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Medical DX編集部 2021.10.22

オンライン診療の課題と可能性〜「日経クロスヘルスEXPO 2021」レポート

■オンライン診療の現況は?


10月11日から22日まで、ヘルスケア変革を支援するオンラインイベントとして開催された「日経クロスヘルスEXPO 2021」。「ネクスト・パンデミックに備える」「AIホスピタルによる医療AIの社会実装について」「医療・介護薬局の情報連携」「介護DXの最新事情」などをテーマにした、合計27のセミナーが開催されたが、そのなかでも20日に開催された「オンライン診療は『次のステージ』へ」をレポートする。

同セミナーは、医療法人社団嗣業の会理事長の黒木春郎氏がホスト役となり、厚生労働省医政局医事課の福田亮介氏、多摩ファミリークリニックの大橋博樹氏、はちのへファミリークリニックの小倉和也氏、地域スマート医療コンソーシアムの竹内公一氏が登壇者となって、オンライン診療の現況からゆくえまでを、現場の声を交えつつ、議論するというものであった。

まず、厚生労働省医政局医事課の福田氏から、「日本のオンライン診療をめぐる政策動向」について、そもそもの制度発足の経緯から、新型コロナウイルス感染症拡大を踏まえた対応、初診からのオンライン診療実施に関する議論までの発表があった。

当メディアでも、厚生労働省による「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」などによって、現在議論が進められているオンライン診療の恒久化について、加藤浩晃先生に解説してもらっているが、そもそも対面診療の補完として離島や僻地の患者など限定的に行われることが想定されていたオンライン診療が、いかにして恒久化を検討するまでに至ったかが、簡潔に説明された。

参考記事:連載「これからのオンライン診療」

続いて、現場からの声として、多摩ファミリークリニックの大橋氏、はちのへファミリークリニックの小倉氏、地域スマート医療コンソーシアムの竹内氏の発表があった。

■新型コロナ対策としてオンライン診療に参入


多摩ファミリークリニックは、2010年に川崎市多摩区登戸にて、内科・小児科・外科のクリニックとして開業。常勤医師3名、看護師5名、薬剤師1名の体制で1日120名の外来患者と220名前後の訪問診療患者を担当しているという。立地もあるだろうが、親子受診が多く、3世代、4世代受診家族もいるとのことだ。

オンライン診療に関しては、2020年4月10日の「新型コロナウイルス感染症に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取り扱いについて」に関する通知が厚生労働省より発出されるまでは、まったく関心がなかったという。

20年5月に日本プライマリ・ケア連合学会内で「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド」を作成、オンライン診療に適している症状、適していない症状、在宅医療におけるオンライン診療やオンライン服薬指導などのポイントをまとめたうえで、自身のクリニックでもオンライン診療に参入した。

実際にオンライン診療に従事して、画面越しの情報は想像以上に有用であること、生活の場などが見えることでプチ訪問診療のような利点があること、土曜診療の負担軽減にもつながったことなどをメリットとして感じているという。

大橋氏は、外来診療においても、在宅診療においても、また医師の働き方改革という面からも、オンライン診療は新しい診療形態として多くの可能性を秘めており、必須のツールになると考えているが、そのためにも診療報酬上の評価は必須であり、正しい適応と使い方をプロフェッショナルオートノミーの視点で考えていく必要があるとしていた。

■地域医療の課題解決のカギもオンライン診療が握っている!?


はちのへファミリークリニックは、青森県八戸地域にお住まいの方が安心して医療や介護を受けられる環境づくりをめざし、病院や薬局、介護施設などが連携をとるコミュニティテーム(connect8)を立ち上げており、21年8月時点で登録事業所数が約300、スタッフが約1400名となっており、八戸市内の主要な在宅医療を行うクリニックが参加し、登録患者は延べ4000人以上という実績を誇っている。

connect8は、地域包括ケアの要として機能しており、ふだんから多職種とのICT連携、SNS連携が図られていた。また、訪問介護やケア施設の現場においては、以前から患者・家族・看護師・介護職員とテレビ通話などをとおしてオンライン診療が行われていたこともあり、コロナ禍における初診からのオンライン診療への取り組みもスムーズに進んだという。

そうした経験から小倉氏は、新型コロナ対策は平時からの多職種連携・ICT連携などの地域包括ケアの取り組みが基盤となりうること、またオンライン診療を活用することで在宅ケアと地域医療の質を向上させ、今後の地域共生社会の発展を促進することができるのではないかと発表された。

竹内氏からは、ITリテラシーの低さなどから取り残されがちな高齢者が自宅で簡単に地域の病院や薬局にアクセスできる環境づくりをめざし、あくまでアクセスする患者目線に立ってオンライン診療を普及させるという、地域スマート医療コンソーシアムの活動コンセプトや活動内容が発表された。

参考記事:「ボトムアップで遠隔医療の課題を解決する『地域スマート医療コンソーシアム』」

■オンライン診療が次のステージへ進めるためには?


最後に、ホスト・登壇者を交えての討論があったが、皆それぞれの立場からオンライン診療にかかわっているだけに、率直なやりとりは非常に興味深いものがあった。

たとえば、オンライン診療がなかなか普及しない理由としては、「医療者側への啓発と診療報酬上の評価などの経済的ハードル」「関係職種との連携・情報共有そのものができていない」「システムやツールの不統一」といったものがあがったり、ITリテラシーの低い方へのアプローチについては、「アプリのインストールがそもそもハードルだからこそ、家族にアプローチすることが重要」「音声ロボットなどの活用が意外に有用」といった声がある一方で、「ヘルパーさんに皺寄せが行っている現状もある」といった声もあった。

オンライン診療が次のステージへ進むためには、「情報連携と多職種連携を進めること」「複数の病院が連携する仕組みづくり」が必要であり、その一方で「医師がガラパゴス化しないこと」「大学病院にとどまらない、地域に溶け込める医療人材づくり」が必要であるとされた。

今回のセミナーは、オンライン診療の現場に携わっている方が多く登壇していたこともあり、オンライン診療の可能性と、現在抱えている課題が鮮明になる、よい機会にもなっていたように思う。こうした議論を深めることで、オンライン診療の可能性がますます広がっていくことに期待したい。
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