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Medical DX編集部 2021.6.28
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

今秋のオンライン診療の指針改定への新展開【加藤浩晃先生に聞くvo.9】

本連載でもたびたび話題となっていた、オンライン診療についての議論で、5月末から6月の頭にかけ、大きな動きがあった。今回はその議論の内容と、今後の動向について、加藤浩晃先生にお話をうかがった。

初診からのオンライン診療への新たな議論


──オンライン診療についてのニュースがいくつか立て続けに入ってきたのですが、その内容について、順を追って解説をお願いしたいのですが……。

加藤:わかりました。まず、この5月31日、厚生労働省による第15回の「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」が開かれました。以下の検討会の資料をご覧ください。
厚生労働省ホームページ 第15回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」資料2「初診からのオンライン診療に関する検討事項について」より引用

加藤:これまでもお話ししてきましたが、初診からオンライン診療を行う場合「かかりつけの医師」による診療ということを念頭に置いて、
(i)定期的に受診している場合
(ii)過去に受診歴がある場合
(iii)過去に受診歴のない場合
(iv)過去に受診歴のない患者について、かかりつけ医等からの情報提供を受けた場合
という4つのケースに分類して検討されてきました。そして、安全性・信頼性のために、「(iii)過去に受診歴のない場合」以外について初診からのオンライン診療を認めよう、ということで話されてきました。

──(i)(ii)に関しては、対象の患者について、一度はその医師にかかったことがあるという前提ですね。

加藤:そうです。そして、今回の議論点となったのが、(iv)の「過去に受診歴のない患者について、かかりつけ医等からの情報提供を受けた場合」です。

──この「かかりつけ医等からの情報提供」というのはどのような情報なんでしょうか。
厚生労働省ホームページ 第15回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」資料2「初診からのオンライン診療に関する検討事項について」より引用

加藤:この資料のように、診療をした医師から過去の診療録、情報提供書をもらってもいいですし、検診の結果や、地域医療ネットワークから情報をもらう、といったことは想像していただけると思います。これに加えて「デジタルデバイス等を用いて得られる患者の医学的情報」について、今後も議論していこうという話になりました。

2020年からの診療報酬改定において「遠隔連携診療料」が新設されました。そこでは、「D to P with D」の状況において、初診からのオンライン診療が認められましたよね?

──事前に主治医から遠隔地の医師に十分情報提供を行って、患者への説明で同意が取れれば、主治医のもとで遠隔地での初診からのオンライン診療を行える、というものですね。

加藤:そうです。ちょっと私の話になってしまって恐縮ですが、昨年2月に日本医師会の医療情報システム協議会で「めざすべきオンライン診療の未来」という議題で講演をさせていただいたんです。その際に、「D to P with D」に加えて「D to P with M」という未来があるという提言をさせていただいたんですね。

──「with D」はドクター=主治医のDですが、それに代わる「M」というのは何ですか?

加藤:メディカルデバイスのMです。視診、触診、聴打診と同じデータを得られる医療機器で、患者さんの状態を把握できるのであれば、十分な診察ができる、ということです。

──なるほど。つまり、その未来像は、今回の議論にあがっている「デジタルデバイス等を用いて得られる患者の医学的情報」についてと同じことなんですね。

加藤:ええ。「D to P with M」のように、医療機器とともに、患者さんのデータを把握すれば初診からオンライン診療ができる、という世界観が示されたわけです。

ただ、デジタルデバイスといっても、薬事承認などを経て医療機器として認められたものでなくてはいけない、というところが踏まえられています。それが踏まえられたデバイスであれば、患者さんが常に身に付ける医療機器からのデータや、医療機器によってコメディカルが取ったデータを活用する、といったところも想定可能な範囲に入ってくると思います。

今回の検討会では、先ほどの表にあった①〜④の条件に縛るのではなくて、医学的情報があり、現場の医師と患者さんとの二者間で合意すれば、初診からのオンライン診療をしてもいいのではないか、という議論されたことが大きなポイントになります。これらのことが、秋の指針改定にどれくらい反映されるのかに注目しておくべきでしょう。

日本医学会連合のオンライン診療への提言


──その翌日の6月1日に、一般社団法人 日本医学会連合がオンライン診療の初診に関する提言を公開しました。

加藤:その内容は原則としては実際の臨床現場においては個別の状況で担当医の判断が優先されるとはしているものの、内科から眼科・皮膚科・歯科まで12の診療科で、オンライン診療を適切に行うための「初診に適さない症状」と「初診での投与について十分な検討が必要な薬剤」が示されています。

──この日本医学会連合という団体はどういう団体なのでしょう。日本医師会はよく聞きますが……。

加藤:臨床部門96学会、社会部門19学会、基礎部門14学会の計129学会から構成された、日本の医学界を代表する学術的な全国組織の連合体です。簡潔に説明すれば、日本医学会連合は大学の先生や大学病院の医師といった、アカデミアのなかのトップ・オブ・トップということになります。対して日本医師会は開業医のトップ・オブ・トップととらえてもらっていいでしょう。

その日本医学会連合が提言を行なったことは、かなりインパクトの大きなものだと思います。

──この提言は、前日の検討会の方針を受けて示された、ということなんでしょうか。

加藤:ここでちょっと昨年12月に行われた、第13回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」の資料を見てみましょう。

厚生労働省ホームページ 第13回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」資料1「今後の検討のスケジュールについて」より引用

加藤:この行程表の「関係学会等での検討も踏まえ検討」という部分に今回の提言はちょうど当てはまるわけです。

さらにその翌日の6月2日に開かれた「第11回成長戦略会議」で、「成長戦略実施計画案」とその項目を記載した「成長戦略フォローアップ案」において、かかりつけ医に関する初診のオンライン診療の原則解禁と、オンライン診療料の見直しおよび、安全性・有効性が担保された疾患ごとにオンライン診療料を追加することが記載されました。

──となると今後の流れとしては……。

加藤:6月末の検討会で再度議論され、秋の指針改定へ進んでいくでしょう。その後に来年の診療報酬改定が行われ、オンライン診療料の診療報酬の点数の見直しが図られていくでしょう。次の検討会のあとに、新たな動きをご説明できればと思います。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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Medical DX編集部

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