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加藤 泰朗 2021.10.11

AI×スマホのカメラで皮膚疾患を判定! Googleの新サービス、年内に欧州で試験公開予定

■身近なテクノロジーを新しい価値に変える


スマートスピーカーやロボット掃除機など、もはや私たちにとって日常的なテクノロジーとなったAI(人工知能)。従来のテクノロジーとAIとが融合することで、次々と新しい価値が生み出されている。

医療・健康分野では、たとえば米・Cardiogramの開発したAIアプリ「Cardiogram」は、ウエアラブルデバイスを医療に役立つ機器に変えるアプリだ。Apple WatchやFitbitなどで収集した心拍数や歩数などの健康データをAIで解析することで、睡眠時無呼吸症、高血圧、心房細動、糖尿病の4種類を検出できる。

そしていま米・Googleが実用化に向けて開発を進めているのが、スマートフォンのカメラを健康管理に役立つ機器に変えるサービスだ。

Googleは2021年5月、AIを活用した皮膚疾患診断支援アプリを公開した。スマートフォンのカメラで皮膚や髪、爪の気になる箇所を撮影することで、その部分の疾患を特定するウェブアプリケーションである。

■20億人が悩む皮膚のトラブル解決に光明!?


世界中で20億人が皮膚に関するトラブルに悩んでいるといわれる。アメリカでは、皮膚がんがもっとも一般的ながんだ。米国皮膚科学会によると、アメリカでは毎年数百万人が皮膚がんと診断されている。日本では、皮膚がんの罹患患者数は、多くはないが(2018年で24,079例。同年で一番診断数の多いがんは大腸がんで、152,254例)、アトピー性皮膚炎は年々増加傾向にある。

Googleによると、「Google検索」では毎年約100億件、皮膚、爪、髪の毛のトラブルについて検索されている。皮膚の専門医が世界的に不足しており、多くの人が問題を解決するために、最初のアプローチとしてGoogle検索を利用することが背景にあるという。

ただし、医療関係者でないかぎり、自分の肌などに起きているトラブルを言葉に置き換え、検索し、答えにたどり着くことは容易ではない。そこでGoogleは、3年の月日をかけて、私たちにとって身近なデバイスであるスマートフォンを利用してこの課題を解決する今回のシステムを開発した。

■写真を3枚とって質問に答えるだけ


サービスの利用方法は、じつにシンプルだ。

アプリを起動し、スマートフォンのカメラで、肌や髪、爪などの気になる部分を、異なる角度から3枚撮影する。続いて、肌のタイプや症状が出てからの期間、そのほかの症状などについて質問に答えるだけだ。

送信した画像データや質問への回答をもとに、AIが288の疾患から可能性のある症状をリストアップ。各症状には、皮膚科医が監修した情報や、よくある質問への回答が表示されるほか、ウェブ上の類似した一致する画像も表示してくれる。

肌の状態を診断した約65,000枚の画像と診断データ、数百万枚のキュレーションされた画像、数千枚の健康な肌の例を含む非識別データをAIに深層学習(ディープラーニング)させて、微調整を加えてAIモデル(アルゴリズム)を作成。年齢、性別、人種、肌のタイプなどを考慮することで、データの偏りを防いでいる。

Googleは、開発したAIモデルを検証した査読付きの論文もいくつか発表し、その信頼性を高めている。雑誌『Nature Medicine』掲載の論文では、深層学習のアプローチが紹介されており、アメリカの認定皮膚科医と同等の精度を達成できることが示されている。アメリカ医師会が発行する医学雑誌『JAMA Network Open』に掲載された論文には、専門家ではない医師がAIベースのツールを使用して皮膚疾患を解釈する能力を向上させる方法が示されている。

■年内にヨーロッパで試験公開。そのほかの地域は未定


皮膚疾患診断支援アプリは、ヨーロッパでクラスIの医療機器としてCEマークを取得している。2021年内にヨーロッパではアプリが試験公開される予定だ。

ただしGoogleは、「皮膚疾患診断支援アプリは、医師に変わって診断を下したり、医学的なアドバイスの代わりになるものではない」という立場をとっている。実際に皮膚の疾患を診断するためには、医師による診察や生検などの追加検査が必要だという。精度が高いといえども、AI=機械が判断すること。間違った判定を下す可能性はあると考えられるからだ。

実際、Googleの本社があるアメリカでは、米国食品医薬品局(Food and Drug Administration:FDA)による安全性や有効性のテストを受けておらず、いまのところ、医療機器として使用することはできない。日本などそれ以外の地域でも利用の開始時期は、いまのところ未定だ。今後の動きに注目したい。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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