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Medical DX編集部 2021.7.30
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

初診からのオンライン診療「ほぼ解禁」の理由【加藤浩晃先生に聞く vol.10 前編】

これまで本連載では加藤浩晃先生に、厚生労働省による「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下「検討会」)を中心に、とくに初診からのオンライン診療の恒久化が、どのような議論によって進められているのかを解説いただいてきた。その議論も、この5月末から一気に加速し、大詰めの段階を迎えている。

今回は、前回の連載で触れた、5月31日の第15回検討会、さらに6月1日に一般社団法人 日本医学会連合が行った「オンライン診療の初診に関する提言」、翌6月2日に開かれた「第11回成長戦略会議」から、この6月30日に行われた第16回検討会に至るまでに起こったトピックを、加藤先生にお話しいただく。

ぜひ前回の連載第9回をお読みいただいてから、今回の内容に進んでいただきたい。
今秋のオンライン診療の指針改定への新展開【加藤浩晃先生に聞くvo.9】


■閣議決定された「規制改革実施計画」の内容


──6月30日に第16回検討会が行われ、第15回検討会における議論のまとめと、今後の方針について話し合われたということですので、そこでの議論のポイントをお聞かせ願えればと思います。

加藤:そうですね……、それにはまず、検討会のお話をする前に、「規制改革実施計画」の内容からお話ししなければいけません。

──内閣府の規制改革推進会議で6月1日に答申されたものが、同18日に閣議決定されたものですね。

加藤:ええ。どちらかというと、この6月18日が今回の話の肝となる部分なんです。まず、この「実施計画」のなかで、オンライン診療について「オンライン診療・オンライン服薬指導の特例措置の恒久化」という項目が作られています。


加藤:「オンライン診療・服薬指導については、新型コロナウイルス感染症が収束するまでの間、現在の時限的措置を着実に実施する」「オンライン診療の更なる活用に向けた基本方針を策定し、地域の医療関係者や関係学会の協力を得て、オンライン診療活用の好事例の展開を進める」といったことが明記されるなか、注目していただきたいのがこの表の「c」です。

ここで、オンライン診療の初診の取り扱いについて記されています。まずは「かかりつけ医による実施」が原則ということですね。さらに、かかりつけ医以外の医師でも、医師があらかじめ診療録、診療情報提供書、地域医療ネットワーク、健康診断の結果などの情報で、患者の状態が把握できれば、初診からのオンライン診療が認められます。

──前回お話しいただいた、第15回検討会の内容がそのまま反映されていますね。

加藤:ただ、今回の大きなポイントは「c」の後半の段落なんです。再度引用します。

健康な勤労世代等かかりつけ医がいない患者や、かかりつけ医がオンライン診療を行わない患者で上記の情報を有さない患者については、医師が、初回のオンライン診療に先立って、別に設定した患者本人とのオンラインでのやりとりの中でこれまでの患者の医療履歴や基礎疾患、現在の状況等につき、適切な情報が把握でき、医師・患者双方がオンラインでの診療が可能であると判断し、相互に合意した場合にはオンライン診療を認める方向で一定の要件を含む具体案を検討する。その上で、対面診療との関係を考慮し、診療報酬上の取扱いも含めて実施に向けた取組を進める。
内閣府「規制改革実施計画」(令和3年6月18日閣議決定)資料より引用

■「過去に受診歴のない場合」でも初診からのオンライン診療が解禁か、その背景にあるものとは?


加藤:これを踏まえて、改めて第15回検討会までに話し合われてきた議論を振り返っていただきたいんですが……。こちらは前回の私の連載からそのまま引用します。

これまでもお話ししてきましたが、初診からオンライン診療を行う場合「かかりつけの医師」による診療ということを念頭に置いて、

(i)定期的に受診している場合
(ii)過去に受診歴がある場合
(iii)過去に受診歴のない場合
(iv)過去に受診歴のない患者について、かかりつけ医等からの情報提供を受けた場合

という4つのケースに分類して検討されてきました。そして、安全性・信頼性のために、「(iii)過去に受診歴のない場合」以外について初診からのオンライン診療を認めよう、ということで話されてきました。

加藤:つまり、この「規制改革実施計画」では、これまで検討会などで除外されてきた「過去に受診歴のない場合」においても、医師が患者さんの医療履歴や基礎疾患などの適切な情報が把握できたという判断ができて、話し合いによって合意すれば、初診からのオンライン診療ができるようにしよう、という決定がされたんです。これは、令和3年度から検討を開始して、令和4年度から順次実施していくとされています。

──受診歴がなくても、医師が患者から情報をとれればいい、ということですね。

加藤:そういうことです。つまり、初診からのオンライン診療は、ほとんど解禁された、と言っていいでしょう。

今年の10月から、オンライン資格確認の本格運用が始まります。特定健診情報などは、マイナポータルで連携されていきますよね?となると、健康情報がまったくない患者さんというのは、ここ1〜2年の間にほとんど存在しなくなる、と考えることができるんです。

オンライン資格確認の運用と並行して、今年の秋口に行われるオンライン診療の指針改定にこの事項が記載されるでしょう。あわせて、2022年度の診療報酬改定が来年の4月に行われ、この秋までに論点がまとめられて、秋以降に議論が行われることになります。

これらのタイムラインについても、同じく6月18日に閣議決定された「成長戦略フォローアップ」(https://www.cas.go.jp/jp/seisaku/seicho/pdf/fu2021.pdf)にまとめられています。

加藤:D to D(医師対医師)の遠隔医療についても触れられていることは大きなポイントですが、これはオンライン診療からは少し脱線しますので、また機会があればご説明したいと思います。

後編に続きます>>
検討会で議論されるオンライン診療恒久化への問題点【加藤浩晃先生に聞くvol.10 後編】


加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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