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Medical DX編集部 2022.7.19

PHR利活用の環境整備を加速させる、PHRサービス事業協会設立

■製薬・医療機器、健康アプリや保険などの企業15社が賛同!


近年、急速に耳にする機会が増えている「PHR」という言葉。PHRとはパーソナル・ヘルス・レコード(Personal Health Record)の略称で、個人の健康・医療・介護に関する情報のこと。診療を受けた医療機関に保存・保管されているカルテ(診療記録)、アップルウォッチで計測できる心拍数や心電図のデータ、学校や職場で受ける健康診断の結果、母子健康手帳からお薬手帳、介護予防手帳などまでの記録……これらすべてがPHRといえる。

こうした記録は、これまではそのときどきにそれぞれの医療機関や手帳・デバイスで記録されるにとどまっていた。つまり、バラバラに保存・保管されている状態だった。こうした散財している情報を、急速に発展・普及するICT技術を駆使しながら1カ所に集約することで、PHRを利活用できる環境を整えようという動きが進んでいる。

そうした動きのひとつが、先日発表された「PHRサービス事業協会」設立宣言だろう。これは、製薬・医療機器をはじめ、健康アプリ保険などのPHRサービス事業を展開する企業15社が集まり、2023年度早期の設立をめざすという宣言をおこなったものだ。

宣言に賛同した企業は、製薬会社のエーザイ、塩野義製薬、医薬品開発支援のシミックホールディングス、医療機器メーカーのオムロン、テルモ、アプリオンライン診療などを手掛けるWelby、エムティーアイ、FiNC Technologies、MICIN、通信やシステム開発などを手掛けるKDDI、TIS、日本電信電話、富士通、そして保険の住友生命保険、SOMPOホールディングスの15社。

PHRサービス事業協会ではPHRの活用を進め、PHRサービス産業を発展させることで、医療の高度化、医療費の抑制につなげ、結果的には健康寿命の延伸、労働生産性の向上、国際競争力の強化にもつなげていきたいとしている。また、健康・医療に関するさまざまな主体が持つデータを効果的に利活用するための標準化や、PHRサービスの品質向上を促進するためのルール整備などについても検討していくという。

PHRに関しては、じつは総務省が2016年度からモデル事業構築の研究を進めている。それによれば、個々が自分のライフステージに応じたアプリケーション(たとえば「母子手帳アプリ」「学校検診アプリ」「生活習慣病手帳アプリ」「かかりつけ連携手帳アプリ」「お薬手帳アプリ」「介護防止アプリ」など)を取得し、このアプリを通じて、本人同意のもと、個人の医療情報や健康情報が時系列でPHR事業者に収集されるようにする。

こうしたデータを利活用できるようにすることで、たとえば転出入の際にはこれまでの診療情報を把握したうえで診察が可能になり、救急時の処置であっても、既往歴やアレルギー情報などを参照したうえでの処置がスムーズにおこなわれるようになる。また民間の保険会社では、個人の健康状態に応じたきめ細かい保険料や新しいサービスの提供が可能になるというものだ。

PHRモデル構築事業(総務省「平成30年版 情報通信白書」より)

さらには蓄積されたデータをAIで分析・解析することで、一人ひとりの体質や病気のタイプに合わせた治療をおこなう「個別化医療」や、地域や個人が抱える課題に応じた適切な保健指導施策の提案・実施も実現できるかもしれない。

こうした未来を切り開く可能性を持つPHRサービスだが、もちろん課題もある。データの標準化はけっして簡単ではないだろうし、個人情報保護やセキュリティ確保などの議論を詰めることも簡単ではないだろう。だが、アプリやデバイスなどでPHRを計測できる技術はますます進歩するだろうし、そのデータの利活用による利便性はユーザーにとっても大きな魅力であることは間違いない。それだけに、PHRサービス事業協会による啓蒙活動にも期待したい。


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