
■AIを用いた乳がんスクリーニングシステムで早期診断の発展を
アメリカとイギリスの専門家と共同で、検診用マンモグラフィから乳がんを特定するための機械学習モデルを開発したGoogle。がん研究会有明病院はGoogleと共同で、この機械学習モデルの有効性を日本人で検証する研究契約を締結したことを発表した。乳がんは日本人女性でもっとも罹患数の多いがんとして知られ、毎年10万人近くが診断されている。乳がんの根治治療が十分可能な早期段階での発見のためには、マンモグラフィによる健診が有効とされているが、その検診受診率は、欧米の約75%に比べて、日本は約47%と低い。そのせいもあってか、1990年以降、ほかの先進国では乳がん死亡率が減少しているにもかかわらず、日本では増加傾向にある。
なぜ日本ではマンモグラフィによる乳がん検診受診率が上がらないのか? 検診自体の認知度や受診者自身の意識の問題もあるだろうが、日本独自のシステムの問題も関係している。というのも、日本では異なる読影医による二重読影が推奨されているため(それ自体が悪いわけではない)、読影医の不足が検診数増加を妨げている側面があるのだ。
そうした現状において、AIを活用した乳がんスクリーニングシステムを用いることができれば、医療基盤拡大につながり、早期での乳がん診断に役立つことが期待される。そこで、今回発表された共同研究では、2007年から20年のあいだにがん研有明病院乳腺センターおよび健診センターで撮影された約2万人のマンモグラフィ画像を使用し、機械学習モデルのパフォーマンス分析をおこなうという。
内閣府のAIホスピタルプロジェクトを率いるがん研究会がんプレシジョン医療研究センター所長の中村祐輔氏は、この共同研究に関して、次のように述べている。
「がん検診にAI技術を利用することは、多くの方が検診を受けても、診断の精度を保ちつつ、放射線科診断医の負担を軽減することにつながります。Googleと協力して、この取り組みを円滑に進め、全国どこにいても乳がんで命を落とさない未来を創造できればと考えています」
この抱負が実現されることを期待しつつ、がん研有明病院とGoogleの共同研究の推移を見守っていきたい。
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