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加藤 泰朗 2021.8.25

日立、AI医療ビッグデータ分析システムを活用して自治体の保険事業支援を開始

■日立が糖尿病の重症化予防サービスを栃木県で提供


日立製作所(以下、日立)は2021年6月30日、栃木県と栃木県国民健康保険団体連合会(以下、連合会)に、AIを活用した保健事業支援サービスの提供を開始したと発表した。

支援サービスを支えるのは、日立の医療ビッグデータ分析システム「Risk Simulator for Insurance」。年齢や性別、糖代謝や肝機能、脂質などにかかわる検査数値、生活習慣や既往症の有無など、200以上の項目を組み合わせて、将来の生活習慣病にかかわる入院リスクをシミュレーションするシステムだ。システムで予測できる疾患は、糖尿病、脳血管疾患、腎疾患、心血管疾患、高血圧性疾患、膵疾患、肝疾患、悪性新生物の8つ。今回、日立が栃木県と連合会に提供したサービスは、糖尿病の重症化予防を目的としたものである。

栃木県の糖尿病患者数は全国平均を上回り、約55,000人(平成29年患者調査)と推定され、その数は年々増加している。そのため県は、2017年度から「栃木県糖尿病重症化予防プログラム」を立ち上げ、県民の糖尿病重症化予防対策を進めてきた。

予防プログラムは、国民健康保険、協会けんぽなど健康保険証を発行している保険者が従来の特定健診・特定保健指導に加え、健診データやレセプトデータを活用して対象者を抽出し、かかりつけ医と連携した保健指導などを行うことで、対象者の生活習慣改善や医療機関での治療に結びつけ、糖尿病発症や重症化、人工透析への移行を防ぐというもの。

県がプログラムにもとづき県民のレセプト・健診データから保健指導対象者リストを作成して市町に提供。市町は、そのリストから糖尿病リスクの高い被保険者を選定し、保健指導を行う。2018年度には、プログラムの基準にもとづく対象者を抽出する独自のしくみを構築している。

一方で、従来のしくみでは、年齢・性別・既往歴などの情報から、手作業でさらに対象者を絞り込む必要があった。そのため、保健指導対象者が多いことから、緊急に対応すべき指導対象者の効率的・効果的に選定できる新しいしくみが求められていた。

今回日立は、同社の医療ビッグデータ分析システム「Risk Simulator for Insurance」を活用し、栃木県民の過去8年分の匿名化された医科・調剤レセプトや健診データをもとにした、糖尿病の重症化予測に特化した栃木県独自の予測モデルを構築。

AIを活用した保険事業支援サービスと活用イメージ

この予測モデルを使用することで、空腹時血糖をはじめとした血液検査数値や過去の病歴など、健康状態にかかわる項目と糖尿病重症化リスクを結びつけ、この先の5年間において、糖尿病が現状から重症化し、受診や入院が必要になる確率を算出することが可能になる。さらに、被保険者単位で、糖尿病既往の有無などから将来の発症リスクを3段階で判定し、合併症の発症や人工透析が必要となる確率を予測・可視化することもできる。

県から市町に、糖尿病リスク度が付与された保健指導対象者のリストが提供されることで、手作業で行った選別の負担が大幅に軽減されることになる。保険者の緊急度が紐づけられているため、個々人の状況に応じた効果的な受診勧奨や保健指導が可能になり、重症化予防も期待される。

栃木県にかぎらず、全国の都道府県や各市町村で、現在、厚生労働省の「国保ヘルスアップ支援事業」のもと、被保険者の健康保持・増進、疾病予防、生活の質の向上などの名目で、国保データベースなどの医療情報や健診情報を活用した保健指導などが進められている。日立は、今回の栃木県と連合会との取り組みの経験・ノウハウを活かし、本サービスの他自治体への展開をめざすという。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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