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Medical DX編集部 2020.8.7

2022年の実用化に向けて動き出した「AIホスピタル」構想

■「AIホスピタル」構想とは何か?


AIホスピタル」構想が、2022年の実用化に向けて動き出した。

2014年度に内閣府が創設した「戦略的イノベーション創造プログラム」(以下、SIP)。SIPとは、日本の科学技術イノベーション実現のために創設された国家プロジェクトで、内閣府の諮問機関である総合科学技術・イノベーション会議において、省庁の枠を超えて基礎技術から実用化・事業化までを見据えた取り組みを推進するものである。

このSIP第2期で採択された「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトが、2018年から進んでいる。

AIやIoT、ビッグデータ技術を用いた「AIホスピタルシステム」を開発・構築することによって、高度で先進的な医療サービスの提供と、病院における効率化、医師や看護師の抜本的負担の軽減を実現するというのが、その目的だ。

超高齢社会における医療の質の確保、医療費増加の抑制、医療分野での国際的競争力の向上――こうした課題と向き合うためには、画像情報や病理診断情報、生化学検査情報などの診療情報の効率的収集、ビッグデータベースの構築、AIによるデータ解析が必須となる。

また、日進月歩で進む医療の最新情報をすべてキャッチアップするのが困難になっている状況のなか、先端情報をキャッチアップし、医療従事者が共有できるようにする仕組みも求められている。

そうした背景のもと、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」プロジェクトは進められてきたのだ。

すでに進んでいる研究開発プロジェクトとしては、音声認識で診療記録が文書化できるシステムや、患者に疾患や治療方針について説明するコミュニケーションシステム、リキッドバイオプシーによるがんの早期診断システム、内視鏡の操作支援技術などがあり、大学病院や研究機関、企業などが連携しながらそれぞれの開発を進めている。

■開発が進む「医療AIプラットフォーム」


そして先日、「AIホスピタルシステム」の要となり、社会実装に向けた「医療AIプラットフォーム」構想がついに発表された。早ければ2020年秋にもモデル事業をスタートし、22年には実用化を目指すという。

医療AI診断・治療支援システム(AIプラットフォーム)概要(出典:内閣府SIP「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」の社会実装プロジェクト開始について

このプラットフォームは、病院などの医療機関だけでなく、人間ドックなどを行う民間の健診センター、保険会社なども利用できるものとし、臨床などのさまざまなデータを分析、アプリケーションを通じて画像診断問診、治療方針の提案などでAIが医師を支援する。

そのためにも、このプラットフォームにはAIを展開する各社が解析機能を提供。解析する患者のデータはプラットフォームから各ベンダーには送られず、各ベンダーはプラットフォーム上で解析機能だけを利用し、依頼機関に結果を返すスキームになるという。

また、日本医師会が「AIホスピタル推進センター」を設置。医師や医療機関がプラットフォームを利用するための登録業務を行い、プラットフォーム事業に対するガバナンス機能を備えることで、社会実装の実現に向けたバックアップをしていくとしている。

このプロジェクトに参画しているのは、日本ユニシス株式会社、株式会社日立製作所、日本アイ・ビー・エム株式会社、ソフトバンク株式会社、三井物産株式会社の5社。

日本ユニシスは、医療AIプラットフォームのサービス事業基盤の設計・構築を担当し、モデル事業の実行を支援。また、プラットフォーム上での提供サービス企画・開発も実施する。

日立製作所は、同プラットフォームのサービス事業基盤の設計、プラットフォーム上で提供するサービスの企画・開発および提供を担い、また外部サービスベンダーの調査、スクリーニングを行う。

日本アイ・ビー・エムは、医療支援AI開発における技術提供と、世界での取り組みを通じて得た知見によるサービス基盤拡充の支援、またプラットフォーム上に公開する医療従事者の業務支援AIアプリ開発を担当。

ソフトバンクは、医療AIプラットフォームの基盤となる、5Gをはじめとする通信ネットワークやユーザー認証機能の提供・検証を担当予定。

三井物産は、アジア地域での病院事業を含む海外のネットワークを生かし、データ・デジタル技術の社会実装およびAIホスピタルの国際化に向けた検証を支援する。

■「個別化医療」と「国家政策」のカギを握る!?



「AIホスピタルシステム」が構築されれば、健診・検診にはじまり、外来、入院、通院治療にいたるすべてのプロセスをカバーできることになる。

このプロセスを通じて収集されるデータは、患者の既往歴や身体所見から、CTやMRIの画像データ、ゲノム情報などとなり、支援領域は問診や鑑別診断、画像診断、ゲノム診断、血液によるがん診断、手術、看護などにわたり、これらが全体として、個々の患者に対する診療をサポートする。

こうしてみると、「AIホスピタルシステム」は、これからの医療の潮流となっていくだろう「個別化医療」への道を切り拓く可能性を大いに秘めたものといえる。

また、この「AIホスピタルシステム」をパッケージ化できれば、海外へ展開していくことも可能だろう。海外諸国に大きな遅れをとっているとされる、医薬品・医療機器・医療情報産業の競争力強化にもつながるはずだ。

規模からいっても、その目的や展開からいっても、まさに国家的プロジェクトと呼ぶにふさわしい「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」。今後の動向にも引き続き注目が必要だ。


戦略的イノベーション創造プログラム(SIP:エスアイピー) - 科学技術政策 - 内閣府
https://www8.cao.go.jp/cstp/gaiyo/sip/index.html
「医療AIプラットフォーム」構想を発表 | 日医on-line
http://www.med.or.jp/nichiionline/article/009398.html

画像:shutterstock
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