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岩本 修一 2021.8.30
医療経営とDX

地域連携とDX〜経営改善と患者アウトカム改善をめざして〜(前編)【医療経営とDX 第3回】

「医療経営とDX」をテーマにお届けしているこの連載、第3回目となる今回は「病院の地域連携とDX」についてお伝えします。

これまでの「医療経営とDX」連載記事はこちら

もし、自院において改善すべき業務の選定に悩まれているようであれば、ぜひ一度「地域連携」に着目するのがよいでしょう。そう考える理由は2つあります。

1つは、病院経営の重要課題である入院収益減に対するアプローチだからです。もう1つは、手始めの策が打ちやすいからです。

地域連携に関する業務は紹介状のやりとりだけでなく、地域医療を構成するステークホルダーとの関係性構築や、紹介患者がスムーズに受診できるようにする院内プロセスの見直しなど多岐にわたり、これら全てを一括してDXで再構成するのは難事業です。しかし、地域連携の複雑な業務フローを整理・分解した上で、一部の優先する業務についてDX導入を図ることは現実的な選択肢です。

また、地域連携業務の多くは「情報の統合と共有」が肝となります。よって、ITツールとの親和性が高く、患者統計などの既存の指標にも成果が表れやすいため、プロジェクトの効果を実感しやすい分野だと考えます。

本稿では、地域連携の役割を踏まえて、地域連携がDXによってどのように変化するか、どのように実行されていくかを解説します。

地域連携室の役割


地域連携のDXプロジェクトについて考える前に、病院における地域連携室と地域連携について確認します。

ここではシンプルに「地域の医療機関が自院の特徴を理解して紹介し、自院も地域の連携先を理解して適切な逆紹介を行うこと」を地域連携のミッションとします。このミッションに取り組む部署を地域連携室と呼ぶこととします。

一般的に、地域連携室は以下の役割を担っています。

  1. 連携機関が自院を知ってもらうための広報活動(前方連携)
  2. 退院を円滑かつ適切に進めるための退院支援(後方連携)
  3. 地域の医療需要や連携機関の状況等の情報収集(情報管理)

院内での位置づけや経営方針によって求められる役割の範囲は異なりますが、地域連携室が担っているのは、入院患者数や紹介患者数、在院日数などの経営指標に直結する極めて重要なものだと言えます。

自院の機能に関する深い理解はもちろん、周辺の医療機関、行政を含めた地域医療介護の情報や動向を正確かつ素早くキャッチし、経営戦略に組み込んで各施策に活用していくことが求められ、病院経営の中核業務の一つです。地域連携室にエース級の優秀な人材を配置している病院も多いでしょう。

次に、地域連携の業務フローをみておきます。地域連携では、連携フローとデータ運用フローの2つがあります。


連携フロー(上図)は、前方連携と後方連携の大きく2つに分かれます。

前方連携は、他の医療機関から認知・紹介されて患者が来院するまでの過程を指します。

自院の機能や役割を広く知ってもらうことは、紹介患者数や紹介患者入院数に直結します。例えば、自院が得意な手術や疾患群を地域の医療機関に知ってもらえれば、該当する患者が多く紹介されるようになり、結果として手術件数や入院患者数が増えます。

後方連携は、退院後の行き先を決めるプロセスのことです。病院は疾患ごとに標準的な平均在院日数が設定されており、その日数を超えて入院が続くと入院患者からもらえる1日あたりの金額が低くなります※。また、高齢の方が入院される場合、入院中に病院で行う治療だけで完結するものではないものが大半です。

長期療養を得意とする病院へ転院あるいは在宅医療サービスを用いての治療継続やリハビリテーション、適切な介護の場が必要になります。それらを評価し適切な“行き先”を選んで決定するために、退院支援看護師やソーシャルワーカーなどの多大な努力が費やされています。


データ運用フローは、3段階から成ります(上図)。地域連携情報を入力し、それを分析・統合して活用につなげます。

例えば、紹介患者の情報と自院の治療に関する情報を入力し、どの地域や医療機関からの紹介患者が多いのか、そのうちどのくらいの方が入院治療につながっているかなどの分析に用います。

※包括医療費支払い制度(DPC)導入病院の場合

地域連携におけるDXの導入


地域連携を対象にDXプロジェクトを行うのであれば、上記の2つの業務フローをベースに整理するとよいでしょう。

最初は、精緻さにあまりこだわらず、ざっくりとでもいいので現状のプロセスを書き出し、行われる順番で並べてみるのをオススメします。その上で、自院の経営課題に立ち返って、業務フローのどの部分を変換するかを考えていきます。

実際には、意思決定に関わる方が導入したいツールがあってDXの検討が始まるパターンもあるでしょう。この場合であっても、経営課題と業務フローに照らし合わせることから始めるのが定石です。手段(ツール)が決まっていたとしても、目的と現状を確認することがDXを失敗させないポイントです。(連載第2回参照

例えば、病床稼働率の低下が経営課題であれば、前方連携の「認知〜紹介〜来院」のいずれかに着手するのが自然です。空きベッドがなく患者を受け入れられない状況が課題なら、よりスムーズに退院を促せるように後方連携がターゲットになりそうです。また、地域連携担当者の多くの時間がデータ収集に費やされ、分析や活用が不十分であるなら、データ収集の仕組みについて検討すべきです。

業務フローの整理でボトルネックを発見し、より効果的な施策を選びましょう。

次回は、地域連携における具体的な事例をご紹介し、地域連携におけるDXプロジェクトを行う際のポイントをお伝えします。


※本記事は倉敷中央病院医事企画課係長 犬飼貴壮さんとデジタルハリウッド大学院大学特任助教 木野瀬友人さんにアドバイスを得て執筆しております
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WRITTEN by

岩本 修一

株式会社omniheal Chief Experience Officer(CXO)、医師、経営学修士。
広島大学医学部医学科卒業。福岡和白病院、東京都立墨東病院で勤務。2014年より広島大学病院 総合内科・総合診療科助教。2016年よりハイズ株式会社で病院経営およびヘルスケアビジネスのコンサルティングに従事。2020年1月より株式会社omniheal/おうちの診療所目黒でCXO・医師として経営参画し、経営戦略、採用・人事、オペレーション構築、マーケティング、財務会計と在宅診療業務を担っている。
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