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Medical DX編集部 2020.9.1

オンライン服薬指導と地域医療~阪神調剤薬局八鹿店の取り組み

服薬指導を含むオンライン医療全体の充実に向けて、制度的対応などの取り組みを進めることが閣議決定されたのが2018年。19年には改正薬機法においてオンライン服薬指導が法整備化され、20年9月1日から施行されることとなった。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大により状況が一変。4月10日には「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」が厚生労働省から出され、具体的に「電話等による服薬指導」に関する時限的な対応(「0410対応」)が示された。

こうした状況から前倒しとなったオンライン服薬指導の現場においては、まだまだ混乱があるとも聞く。そこで、2019年から国家戦略特区を活用した薬剤師によるオンライン服薬指導に取り組んでいる兵庫県養父市の阪神調剤薬局八鹿店管理薬剤師・川瀬章さんに、その現状と今後の展望などを聞いた。

■地域の将来のためにオンライン服薬指導に取り組む


ーー阪神調剤薬局八鹿店がオンライン服薬指導に取り組まれるようになった経緯から教えてください。

川瀬:養父市は中山間地に位置していて、農村の伝統文化を礎にしているところです。そうした地域の背景もあって、国家戦略特区の制度を活用して、農業生産法人の要件緩和などに取り組んできた実績があり、オンライン医療の必要性も高まっていくだろうということから、市が取り組んでいこうとしていました。市内の調剤薬局をすべて訪問されたり、薬剤師会養父ブロック会で説明会を開かれたりしていて、兵庫県が発祥の地である弊社としても、また地域に信頼される薬局を目指している当薬局としても、養父市の将来のためになることだという思いから、ぜひ挑戦しようということになりました。

ーー実際にオンライン服薬指導は、いつから、どういった流れで行っていますか?

川瀬:当薬局では2019年7月からです。流れとしては、患者様がオンライン診療を受診されると、特定処方箋がFAXもしくはシステムを通じて薬局に届きます。その後、特定処方箋原本が郵送で送られてきて、患者様にオンライン服薬指導の希望日時を入力していただいてから、予約時間前に電話で患者様に連絡をとり、オンライン服薬指導を実施します。このとき、お薬の説明とともにお薬代・配送料をお伝えして、お薬到着確認の電話をする日時も決めます。その後、カード決済を確認してからお薬を配送、予定時間にお薬到着確認の電話を差し上げて、終了となります。

ーーオンライン服薬指導で使用されているシステムとは?

川瀬:自治体から提供されている、株式会社ミナカラのオンライン診療・服薬指導システムを使用しています。オンライン診療・服薬指導から医薬品の受け取りまでを一貫して管理・実施できるシステムで、当薬局ではノートパソコンを使って利用しています。

ーーコロナ禍において、オンライン服薬指導の利用状況などに変化は出ていますか?

川瀬:都市部の薬局などでは、通常のオンライン服薬指導よりも敷居の低い「時限的・特例的な対応」である「0410対応」が多く利用されるようになったと思いますが、当薬局ではコロナ前・コロナ後での変化はありませんでした。

■実感しているメリットと課題


ーーでは、オンライン服薬指導に取り組まれて実感されているメリットにはどのようなものがありますか?

川瀬:まず、患者様の都合のよい時間にゆっくりと服薬指導ができることで、家にいてリラックスできているからか、薬剤師に質問しやすい、話しやすいといった声を、患者様からも聞いています。画面に映り込む背景や部屋の様子から生活環境を把握できるのも想定していなかったメリットですね。以前処方したお薬の残り具合を見せてください、といったコミュニケーションもとれますし。またオンラインでは当たり前ですが、受診からお薬の受け取りまでをすべて自宅や職場で行えるので、患者さんにとっても、また薬局にとっても、時間の制約がなくなり、移動の負担が軽減されています。

ーーオンライン服薬指導は、今回のコロナ禍のような状況においても、また人口減少や高齢社会が進むこれからの状況においても、必須になってくるものだと思います。実際に現在取り組まれている立場から、課題や展望をお聞かせもらえますか。

川瀬:ご指摘のとおり、ウィズコロナと呼ばれるような時代においては、病院や薬局への訪問を減らせることで感染リスクも下げられるので、とくに都市部においては需要が高まるのではないかと思います。また、オンラインであれば治療の中断も避けられるので、治療継続をしやすくなるでしょう。

一方、人口減少や高齢化の激しい地方では、自分で病院や薬局に通うことが難しいという患者様が増えていくでしょうから、オンライン診療やオンライン服薬指導の必要性が高まっていくだろうと思います。また、地方では乏しい医療資源の有効活用にも役立つでしょう。

現状の課題としては、オンライン診療の疾患対象の幅などがまだ狭いかなと感じています。これらが広がれば、オンライン服薬指導ももっと活用されやすいものになるのではないでしょうか。あと、オンライン服薬指導で使用する機材などのハード面に慣れていない患者様が多いので、そのあたりのフォローができる体制づくりも重要でしょう。また、現状はオンライン診療からお薬をお届けするまでに4~5日程度のタイムラグが生じています。システム的な問題もありますが、これは改善できればと思いますね。

オンライン服薬指導が広がっていけば、調剤薬局業務は通常の店舗での服薬指導とオンライン服薬指導、そして在宅訪問の3本柱になっていくのではないかと思います。そうすると、さまざまな患者様のニーズにより細かく対応でき、フォローできるようになるのではと思っています。


<プロフィール>
川瀬章(かわせ あきら)
I&H株式会社阪神調剤薬局八鹿店管理薬剤師。兵庫県養父市に生まれ、親の代から当地で長らく薬剤師として勤める。
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WRITTEN by

Medical DX編集部

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