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加藤 泰朗 2022.1.26

オミクロン株の特徴とは?ワクチンや治療薬は?現時点での傾向と対策

■急速に置き換わりが進むオミクロン株


2019年12月に最初の感染者が確認されて以来、世界各地で感染拡大が続く新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)。2021年に日本で流行の第5波を引き起こし、世界中で甚大な被害を出した「デルタ株」に変わり、いま世界中で猛威をふるっているのは、B.1.1.529系統の変異株。通称、「オミクロン株」だ。

2021年11月24日、南アフリカはWHOに世界初となるオミクロン株感染例を報告。WHOは当初、この新しい変異株を「監視下の変異株(VUM: Variant Under Monitoring)」に分類したが、2日後の26日に「オミクロン株」と命名し、もっとも警戒度の高い「懸念される変異株(VOC: Variant of Concern)」に位置づけを変更した。

日本でも11月28日に、国立感染症研究所が「懸念される変異株」に指定。しかし、警戒を強めるなか、11月30日に早くも空港検疫で国内最初の感染が確認されている。

12月中旬以降、日本国内のオミクロン株感染者数は増え続けている。2022年1月20日に厚生労働省が公表した「第68回新型コロナウイルス感染症対策アドバイザリーボード(令和4年1月20日)」の資料「変異株PCR検査実施状況(機械的な試算)」によると、1月10日〜16日の検査陽性者の93%(暫定値)が、オミクロン株に感染しているという結果になった。

表 PCR陽性者におけるオミクロン株比率(全国)
出典:厚生労働省「新型コロナウイルス感染症変異株への対応」内資料「変異株PCR検査実施状況(機械的な試算) 2022年1月19日時点」

既存株からオミクロン株への置き換わりは、世界各国でも進行している。「Our World in Date」によると、過去2週間の陽性結果に占めるオミクロン株の割合は、2022年1月21日時点でアメリカ99.15%、イギリス99.15%、フランス89.55%(ちなみに同サイトでは日本は100%)。欧米以外でも、新型コロナウイルスの感染者の多いブラジルとインドで、前者が90.43%、後者が77.01%(1月10日時点)と高く、流行国ではほぼオミクロン株に置き換わったといってよい状況だ。

■オミクロン株の特徴とは?


感染例が確認されてから約2カ月。現時点では、オミクロン株についてはまだわかっていないことが多い。2022年1月19日の新型コロナウイルス感染症対策本部の資料(以下、対策本部資料)でも、「可能性」や「示唆」という表現が散見される。以下、対策本部資料でのオミクロン株に関する記述を整理する。

オミクロン株の特徴については、「デルタ株に比べて、世代時間、倍加時間や潜伏期間の短縮化、二次感染リスクや再感染リスクの増大が確認されており、感染拡大のスピードが極めて速い」と記されている。感染経路は、飛沫やエアロゾルの吸入、接触感染などで、従来株やデルタ株と変わらないという。

重症化のリスクについては、デルタ株と比べて「重症化しにくい可能性が示唆」されているとある。実際、全国の1日あたりの感染者数が5万人を超え、過去最多を記録した2022年1月22日、入院・療養中の患者数が約25万5千人に対して重症者数は424人である。国内第5波を引き起こしたデルタ株は、1日にあたりの感染者は最大で25,868人(8/20)、重症者は2,223人(9/4)だ。

ただし、第5波のときもそうだが、重症者数の増加は、感染者数の増加に遅れて現れてくるので、いま少ないからといって油断できない。また重症化率が低くても、感染者数が大幅に増えれば、当然、重症化する患者数も増加する。

対策本部資料でも「現在の若者の中心の感染拡大により療養者数が急激に増加した場合には、軽症・中等症の医療提供体制等が急速に逼迫する可能性があること、さらに、今後高齢者に感染が波及することで重症者数の増加につながる可能性があることに留意が必要」と、引き続き警戒するよう促している。

■オミクロン株へのワクチン効果は?


