ニュース
加藤 泰朗 2022.5.6

4月からスタートしたリフィル処方箋とは?利用促進には課題も

■新しい処方箋でムダな通院が減る?


2022年の4月以降、症状の安定している慢性疾患患者にありがちな、「薬を処方してもらうためだけの通院」が減るかもしれない。

2022年度診療報酬改定で、リフィル処方箋の導入が正式に決まったからだ。厚生労働省は2022年3月4日、2022年度(令和4年度)診療報酬改定に関する省令・告示を公布。4月1日に施行された。

「リフィル(refill)」とは、英語で補給や差し替え用品を意味する言葉。身近な例では、ボールーペンの替え芯や、システム手帳の差し替え用紙などに、この言葉が使われているのを目にしたことがあるだろう。

リフィル処方箋とは、簡単にいうと、繰り返し使用できる処方箋のこと。厚生労働省「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」では、「症状が安定している患者について、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できる」しくみと定義されている。要するに医師が判断した「一定期間」であれば、患者は医師の診察を受けずに処方薬を受け取ることができる、という制度だ。

リフィル処方箋は、アメリカでは1950年代から、イギリス、フランスでは2000年代前半にすでに導入されている。日本でも、10年以上前から制度導入の議論がなされてきたが、ようやく今回の2022年度診療報酬改定で導入が正式に決まった。

■リフィル処方箋のしくみ


制度をくわしく見ていこう。

反復利用できる回数の上限は3回。1回あたり投薬期間や総投薬期間は、患者の病状などを踏まえ、個別に医学的に適切と判断した期間を医師が決める。投薬量に限度が定められている薬(新薬や麻薬、向精神薬)や湿布薬は、リフィル処方箋による投薬の対象外。

リフィル処方とする薬としない薬がある場合は、医師は別々に処方箋を発行する。リフィル処方する薬が2種類以上あり、それぞれで1回の投薬期間や使用回数の上限が異なる場合も、処方箋を分けて発行する。

実際の使用イメージはこうだ。

まず医師が患者を診察し、リフィル処方が可能と判断した場合、新たに用意されるリフィル対応可能様式の処方箋の「リフィル可」欄にレ点を記入する。

患者はその処方箋を保険薬局に持参し、薬を受け取る。処方箋の有効期間は、1回目は従来の処方箋と同様、「交付の日を含めて4日以内」。2・3回目の受取期間は、調剤予定日の前後7日以内である。

保険薬局は、患者が持参したリフィル処方箋に調剤日、次回調剤予定日を記入。処方箋の余白か裏面に、調剤した薬局名と担当薬剤師の氏名を書き込み、原本は患者に返却し、写しを保険薬局でも保管する。リフィル処方箋の総使用回数の調剤が終わった場合は、調剤済み処方箋として保管する。

■分割調剤とリフィル処方箋の違い


じつは日本には、リフィル処方箋と似た制度がすでにある。分割調剤だ。

分割調剤とは、文字どおり「調剤を分割する」制度。2004年度診療報酬改定で「医薬品の長期保存の困難性等の理由による分割調剤」がスタート。2008年度診療報酬改定で「後発医薬品の分割調剤」が、2016年度診療報酬改定で「医師の指示による分割調剤」が可能になった。2018年度診療報酬改定では、処方箋様式に分割調剤項目が新設。分割回数の上限は3回。今回のリフィル処方箋の使用回数上限はこれを踏襲したかたちだ。

ただし、分割調剤の制度の利用状況は芳しくない。厚生労働省「社会医療診療行為別統計」によると、医師の指示による分割調剤の算定回数は年々減っている。2019年度の薬剤師の業務実態調査によれば、分割指示による処方箋を発行したケースは10%に満たない(N=369)。分割調剤に関する手続きが煩雑であることなどがその背景にあるとされ、現場からは抜本的な制度改革が求められてきた。

分割調剤とリフィル処方箋は、制度として似た面もあるが、両者は目的や運用などで微妙に異なる。

まず、目的。分割調剤は、長期服用が必要だが、薬剤の長期保存がむずかしい、後発医薬品(ジェネリック医薬品)の服用に不安があるので一定期間お試し期間がほしい、薬剤師のサポートが必要などのケースで用いられる制度。一方のリフィル処方箋は、症状が安定している慢性疾患患者のムダな診療機会を削減するために導入された制度だ。

運用面でも違いがある。たとえば、90日分の内服薬を30日分ずつ処方する場合、分割調剤では、医師は90日分の処方箋を発行し、それを3分割して処方するよう保険薬局に指示する。一方、リフィル処方箋では、医師は30日分の処方箋に反復利用できる回数を記入して発行する。

分割調剤の場合、上記の例なら分割した枚数3枚+別紙の分割にかかる処方箋1枚の合計4枚を用意する必要があるが、リフィル処方箋の場合は1枚で済むという違いもある。

■リフィル処方箋の利用拡大に必要なこと


始まったばかりのリフィル処方箋だが、すでに課題も浮き彫りになっている。

たとえば、処方箋の反復利用に医師の診察が不要なため、ある意味で患者任せとなる。症状の変化や過剰服用などが見逃されるケースも想定される。

この課題に対しては、患者との接点となる保険薬局や薬剤師に期待される役割が大きい。「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」でも、保険薬局の保険薬剤師に対して、次のことを求めている。

●リフィル処方箋により調剤するにあたって、患者の服薬状況などの確認をおこない、リフィル処方箋により調剤することが不適切と判断した場合には、調剤をおこなわず、受診勧奨をおこなうとともに、処方医にすみやかに情報提供をおこなうこと。また、リフィル処方箋により調剤した場合は、調剤した内容、患者の服薬状況などについて必要に応じ処方医へ情報提供をおこなうこと。

●患者の次回の調剤を受ける予定を確認すること。予定される時期に患者が来局しない場合は、電話などにより調剤の状況を確認すること。患者がほかの保険薬局において調剤を受けることを申し出ている場合は、当該ほかの保険薬局に調剤の状況とともに必要な情報をあらかじめ提供すること。

制度利用促進には、医師の理解も欠かせない。診療回数が減り、医療業務の効率化が図れるということは、言い換えれば、患者の診察機会が減少し、病院収益の面でマイナスに働くということだ。今回の改正では「1回の投与期間が29日以内ならば、長期投与に係る減算規定を適用しない」という医療側への一定の配慮がなされているが、十分なインセンティブになるのか不透明だ。

リフィル処方箋の利用促進のカギは、医師、薬剤師の積極的な制度への関与にあるといえる。

■関連記事:リフィル処方箋は、オンライン服薬指導と組み合わせてこそ患者の手間の削減になる【加藤浩晃先生インタビュー連載】

印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
他カテゴリの記事を読む

DXによる医療・ヘルスケアの
変革を伝えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。