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Medical DX編集部 2020.7.28

大規模治験も進行中、新型コロナワクチンの動向と今後の課題は?

英アストラゼネカは、イギリスで実施しているウイルスベクターワクチン「AZD1222」の第3相臨床試験で、原因不明の疾患が発生し、すべての臨床試験でワクチン接種を一時的に中断していることを明らかにした。

これは、臨床試験において通常の対応とされているが、現在大きく報道されている。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対するワクチン開発は、異例のスピードで進展している。

■世界から切望されている新型コロナウイルス感染症のワクチン


世界中で猛威をふるっている新型コロナウイルス感染症。9月9日時点で世界中での累計感染者数は2,700万人を超え、死亡者数は90万人に迫ろうとしている。日本でも9月に入って、累計感染者数は7万人を超え、死亡者数も1,400人を超えている。

こうしたなか世界中で進められているのが、新型コロナウイルスのワクチン開発だ。WHO(世界保健機関)によると、現在世界で160種類以上のワクチン開発が進められており、このうち臨床試験に入っているワクチン候補は20種類以上になるという。

現在、臨床試験に入っているおもなワクチンは下記のとおりだ。
WHOや各社の発表情報などをもとに作成

ワクチンの種類もさまざまなので、こちらも簡単に説明しておこう。

不活化ワクチン ウイルスの感染する力を失わせた(不活化)ものを原材料としたもの。
ウイルスベクターワクチン 増殖性を失わせたウイルスをベクター(運搬者)として、抗原遺伝子を投与し、これによって免疫がつくられることを狙うもの。
mRNAワクチン 抗原タンパク質をつくりだすメッセンジャーRNAを用いたもの。
DNAワクチン 抗原タンパク質のDNAをワクチンにしたもの。
組換えタンパクワクチン 遺伝子組換え技術を用いた培養細胞によって抗原タンパク質をつくりだすもの。

■世界で、日本で開発が進むコロナワクチン


治験中のなかでも開発が先行しているのは、英オックスフォード大学と英アストラゼネカのウイルスベクターワクチン「AZD1222」と、米モデルナのmRNAワクチン「mRNA-1237」だ。

治験には通常、①ヒトで安全性を評価する第1相試験(臨床薬理試験)、②投与量や投与回数を検討する第2相試験(探索的試験)、③大規模な被験者を対象に感染症の流行地域で有効性を評価する第3相試験(検証的試験)の3つのステップがあるが、この2つのワクチンはいずれも第3相試験に入っている。

また、独ビオンテックと米ファイザーが共同開発しているmRNAワクチン「BNT162」と米イノビオのDNAワクチン「INO-4800」も第2相・第3相試験に入るとしており、中国シノバックの不活化ワクチンも今月中に第3相試験に入るとしている。

日本国内では、アンジェスと大阪大学が共同開発しているDNAワクチン「AG0301-COVID19」がすでに第1相・第2相試験を済ませており、もっとも進んでいるといえる。

ほかにも、塩野義製薬が、UMNファーマと国立感染症研究所の協力を得て、組換えタンパクワクチンを開発している。動物を用いた有効性評価を実施中で、最短で2020年内の臨床試験を開始する意向だ。

第一三共は、東京大学医科学研究所と連携して、mRNAワクチンの開発を進めている。動物を用いた試験では抗体価の上昇を確認しており、2021年3月からの臨床試験開始を予定しているという。

KMバイオロジクスでは不活化ワクチンを、IDファーマではウイルスベクターワクチンをそれぞれ開発中で、いずれも動物を用いた有効性評価を実施中だ。KMバイオロジクスは最短で2020年11月から、IDファーマでは最短で2021年3月からの臨床試験開始の予定だという。

■完成したとしても課題はある


世界中で開発が進むコロナワクチンだが、完成したとしても課題はある。

生産と物流の問題から世界中の人々に一斉にワクチンを供給するということはまずできないため、最近新聞などでも報道されているように、どうしてもワクチン争奪戦という様相を呈する。そのなかでいかにワクチンを確保するかというのは、日本にとっても大きな課題といえる。

またワクチンは健康な人にも投与するものだからこそ、効果だけでなく副作用などの有害事象が発生する可能性もないとはいえない。専門家によっては「ワクチンの真価が本当に明らかになるのは、広く一般に接種されてからだ」と指摘する声もあるほどで、安全性に対する疑念を完全に拭い去ることはなかなかできないものだ。

そのため、もしワクチンが全世界に供給できるようになったとしても、ワクチンを打ちたくないという人が一定数いることも忘れてはいけない。たとえば日本では、結核や麻疹などのA類疾病に関しては定期予防接種を受けることが国民の努力義務となっているが、インフルエンザなどのB類疾病に関しては努力義務は課されておらず、本人または保護者の判断に委ねられている。接種体制の整備状況によっては、集団免疫を獲得するまでに至らない可能性もある。

ほかにも、英インペリアル・カレッジ・オブ・ロンドンが発表した「新型コロナウイルスに感染したほとんどの人は抗体をつくるが、これは急速に衰えていくことが多く、感染後数カ月で免疫がほとんどなくなることを示唆している」という研究結果のように、ワクチンを接種したとしても、どの程度の期間、免疫防御が維持できるかは現段階ではまだ不透明だという捉え方もある。

とはいえ、新型コロナウイルスを終息させるためには、ワクチン開発が光であることに変わりはない。それと同時に、ワクチンに関する十分な情報公開と接種体制の整備をしっかり実施していくことが重要になるだろう。
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