気になるワクチンの効果についてはどうか。

対策本部資料には、オミクロン株はワクチン接種や自然感染による免疫を逃避する性質が示唆されており、ワクチン2回接種による発症予防効果は、デルタ株と比較して「著しく低下する」と評価されている。

ただし、仮に発症した場合の入院予防効果については、デルタ株に比べると一定程度低下するものの、「発症予防効果と比較すると保たれて」いると評価している。

2021年12月から始まっている3回目追加接種(ブースター接種)については、「発症予防効果が一時的に回復する可能性が示唆」されており、「3回目接種によって入院予防効果が回復する」という海外からの報告があるとして、引き続き有効との考えを示した。

■経口抗ウイルス薬は状況改善の切り札になるか?


ワクチンと並んで新型コロナウイルス感染症の重症化予防で期待されているのが、経口抗ウイルス薬だ。日本の状況はどうなっているのか。

厚生労働省は2021年12月24日、米製薬大手メルクが開発した経口抗ウイルス薬「モルヌピラビル」を特例承認した。モルヌピラビルは、発症早期の軽症から中等症の新型コロナウイルス感染症患者が服用することで重症化を防ぐ薬で、オミクロン株にも有効である可能性が高いとされている。

ただし、誰でもすぐに使えるというわけではなさそうだ。現時点では、新薬の安定的な供給が困難な状況にある。そのため当面は一般に流通させず国が買い上げ、治療する医療機関および対応薬局からの依頼にもとづいて、無償譲渡するという体制がとられる。

1月14日には、米製薬大手ファイザーの日本法人が新型コロナの経口治療薬「パクスロビド」の製造、販売を厚生労働省に承認申請したと発表した。米国でも先月緊急使用が認められた薬で、臨床試験では、重症化リスクのある感染者に発症から5日以内に投与したところ入院や死亡のリスクを88%減らす効果が認められた。オミクロン株への効果も期待されている。

日本政府とファイザーは2021年12月17日、開発中の新型コロナウイルス治療薬を200万人分供給することで基本合意を結んでいる。現在、早期の供給開始に向けて協議が進められている。

■社会を止めないための模索は続く


「感染を止める。社会は止めない。」

東京都の小池百合子知事は2022年1月14日の記者会見で、こう発言した。厚生労働省も同日、オミクロン株の濃厚接触者について待機期間を現在の14日から短縮して10日にすると発表。さらにいわゆるエッセンシャルワーカーにかぎり、各自治体の判断で待機期間を最短6日間に短縮できるとした。国立感染症研究所の調査報告で、オミクロン株症例の潜伏期間の約3日だったことを踏まえた決定だ。

小池知事の発言も、厚生労働省の発表も、規制一辺倒の対応では、社会機能を維持することが困難との認識が背景にある。オミクロン株流行下で、コロナ規制を緩和する動きは海外でも見られる。

2022年1月19日、イギリス政府は、イングランドで実施されていたコロナ規制の大半を近く解除すると発表した。2022年1月4日に過去最多の感染者数221,222人を記録したが、その後は10万人前後まで減少したことを受け、感染のピークを越えたと判断。在宅勤務の推奨は同日打ち切られ、27日からは屋内の公共施設などを含めてマスク着用義務を廃止(ただし、ふだん会うことのない人と接触する可能性のある混雑した屋内スペースでは、引き続きマスク着用を推奨)。大型イベントやナイトクラブなどへの入場時に必要だったワクチン接種証明(NHS COVID Pass)の提示も不要となる。

フランス政府も20日、コロナ規制を緩和することを発表した。飲食店などを利用時にワクチン接種証明の提示を義務づける法律が24日から施行すること、さらに感染のピークを超えたという判断が根拠にある。2月2日よりテレワークや屋外でのマスク着用義務などの規制を段階的に解除する方針だ。

感染抑制と社会活動の推進。これまで成し遂げられたことのないこの目標達成に向けて、世界各国で模索が始まっている。

✳︎本稿の情報は2022年1月21日時点のものです。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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