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加藤 泰朗 2022.5.19

エクサウィザーズ、AIを活用した消化器がん患者向けリハビリテーションの実証を開始。支援アプリ開発をめざす

■AIを活用して、術前リハビリテーションの有効性を検証


手術後の早期回復と社会復帰のためには、術前をいかに過ごすかがひとつのポイントとなる。このことに注目し、AIを活用した術前リハビリテーション(以下、リハビリ)で、消化器がん患者の術後のQOL(生活の質)向上をめざす実証が始まった。

実証を手がけるのは、AIを利活用したサービスで社会課題解決に取り組むエクサウィザーズと、大阪大学大学院医学系研究科消化器外科。2022年4月11日、両者は共同でAIを活用した消化器がん患者の術前リハビリに関する実証を開始する、と発表した。

消化器がん患者の周術期(入院、手術前後、術後回復、社会復帰までの一連の期間)に、これまでにエクサウィザーズが脳疾患および整形疾患領域で培ってきたリハビリのオンライン支援技術を用いた「がん患者リハビリ支援プログラム」(以下、「オンラインがんリハ」)を提供することで、術後のアウトカムが向上するかを検証する。

スマートフォンやタブレット端末のアプリを使った遠隔(オンライン)リハビリは、すでに広く行われている。ただし多くの場合、セラピストから患者への、一方向のコミュニケーションになりがちだった。

今回、エクサウィザーズが提供する「オンラインがんリハ」は、患者から共有された動画をAIが解析、リハビリ内容を提案し、患者に伝えるというもの。患者は外来を受診したり入院したりしなくても、オンライン上で必要な量のリハビリを受けられる。一方、医療従事者も、AIによる動画の評価と目標設定・計画というサポートを得られる。患者と医療従事者とのあいだに立って双方向での支援を継続的に提供できるシステムだ。

「オンラインがんリハ」の活用イメージ

■「オンラインがんリハ」による実証のアプローチ


予定している実証の内容は、次のとおり。

大阪大学大学院医学系研究科消化器外科と協力し、消化器がんの術前化学療法後に手術を予定している患者(100症例を予定)への術前リハビリ(運動介入)における、「オンラインがんリハ」の有用性を検証する。

試験の適格基準を満たし、術前リハビリの了承と同意を得たがん患者(被験者)を対象に実証を進める。被験者は、「オンラインがんリハ」の適用群と、利用しない対照群に無作為に割り付け、適用群には「オンラインがんリハ」の内容、運動およびその記録方法などの使用方法を伝える。一方、対照群には、同じ術前リハビリの方法を記載した用紙を渡して記録用紙に記載するよう説明する。

すべての被験者は化学療法前、術前・術後に、それぞれ身体計測、身体機能検査、CT画像検査、血液検査を実施し、それらのもとに効果を評価する。

なお、身体機能検査には、エクサウィザーズの子会社であるエクサホームケアの歩行解析AI「CareWiz トルト」を活用する。

「CareWiz トルト」は、スマートフォンやタブレット端末で撮影した動画をAIで分析し、歩行機能や転倒リスクを推定するアプリだ。日常的に動画を撮ることで、利用者の変化を見える化し利用者や家族の満足度向上につなげたり、スタッフ間で動画を共有し、円滑な意思疎通と情報連携を実現したりするツールで、すでに全国で350カ所以上の事業者が活用している。2022年4月からは、神奈川県藤沢市と共同で、通所介護事業所、小規模多機能型居宅介護事業所、福祉用具事業所などの介護関連事業者を対象に、デジタルを利活用した非接触での情報連携実現のために同アプリを活用する実証事業が進められている。

■本実証を足がかりに、医療AIプラットフォームの構築をめざす


エクサウィザーズは、本実証を通じて「オンラインがんリハ」の有効性が証明されることで、周術期におけるリハビリの新たな手法としての確立が見込まれると、期待する。

実証後は、効果を示した症例のリハビリ実施方法について、AIを用いて要因を分析。リハビリの方法(実施タイミング、回数、強度など)が入院日数や合併症の減少、QOLの早期回復に対し、どのような影響をもたらすかなどを検証する予定だ。

また、「オンラインがんリハ」の有用性が立証されたのちは、成果を反映した患者向けのデジタル治療を担う治療用アプリの開発を進める。それを、がん患者を治療する全国の医療機関へ展開し、周術期におけるリハビリの普及と、多くのがん患者のアウトカム向上(入院日数や合併症の減少、QOLの早期回復)に寄与することをめざすという。

さらにエクサウィザーズは、今回の検証で取得したデータや知見をもとに、肺がん乳がんなど別のがん領域や、術前だけでなく術後リハビリへの拡大・展開も視野に入れている。そのめざす先は、がん患者のペイシェントジャーニー(Patient Journey)を全般的にカバーし、運動療法を軸に、食事療法や正しい服薬などのよりよい治療の促進・実行に伴走する医療AIプラットフォームの構築だ。

消化器がんの術後合併症予防にリハビリが有効である可能性については、先行研究でも指摘されている。まずは、消化器がん領域でのリハビリ支援技術の成功に期待したい。

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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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