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加藤 泰朗 2022.6.15

東京大学ら、AIの医活用推進の目的で「医用画像通信技術研究組合」設立へ!

■医用画像データの安全な流通と提供をめざす


東京大学は2022年5月20日、ソフトバンク、ヤフー、クリプタクトなどと共同で、CT検査やMRI検査などの医用画像分野におけるAI(人工知能)開発・活用の推進を目的とした「医用画像通信技術研究組合」を設立したと発表した。

医用画像通信技術研究組合は、経済産業省などが策定した技術研究組合(CIP:Collaborative Innovation Partnership)*制度を活用した共同研究組織。東京大学やソフトバンクなどが設立したAI研究機関「Beyond AI研究推進機構」における取り組みの一環として、医用画像データの流通を可能にするシステムに関する関連技術の研究開発などを進める。

*産業活動において利用される技術に関して、組合員が自らのために共同研究を行う相互扶助組織(非営利共益法人)。各組合員は、研究者、研究費、設備などを出し合い共同研究を行い、その成果を共同で管理し、組合員相互で活用する(出典:経済産業省HP。一部改変)

■AI活用推進は、医用画像データの流通がカギ


画像診断支援にAIを活用する研究・開発については、これまでも本メディアで何度も取り上げてきた。AIによる画像診断支援は、診断そのものを支援するだけでなく、医用画像を読影する放射線専門医不足を補う役割を期待されるもので、AIはいまや医用画像を用いた医療・ヘルスケア分野では、欠かせない技術になっている。

一方で、画像診断支援用のAI研究・開発には、医用画像データを確保するという点で課題がある。

研究・開発の精度を高めるために相応の医用画像データが必要だが、個人情報保護などの観点から、研究・開発に必要な医用画像データは市場に十分に流通していないのが実情だ。

この現状を受けて、今回、医用画像通信技術研究組合は、患者の同意を得て、医用画像データを安全に取得し、AIの教師データを作成してAI開発に携わる研究開発機関や企業に医用画像を提供するためのプラットフォームの構築と、それに必要な医用画像の匿名化技術やブロックチェーン技術、教師データの作成技術などの研究・開発に取り組む。

具体的には、患者が自身の医用画像データを自由に閲覧・管理できる専用画像ビューアーアプリケーションを提供し、匿名化された医用画像データを患者自身が、医用画像運用プラットフォームにアップロードできるしくみを構築する。

さらに、アップロードされた医用画像データをもとにAIの教師データを作成し、研究開発機関や企業へ試験的に提供して、医用画像分野におけるAI開発に有用なデータであるかを検証する。

東京大学が担うのは、医用画像の匿名化技術やAIの教師データの作成技術に関する研究・開発、医用画像運用プラットフォームおよび患者用アプリケーションの開発・検証の部分だ。

医用画像データの送受信には、高度な安全性が担保される必要がある。その部分を担当するのは、クリプタクトだ。同社は、ブロックチェーン技術を活用したシステム構築や国内最大級・暗号資産(仮想通貨)の自動損益計算サービスを提供するフィンテック(Fintech)企業。これまで金融業界で培った大容量のデータ処理技術および高度なセキュリティ技術を今回のしくみに転用。同社のブロックチェーン技術を活用することで、安全なデータのやりとりを実現する。

そのほか、ソフトバンクは、医用画像運用プラットフォームの基盤となる通信ネットワークに関するノウハウの提供、医用画像運用プラットフォームの検証・実証実験を、ヤフーは研究・開発成果の社会実装・事業化を、それぞれ支援する。

医用画像通信技術研究組合の構成

なお、今回のしくみは、患者にとってもメリットがある。専用アプリで格納された自分の医用画像データをいつでも閲覧できることで、自らの健康とヘルスケアの意識が向上することが期待されるからだ。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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