアプラットフォーム


南アフリカのGuardian Health社のサービスは、患者と医療従事者、薬局、検査機関とのあいだをつなぐヘルスケアプラットフォームである。プラットフォームへの入り口は、患者向けの「Guardian Health」と、医療者向けの「Medical Guardian's」の2種類がある。

患者は「Guardian Health」で、クリニック/遠隔診療の予約、遠隔診療用のデジタル処方箋の発行、オンライン/オフラインで使用できる健康データ管理などのサービスを受けられる。医療従事者は、「Medical Guardian's」を通じて自分の個人情報、学歴、提供できる医療サービスなどを登録することで、「Guardian Health」を利用する患者へのアプローチが可能になる。

Guardian Health」は患者向けのヘルスケアプラットフォーム

「Guardian Health」は2020年、ポストコロナ世界で南アフリカの人々がよりよい生活を送るための新しい技術ソリューションを探す仮想コンペ「Hackathon Life 2.0」で最優秀賞を受賞している。

アフリカの西部、大西洋に面するモロッコの最大都市カサブランカに本社をもつDabaDoc社の提供するサービスは、アフリカ初のオンライン医療予約管理プラットフォームである。DabaDoc社の設立は早く、2014年。患者と医師とをマッチングするプロセスを簡素化し、患者の予約体験と医師の予約管理を向上させるサービス提供をめざしている。

検索できる医師は、歯科医、婦人科医、小児科医、糖尿病専門医、眼科医、精神科医など、10の診療医。モロッコだけでなく、アルジェリア、チュニジア、ナイジェリア、南アフリカで、患者は24時間365日無料で、オンライン相談や遠隔診療を予約できる。

さらに、「DabaDoc」を使用する医師や医療専門コミュニティ向けの「DabaDoc Pro」、ビデオ会議による医療遠隔相談サービス「DabaDoc Live」などがある。

■医療従事者間で情報共有し、医療格差の是正に貢献


南アフリカのMafami社の「Vula Medical Referra」は、地域の医療施設で働く医療従事者と専門医とを直接つなぐアプリである。南アフリカでは医師が不足しており、農村部では必要かつ十分な医療を受けられないケースも少なくないという。「Vula Medical Referra」はそうした医療アクセスの格差を埋めるものである。

地域の医療従事者がアプリで医療施設を検索し、照会したい患者の情報を送信すると、専門医から患者の状態に関するフィードバックや、患者を地元で治療するか他施設へ転院すべきかなどの意見を得られる。必要な場合はチャットでのやりとりも可能だ。

すでに約20,000人の医療従事者がこのアプリを利用して、350,000人以上の患者を照会し、アドバイスを受けているという(2021年5月時点)。

2021年には、国連開発計画(UNDP)が主催する「The Sustainable Development Goals(SDGs)Finance Geneva Summit」において、「質の高い医療へのアクセス(Access to Quality Health)」部門のファイナリストに選ばれている。

モロッコのeヘルスケアスタートアップ、PocketDoc社が提供するモバイルアプリ「PocketDoc」は、医師や医療従事者、医学生向けの医療意思決定支援ツールである。

PocketDoc」の画面イメージ

23の医療専門分野をカバーし、モロッコで販売されている医薬品の情報、280以上の病態についての診断から処方までの情報、医学用語データベースなど、信頼できる実用的な医療情報に素早くアクセスできる。2018年10月の公開からわずか10カ月で17,000人以上の登録ユーザーを獲得している。

今回は取り上げなかったもうひとつのアフリア・イノベーション先進国チュニジアでも、遠隔医療用ロボットやてんかん患者の発作を予測するAI搭載のブレスレット、尿失禁対策機器など、デバイス開発が進んでいる。また、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策として、赤外線カメラで患者の体温と酸素濃度などを測り、第一診断を行うロボットが実用化されている。

2022年にはアフリカ開発会議(TICAD)がチュニジアで開催される。これを機会にチュニジアでの医療DXがより広範囲に広がることも期待される。今後の動きに注目したい。


WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。

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