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Medical DX編集部 2022.11.18

医療DX推進に不可欠な、データの利活用に横たわる「時間」の壁

既報のとおり、10月12日に政府の医療DX推進本部が発足した。改めて記すと、その場で①全国医療情報プラットフォームの創設、②電子カルテ情報の標準化、③診療報酬改定DXを中心に、2023年春をめどに、施策実現に向けて実行に移していく、と発表されたのである。

医療のDX化において重要な役割を担うのが、PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の推進だ。これまでも「データヘルス改革」として長年勘案されてきたことだ。

医療ビッグデータは、国民皆保険制度のある日本では蓄積しやすい状況にあったものの、残念ながらデジタル化、データの統一化の遅れなどによって、海外に比べて利活用が進んでいない。

日本においては、2018年に次世代医療基盤法が施行され、国が認定した専門の事業者に、事前に情報提供を許可した患者のレセプト情報、電子カルテなど医療機関が持つデータを加工(匿名化)して、認定した研究機関・製薬企業に匿名提供できるようになった。実際には2020年の10月から認定事業者のサービスが開始となり、同12月に製薬会社に提供開始された。

医療DXを推進する内閣府としては、創薬や研究の推進を目指し、データの利活用を促進させる方針を立ててはいるものの、まだまだ充分な利活用に至っているとはいえない状況にある。

もちろん、根本的なデジタル化の遅れ、そしてセキュリティ対策などの懸念点はあるが、現状において大きな障壁のひとつとされるのが、「時間」である。現在、NDB(National Database)のデータが事業者などへ提供されるまでに、平均330日ほどかかっているとされている。11月7日に開かれた内閣府の規制改革推進会議「医療・介護・感染症対策ワーキング・グループ」では、データの運用改善が議論されたが大幅な改善案は出なかった。

こうした医療ビッグデータの活用において注目を集めているのが、イスラエルだ。非政府、非営利の4つの健康保険機関による、国民皆保険制度をとっている。

スタートアップ大国でもあり、デジタルヘルスで大きな成果を上げているイスラエルは、1990年代から統一化された電子健康情報システム(EHR=Electric Health Record)が整備されている。

そのうえで、イスラエルは独自にオプトアウト方式と呼ばれるデータ活用を行っている。電子健康情報システムで収集されたデータに関して、患者が拒否しないかぎり、個々の同意がなくても、匿名化された医療データが特定の研究機関、製薬会社等に情報提供できるようになっているのだ。

これはデジタルヘルス技術への活用のみならず、新型コロナ禍において、世界最速のペースでワクチン接種が進み、さらには接種情報の提供によってワクチンの有効性に対する研究も迅速に行われている。

日本の医療DXはスタートをきったばかり。十全な情報セキュリティ対策を踏まえたうえで、こうした他国の例も踏まえながら、現状を改善していく方策が望まれるところだ。
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WRITTEN by

Medical DX編集部

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