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加藤 泰朗 2022.5.10

FRONTEO、慶應義塾とAIを用いたうつ病・躁うつ病診断支援プログラムの共同研究を開始

日常のなにげない会話から、自分がうつ病・躁うつ病に罹患しているかどうかをスクリーニングできる時代が来るかもしれない。

2022年4月27日、FRONTEOと慶應義塾は20年4月に結んだ「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の共同研究契約に関する変更覚書を締結したと発表。AIを用いたうつ病・躁うつ病の客観的重症度評価技術開発と臨床場面での活用、そして社会実装に向けた技術開発を開始する。

■認知症研究の知識をうつ病・躁うつ病の診断支援に生かす


FRONTEOは、自然言語処理に特化した自社開発AIエンジン「KIBIT」と「Concept Encoder」「Looca Cross」を用いて、膨大な量のテキストデータのなかから意味のある重要な情報を抽出し、企業のビジネスを支援するデータ解析企業。本サイトでも、これまで何度か取り上げてきた注目のAIベンチャーだ。2015年より、慶應義塾大学医学部と共同で、AIを用いて認知機能障害をスクリーニングする「会話型 認知症診断支援AIプログラム」の開発に向けた共同研究を実施してきた。

「会話型 認知症診断支援プログラム」とは、FRONTEOが独自に開発した自然言語解析AI「Concept Encoder」を利用し、診療場面における医師や医療スタッフと患者との5~10分程度の日常会話のテキストデータを読み込み、発話内容・言葉の使用傾向などを解析して、認知機能障害をスクリーニングできるシステム。専門医に限らず広く一般医(家庭医)による使用や、遠隔診療などでも活用可能な汎用性の高いAI医療機器だ。

2020年7月に日本特許庁より特許権を取得、21年12月には臨床試験の症例登録を完了し、現在、薬事承認に向けたプロセスを進めている。

今回、FRONTEOと慶應義塾は、同プログラムの共同研究契約に関する変更覚書を締結。これまでの認知症診断支援プログラムの研究・開発をとおして蓄積した知見をうつ病・躁うつ病にも応用し、臨床開発や社会実装に向けた開発を進め、AIによる診断支援プログラムの医療現場での早期実用化・市場浸透をめざす。

■国民的疾患となったうつ病


厚生労働省「患者調査」によると、2002年から17年までの15年間で、日本における気分(感情)障害の外来患者数は、68.5万人から124.6万人と約1.8倍に増加。100人に約6人が生涯のうちにうつ病を経験するといわれ、うつ病はいまや国民的疾患となったといっても過言ではない。


一方で、一般的にうつ病、躁うつ病の診断はむずかしいとされる。うつ病の主症状は「気が滅入る」「憂うつ」「悲しい」、躁病は「気分が高揚する」「開放的になる」などだが、誰にだって気分が上がる日、沈みがちな日はある。さらに、そうした気分の浮き沈みの原因が、薬物投与の影響や心筋梗塞などの身体疾患という可能性もあるからだ。

こうした状況を踏まえ、FRONTEOと慶應義塾は、うつ病、躁うつ病の診断を、AIの力で支援する技術開発をめざす。

■自然言語で、より簡便で自然に


AIを活用したうつ病の診断支援サービスは、すでに社会実装されている。

たとえばUbieの症状検索エンジン「ユビー」は、AIが選択し提示するいくつかの質問に回答していくことで、うつ病を含めて、自分が罹患している可能性のある疾患候補を提示してくれるサービスだ。

ただし、「質問に回答するタイプ」のサービスでは、どうしても「質問に対して考える」というプロセスが発生する。こうしたサービスを利用したことのある人ならば、問われている質問内容に対して、むずかしく考えてしまったり、「自分が感じていることを正しく表現できたか」と感じたりした経験を一度はしたことがあるはずだ。

FRONTEOと慶應義塾の進める共同研究では、スクリーニングに「自然言語」を用いているので、こうした変に構えたり、不安に煩わされたり、といった心配が少なくなる。より簡便で自然なかたちで実施できるうつ病・躁うつ秒のスクリーニング技術の開発に、期待したい。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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