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Medical DX編集部 2020.9.30

【加藤浩晃先生に聞く】コロナ禍におけるオンライン診療の実績をどう見るか?

遠隔医療やデジタルヘルスの可能性を追求してこられた医師の加藤浩晃先生に、現状や、未来についてうかがう新連載。

その1回目は、オンライン診療の現況について。

厚生労働省は8月6日、「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行下における特例措置として認められている、初診からのオンライン診療について、さらに3カ月延長することを認めた。

その際に、検討会に提出された資料が厚生労働省のホームページで公開されている。
今回は、この資料から、オンライン診療の実情を分析していただいた。

資料を読み解く鍵は「電話診療:オンライン診療=2:1」

【図1】【図2】

──まず、この取り扱っている医療機関の数のグラフ【図1】です。医療機関全体に対して、電話も含めてオンライン診療を行っている医療機関が7月末の時点で16,202(青)で全体の14.6%(灰色線)、初診から実施している医療機関の数が6,801で全体の6.1%です。私どもが見て、思ったより少ない数で推移していると思ったのですが、加藤先生からご覧になって、いかがでしょうか。

加藤:私の主観から申しますと、まず医療機関が110,898施設(4月末時点)あることを考えると、思ったより少ないな、と思っていました。これはオンライン診療推進側の私の意見かもしれませんが…。

──あくまで「オンライン診療」を受け入れますよ、という数値ですからね。

加藤:しかも、4月10日の特例で、オンライン診療=テレビ電話だった原則を、電話でもOKである、と解釈を広げたわけですから、もう少し取り扱う医療機関があってもいいのではないか、という所感です。

──都道府県別のグラフもあります【図2】

加藤:気をつけて見ていただきたいのは、棒グラフの医療機関の実数ではなくて、折れ線のパーセンテージなんです。たとえば、東京は単純にクリニックの数が多いので、実数としては多くなります。けれど、パーセンテージでいったら初診が7〜8%、再診では15%弱という数字になります。

そう考えると山形、徳島あたりは多く出ていますよね。導入に積極的な地域とそれほどではない地域というのが見て取れるのではないかと思います。初診と再診の差分というのも、注目すべきところかもしれませんね。患者さんのために再診はするけれど、初診からはちょっとハードルが高い、という部分があるのではないかと思います。

【図3】

【図4】

──【図3】は実際に医療機関で行われた初診の件数となります。政府によって緊急事態宣言が解除されたのが5月25日ということで、6月はだいぶ落ち着いた時期に入ります。

加藤:これを見ると、5月、6月は電話とオンライン(テレビ電話)で、だいたい2:1という比率です。あくまで個人的な意見ですが、4月だけは「電話:オンライン=3:1」に見えますが、これは4月10日以降にオンライン診療のシステムを契約して、その月には間に合わず、5月くらいにシステムが整ったクリニックも多かったのではないかと思います。ですから、2:1くらいというのが現在の妥当な数字なのではないでしょうか。

──さらに、【図4】年齢階層別の受診者の割合です。

加藤:受診者数がいずれも0歳から30歳までで半分を占めています。外来受診率は高齢者と乳幼児で高く、若年層では低いです。この層は、基本的には、普段病院にかかる人ではなく、本来のボリュームゾーンは60代以上というところになるはずなんです。そういうボリュームゾーンではない人が半分を占めていることは注目できます。

【図5】

【図6】

──さらに初診について、患者さんの疾患をグラフ化した【図5】ですが、発熱、上気道炎が多く、一般的に「風邪」といってしまう症状が多いのかと思いますが……。

加藤:そうですね。【図6】「過去の診療記録(基礎疾患の把握)の有無・年代別」のグラフと合わせて見ていただくと、患者さんが今まで通ったことのあるクリニックで、オンライン診療を活用されているケースが多いことがわかります。

