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加藤 泰朗 2021.9.28
遠隔医療のDX

オムロンヘルス、インドで新たな遠隔診療サービスの共同試験を開始

■世界的に高まる遠隔診療への需要


新型コロナウイルス感染症の拡大によって、人と人の接触の機会や移動が制限されるなか、遠隔診療へのニーズが世界的に高まっている。

市場調査レポートプロバイダREPORTOCEANが2021年4月に発行したレポートによると、世界の遠隔医療市場は2030年までに1711.3億ドルに達し、2020年から2030年にかけて毎年20.5%成長すると見込まれている。

こうした世界的な潮流に、積極的に活動を展開する日本の企業がある。オムロンヘルスケアだ。

オムロンヘルスケアは、腕時計型ウェアラブル血圧計「HeartGuide」や体重体組成計「カラダスキャン」などを発売する健康関連企業。2015年に、循環器疾患事業のビジョンとして「脳・心血管疾患の発症ゼロ(=ゼロイベント)」を掲げ、その実現をめざして製品開発を進めてきた。2019年にはアメリカで心電計付き上腕式血圧計「Complete」の発売を開始している。
腕時計型ウェアラブル血圧計「HeartGuide」

■心疾患手術患者の術後管理に遠隔診療を活用する試み


オムロンヘルスケアは2021年8月19日、トライコグヘルスとサクラワールドホスピタルと共同で、心疾患手術およびアブレーション治療(カテーテルを用いた不整脈治療)を受けた患者を対象とした遠隔診療サービスの共同試験を開始すると発表した。

トライコグヘルスは、シンガポールに本社がある、クラウドベースのAI活用サービスを通して医療機関を支援するヘルステックベンチャー。同社が開発した心疾患バーチャル診断サービス「Insta ECG」は、患者の心電図データをクラウド上でAIが解析し、わずか6秒以内に緊急を要する心血管疾患か判断できるという。

サクラワールドホスピタルは、ベンガルールで2014年2月に開院した総合病院。複数の専門診療科をもち、脳・心臓系、消化器系疾患の高度急性期医療に対応できるインド初の多国籍医療機関だ。

今回の共同試験は、サクラワールドホスピタルで心疾患の外科手術もしくはアブレーション治療を受けた患者50名が対象。試験期間は、2021年8月17日から約6カ月間を予定している。

試験に使用する機器は、オムロンヘルスケアのCompleteだ。術後患者にCompleteを配布し、退院後、毎日家庭で血圧と心電図を測定し記録。記録されたデータは、トライコグヘルスのプラットフォームに転送され、AIで解析して、患者の状態をくわしく分析する。

心電計付き上腕式血圧計「Complete」

サクラワールドホスピタルの医師や医療従事者は、その分析結果のデータを用いて、遠隔で患者の健康状態をチェック。患者の状態に変化があれば介入する。患者は自宅で過ごしながら、24時間、サクラワールドホスピタルの医療従事者と連絡できる体制をとる。

今回の共同試験を通して、心疾患患者の術後管理における血圧・心電図データの遠隔モニタリングの有用性と、遠隔診療サービス実現のための要件を検証する。さらに、患者の状態や特性に適した術後管理の方法や、再発防止につながる医療体制の構築をめざす。

■進むオムロンヘルスの海外でのサービス展開


オムロンヘルスケアは、これまでも海外でいくつかの遠隔診療サービスを展開してきた。

2019年2月には、オランダの遠隔医療サービスプロバイダのルーシー(Luscii)と戦略的提携を締結。ルーシーの遠隔診療サービスは、慢性疾患患者が自宅で医療サービスを受けられるサービスで、オランダ全土の約半数の病院で使用されている。オムロンヘルスケアヨーロッパを通じて出資し、ルーシーの遠隔診療サービス開発を支援している。

2021年4月には、イギリスで高血圧治療のための遠隔診療サービス「Hypertension Plus」の提供を開始。

アジアでは2019年3月に、シンガポールのiAPPSと合弁会社を設立し、シンガポール企業向けの従業員向け健康管理サービスプラットフォーム「HeartVoice」の販売を始めている。

関連記事:「世界各地で遠隔医療サービスを展開するオムロン、その現状は?」

インドでも2020年7月より、糖尿病や高血圧症などの慢性疾患管理サービスを展開するオンライン診療サービスプロバイダのテラルスと業務提携。家庭で血圧計を使用する人をテラルスのオンライン診療サービスに誘導し、適切な診断・治療につなげる取り組みを続けている。2021年7月には、オムロングループのベンチャーキャピタル、オムロンベンチャーズがテラルスに出資し両社の業務連携を強化して、インドにおける遠隔診療サービスのさらなる展開をめざしている。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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