ニュース
加藤 泰朗 2020.12.10
遠隔医療のDX

医療DXは離島医療の救世主になるか!?〜新型コロナで浮き彫りになった課題に立ち向かう

オンラインアシスタントで離島での人材不足を解消


2020年12月、北海道南西沖の奥尻島で新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のクラスターが発生した。人口が約2,500人の奥尻島には、COVID-19の患者が入院可能な医療機関がなく、船による患者の島外移送が行われるという対応がとられた。

離島の医療は、医療施設が島の大きさに応じた規模になりがちのうえ、医療従事者を島内で確保することが難しいなど、さまざまな課題を抱えている。今回の奥尻島でのクラスター発生は、それらをあらためて浮き彫りにするものだった。

こうした離島の医療環境に、DXで挑戦している医院がある。沖縄県の石垣島の皮膚科・美容皮膚科のクリニックである「愛島(あいらんど)クリニック」だ。

愛島クリニックでは、診療フロー改善の目的で、クラウド電子カルテを導入したり、スタッフにiPadを配布し全員が同時にカルテを閲覧編集できる仕組みをつくるなど、早くから業務のデジタル化を進めてきた。

ただし、デジタル化を進めても、経費精算や給与計算など、人の手に頼らざるを得ない業務が残り、こうした業務をいかに効率化するかが課題だった。

この課題を解決するために導入したのが、「オンラインアシスタント」というサービス。経理・秘書・総務など、おもにWeb上で業務を幅広く代行してくれるものだ。

数ある「オンラインアシスタント」のサービスのなかから愛島クリニックが選んだのは、株式会社キャスターの「CASTER BIZ」というサービスだ。

CASTER BIZは、メール返信やスケジュール調整のような秘書業務から、人事採用、経理、Webサイトの運用代行や素材制作など、日常業務から専門業務まで、あらゆる仕事をオンラインでサポートするサービスである。同社のHPによれば、三井不動産やメルカリ、Chatworkなど、累計で1700社以上のさまざまな業種の企業が、サービスを導入している。

愛島クリニックへのサポート内容は、以下のもの。

  1. マネーフォワードへの仕訳登録
  2. ジョブカン勤怠管理における打刻・残業エラーのチェック
  3. 仮シフトの作成
  4. 診療カレンダー作成
  5. ポスター作成
  6. ホームページの更新、など

導入によって、クリニックの常務理事自ら行っていた業務をオンライン支援に切り替えることができ、常務理事は組織を成長させるための業務改善や組織改革に注力できるようになったという。

また、約4年前の14名から9名まで従業員数が縮小したものの、診療患者数は増加傾向にあるなか、医療提供体制は維持できているという。効率化で得られた利益は、従業員へは報酬として還元し、やりがいを感じてもらえる職場環境づくりを進めているとのことだ。

愛島クリニック 常任理事木村 栄延氏(株式会社キャスターのニュースリリースより)

離島の課題に挑戦! 「スマートアイランド」プロジェクト


デジタル技術を活用して離島の抱える問題を解決しようという動きは、国主導でも進められている。

2020年9月18日に国土交通省は、ICTやドローンなどの新技術を離島地域に実装し、離島ならではの問題を解決するプロジェクト「スマートアイランド」の実証調査を開始すると発表した。

対象となる地域は、つぎの10地域。

  • 東京都八丈町(八丈島)
  • 愛知県南知多町(日間賀島など)
  • 三重県鳥羽市(神島など)
  • 島根県海士町(中ノ島)
  • 広島県大崎上島町(大崎上島)
  • 香川県三豊市(粟島)
  • 長崎県新上五島町(中通島など)
  • 長崎県五島市(福江島など)
  • 熊本県上天草市(湯島)
  • 大分県佐伯市(大島)

これにより、小規模分散型エネルギーの創出・活用、低コスト自動運転・オンデマンド予約を活用した島内交通・物流確保の効果検証など、各地域の実情に合わせたさまざまな事業の実証調査が進められることになった。

離島の医療DXについて実証調査を進めているのは、三重県鳥羽市、香川県三豊市、そして大分県佐伯市などだ。

TRIMetバーチャル鳥羽離島病院実証プロジェクト プレスリリース[PDF]より

三重県鳥羽市の「TRIMetバーチャル鳥羽離島病院実証プロジェクト」は、セコム医療システムを代表団体とし、鳥羽市と共同で設立したTRIMet推進協議会が推進する事業である。鳥羽市のHPによると、答志島、菅島、神島、坂手島の4島を中心に、離島全体の診療所をICTで連携して一つの「バーチャル鳥羽離島病院」とみなし、運用を目指すという。

具体的には、クラウド型電子カルテ「セコムOWEL」を導入し、離島の患者情報の一括管理を実現する。また、遠隔診療支援システム「セコムVitalook」を使って、電子聴診器や血圧計、心電計などのデバイスで測定した患者のバイタル情報をリアルタイムに医師に転送し、ビデオ通話機能を利用してオンライン診療を行う。これらにより、診療所を受診できない患者の健康状態をリアルタイムでモニタリングし、質の高い見守り診療とグループ診療体制を構築するという。

香川県三豊市の「粟島スマートアイランド推進プロジェクト」は、「移動」「医療」「物流」という観点から持続可能な島内インフラを確立し、島民が豊かに暮らし続けられる環境を創出することで、離島地域の活性化を目指すものだという(三豊市のHPより)。

医療分野では、診療所に医師が不在のとき、本土の医師とオンラインで会話や診療を行い、服薬を含めた診療を行うなど、離島における遠隔医療システムを構築することで新しい医療体制の確立を目指している。

大分県佐伯市の「遠隔医療・ドローン配送プロジェクト」では、ICTを活用して複数の診療所を連携し、遠隔医療やドローンによる医薬品配送を組み合わせて、地域医療サービスの構築を実証するもの。2021年1月から、佐伯市の離島、大島の診療所に遠隔医療用のタブレット端末を設置し、海を挟んだ佐伯市鶴見にある診療所の医師がオンライン診療を実施し、必要な処方薬をドローンで配送する実験を行う予定だ。佐伯市では2020年11月30日から12月2日の間に、農家で収穫した野菜を販売所までドローンで運ぶ実証実験を行っているが、医療分野での実証実験は、これが初めてとなる。

国土交通省によると、日本には、6,847島の離島があり(本州、北海道、四国、九州、沖縄本島を除く)、このうち、離島振興法による離島振興対策実施地域に含まれる有人離島は255島だという。離島での医療DXは、今後ますます拡大していくことが予測される。



国土交通省 令和2年度スマートアイランド推進実証調査が始動
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001363851.pdf
TRIMetバーチャル鳥羽離島病院実証プロジェクト
http://www.city.toba.mie.jp/koho/press-release/documents/1029smartiland.pdf
三豊市粟島スマートアイランド推進プロジェクト
https://www.city.mitoyo.lg.jp/kakuka/seisaku/koutsuu/1_2/6249.html

 
印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
他カテゴリの記事を読む

DXによる医療・ヘルスケアの
変革を伝えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。