他院からの紹介も「診療記録あり」に含めるのですが、基本的にはかかったことのある医療機関で、というケースが多いのではないかと思います。また、かかりつけの医療機関であっても、新たな疾患の場合は、このグラフだと初診の扱いになります。ですから、10歳未満、60歳以上の方が、最近は元気だったけれど、ちょっと風邪的な症状が出ている。けれど、コロナ禍にあって病院へ行くのがちょっとはばかられる。そこで、過去に行ったことのあるクリニックでの、オンライン診療を活用された、というようなケースが多かったのではないかと推測できます。

【図7】

【図8】

【図9】

【図10】

──【図7】は電話・オンライン診療における主な診療科の内容ですが、内科・小児科・皮膚科で8割ほどを占めている状態ですね。

加藤:お子さんが多いということを考えますと、やはり風邪、そして湿疹などは多くなる傾向にあるでしょう。また、先ほど実数の比率が「電話:オンライン=2:1」であったことも踏まえると、内科の初診で、電話診療の実数がかなり多いということがおわかりいただけるかと思います。それでも皮膚科に関しては画像ありのオンライン診療が多いというところですね。

──これらのほかに、こういった診療科でオンラインが活用されれば、ということはありますか?

加藤:海外では精神科のオンライン診療が多く行われているんですね。初診から向精神薬が出せないということはありますが、基本的には問診なので、カウンセリングなど、最初に受診するアプローチとしてはオンラインに合っているのではないかと思います。

──【図8】「医師が医学的に可能と判断した範囲」の適切性について、その主な疾患及び報告件数です。さらに【図9】は、総件数に対しての電話診療・オンライン診療の実数というところになりますが、やはり湿疹、ざ瘡という皮膚科の件数が増えています。

加藤【図9】のグラフの長さは、電話:オンライン=2:1となっていますので、そこは注意してみなくてはいけませんが、それでも「基礎疾患の把握なし」、情報がないという状況で、オンライン診療で湿疹が多く診られていることは注目すべきでしょう。

この資料を見るときに、全体的に2:1という数字は頭に置いておいてほしいんですね。たとえば【図10】「疾患・症候に対して対面の受診を勧奨した件数」では、発熱、上気道炎などが顕著ですが、「電話:オンライン=2:1」であることを考えても、電話のほうが患者さんに受診勧奨をする割合が多かったわけです。これは、医師が会話だけではなく、テレビ電話の映像も含めて、患者さんの状態を見られる方が、より判断材料が増えているということが示されています。

オンライン診療は「キャズム」を超えることができるか


──8月から0410の特例が3カ月延長となりました。そんななかでオンライン診療のサービスが次々と登場してきていますが、最も大きなニュースとして「LINEドクター」が11月からサービスを開始するというニュースがありました。ある程度インフラが整っているLINEを使用することで、またオンライン診療に広がりが出てくるのではないかと想像していますが……。

加藤:これまでオンライン診療をやろうとしていたけれど、導入に伴う負担があるのではないか、という部分で足踏みをしていたクリニックとしては、一歩踏み出す要因になるかも知れませんね。LINEだったら一般の方の認知度も高い、というイメージの要素も大きいでしょうし。今の状況は、マーケティング用語でいうと、「キャズム」をどうやって超えるか、という段階だと私は考えています。

──サービスを一般的に普及させる場合に超えなければいけない溝(=キャズム)。イノベーター(革新者)、アーリーアダプター(初期採用者)という16%程度の初期市場を超えて広がるには大きな溝があるという理論ですね。

加藤:はい。いちばん最初のグラフで、16,202軒のクリニックが再診で「オンライン診療」を行っていると出ていましたが、これは日本全体のクリニックの総数に対して18%未満。この場合の「オンライン診療」には電話診療も入っていますから、テレビ電話を使った厳密な意味でのオンライン診療はもっと少ないわけです。ここに「LINEドクター」が入ることで、他のオンライン診療サービスも含めて、「キャズム」を超えることができるのではないかと期待しています。


※本稿の図表は、いずれも厚生労働省ホームページ「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」での掲載資料よりの引用。
https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_12769.html

プロフィール
加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。
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