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加藤 泰朗 2022.5.13

ニチイ学館とNTT東日本、新しい遠隔サービスで医療事務人材不足の課題に挑む

■遠隔技術で医療事務のカタチが変わる


〈医療事務はリモートワークで〉が当たり前になる。

医療事務アウトソーシング業界最大手のニチイ学館とNTT東日本は、両社の強みを生かした遠隔医療事務サービス「Nichii Connect」の提供を5月1日から開始すると発表した。

医療事務の業務は、医療機関での受付対応、保険証などの資格確認、診療行為に関する報酬計算および窓口負担金の出納、保険者への診療報酬明細書の点検・修正など、多岐にわたる。高い専門性が求められる職種だ。

日本では現在、労働人口の減少と医療需要の拡大を背景に、とくに地方を中心に、医療事務を専門にする人材の確保が課題になっている。さらに、依然として収束のめどが立たない新型コロナウイルス感染症への対応や医療業界のICT化などによって、医療提供体制や診療報酬のあり方が急速に変化しており、各医療機関が個別に医療事務人材の育成・配置をすることがむずかしくなっている。

この状況を〈遠隔技術〉で改善しようとするサービスが、冒頭に挙げたNichii Connectだ。従来、医療機関内でおこなわれていた医療事務の専門業務を、遠隔地にあるセンターで実施するサービスで、人口減少地域の医療機関や開業直後のクリニックなど、専門人材の確保がむずかしいとされる医療機関の事務運営を支え、地域医療の持続に貢献する。

■ニチイ学館とNTT東日本、それぞれの強みを生かした共創


新サービスでは、ニチイ学館とNTT東日本とが、それぞれの強みを生かした役割を担う。

ニチイ学館は、これまで医療事務専門人材育成や医療事務アウトソーシングを手掛けてきた会社だ。現在、約8,000カ所の医療機関と医療事務業務の契約を交わしている。

新サービスでは、長年蓄積してきた診療報酬関連業務のノウハウを生かし、「集約センターの運営、医療事務専門人材の確保」「業務の効率化」「高質化に向けた取り組み」の部分を担当する。

具体的には、集約センターを構築し、先に挙げた医療事務業務のうち、診療報酬の計算や点検・修正など、診療報酬に関する専門知識と経験を要する業務を実施する。

集約センターを活用することで、医療機関は専門知識をもったスタッフを自ら雇用・育成する必要がなくなる。また、ニチイ学館で働く専門スタッフが集約センターから業務を遂行することで、請求漏れや、査定・返戻を抑制する効果も期待される。将来的には、集約センターでの業務の自動化を図り、効率的かつ正確な業務処理を追求する。

ただし、集約センターでめざすのは、業務の効率化だけではない。医療機関の増収につながる診療報酬算定の提案など、ニチイ学館が創業以来、全国の医療機関の運営を支えながら培ってきたノウハウを生かし、付加価値の提供も進める予定だ。


一方、NTT東日本が担うのは、ネットワークインフラにかかる部分だ。

NTT東日本はこれまで「地域の社会課題解決パートナー」として、医療業界のさまざまなプレイヤーと連携してきた。その経験を生かし、Nichii Connectでは、「集約センターのインフラ構築のフルサポート」と「集約センターと医療機関のあいだを結ぶネットワークの最適化」に携わる。

Nichii Connectは、医療機関の電子カルテや医事コンピュータをオンライン上で参照・操作する必要があるため、センター内のICT環境にはきわめて高度なセキュリティが求められる。NTT東日本はこれまでにも、オンライン資格確認やレセプト請求などの医療情報を扱う社会インフラの構築・運用を手掛けており、その実績を生かし、安心・安全で最適なネットワークやセキュリティ対策を提供する。

■遠隔技術で、新しい医療の働き方の可能性が広がる


Nichii Connectの開発にあたっては、病院と診療所を含む複数の医療機関と遠隔業務の実証実験を実施し、遠隔からの医療事務業務が実施可能であることを確認してきた。今後は、医療機関ごとに運用方法や医事の役割の違いを踏まえ、サービスを導入する医療機関と業務範囲と実施内容を調整し、適宜課題の改善を図りながら、サービスの高度化に取り組む。また、電子カルテ・医事コンピュータのベンダーとも協業し、集約センターから実施できる業務を拡大する計画だ。

さらにニチイ学館とNTT東日本は、今後、集約センターの構築にとどまることなく、医療機関の業務効率化や働き方改革を支援するICT関連商品の共同開発・共同提案を通じて、医療機関運営に関する課題解決に共同で取り組み、地域医療を支えるサービスの構築・提供をめざす。

遠隔技術は、診療だけでなく、医療事務・医療経営のカタチも変えようとしている。
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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