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加藤 泰朗 2021.10.14
遠隔医療のDX

動画共有/音声通話アプリで、医療格差問題に挑む⁉︎

■ICTで医療格差解消をめざす


ICTを活用して、医療の地域格差解消をめざす医療ベンチャー、ハート・オーガナイゼーションは、2021年9月9日より、動画共有/音声通話が可能な遠隔医療コミュニケーションアプリ「Caseline」の販売を開始した。

超高齢社会の日本では、今後も医療需要の増加が予測される。一方で、医師の大都市偏在、医療過疎地域における二次救急の不足、「医師の働き方改革」による専門医の不足などによって、地域で受けられる医療の格差は拡大傾向にある。日本の医療にとって、地域格差の解消は喫緊の課題である。

ハート・オーガナイゼーションは、こうした臨床現場における課題をICTの力で改善するために、同社のネットワークを利用する7,000人の循環器内科の専門医からニーズを集めて、Caselineを開発。「天塩町立国民健康保険病院と名寄市立総合病院」「東京医科大学八王子医療センター」「大牟田天領病院と熊本大学病院」の3カ所で行った実証実験で、Caselineが医療の地域格差解消に寄与することが確認されたことを踏まえ、今回の販売を開始した。

同アプリは2021年8月30日、「汎用画像診断装置ワークステーション用プログラム」として医療機器認証を受けている。

■わずか2ステップ、20秒で遠隔医療の環境が整う


Caselineは、救急搬送・処置中の現場医師(発信側)と遠隔の専門医(受信側)とをほぼリアルタイムでつなぐことができるプログラムである。

発信側にあるX線やCTなどの医用画像診断装置から取得した画像データを、送信用コンピュータを介して、アプリをダウンロードした発信側・受信側それぞれのiOSデバイスに送信。アプリで画像を表示・共有しながら、音声通話でやりとりすることで、遠隔医療を実施する。

アプリの利用方法は、わずか2ステップとシンプル。発信者が、端末上のアプリで画像を選択して通話ボタンをタップ。あとは受信側がアプリで通話を受けるだけで、環境が整う。時間にすると20秒程度だ。

わずか20秒、2ステップでやりとりが可能になる。

Caselineを使うと、たとえば心臓カテーテル室や操作室のモニタに表示されている画像を遠隔地にいる専門医と共有することで、遠隔地の専門医が「2人目の医師」の役割を担うことができる。これにより、夜間や休日などで、経験の浅い医師しかいない状況でも、緊急カテーテル治療を安全に実施することが可能になる。

また、これまで急性心筋梗塞患者は、受け入れ病院で検査し、治療判断をしてきたが、Caselineを使って救急車両内で取得した検査画像を搬送前に病院に送信することで、前倒しで受け入れ準備ができるため、治療までの時間短縮につながる。搬送前に救急隊と病院とで情報共有することで、適切な病院選択・患者搬送にも役立てられる。

救急搬送における時間短縮でも力を発揮できる。

■北海道名寄市でサービス提供始まる


さっそく国内で、Caselineを導入する動きがある。

2021年9月15日、北海道名寄市にある上川北部医療連携推進機構とハート・オーガナイゼーションは、救急医療および地域医療における事業連携協定を締結したと発表した。今後、救急医療支援、遠隔診療支援、地域の医師の育成支援の3つの事業を共同で展開する。

Caselineを活用するのは、「救急医療支援」。循環器疾患の救急患者を対象として、地域医療機関の医師と名寄市立総合病院の専門医がリアルタイムに心エコーや12誘導心電図などの映像を共有し、音声通話を通して診断、治療を迅速に行う体制を整える。

Caselineで名寄市立総合病院と連携するのは、士別市立病院(士別市)、町立下川病院(上川管内下川町)、美深厚生病院(美深町)、枝幸町国民健康保険病院(宗谷管内枝幸町)の各病院と、士別消防署、枝幸消防署。

各病院や救急車に、データ送信用のタブレット端末やスマートフォンを配備。各病院や救急車から名寄市立総合病院に送られてくる心電図や心臓超音波検査画像などを、名寄市立総合病院の専門医がリアルタイムで診断。救急対応の内容や搬送先を指示することで、救命率の向上をめざす。

■対応領域の拡大と海外展開も視野に


ハート・オーガナイゼーションは、まず国内で急性心筋梗塞などの循環器領域でのCaselineの普及をめざす。その後、脳神経外科、心臓外科へと利用範囲を広げ、さらに救急対応での外傷、呼吸器、消化器、産科など需要のある分野へと展開していく予定だ。将来的には、同社の既存サービスを展開するアジア、中東、欧米の医師ネットワークにもCaselineのサービスを提供するという。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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