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加藤 泰朗 2021.6.25
世界の医療DX事情

世界一起業する環境が整う国ニュージーランドの注目のヘルスケアスタートアップ

世界銀行の「DOING BUSINESS」によると、ニュージーランドはビジネスを始めるのに世界でもっとも適した国である。実際に、医療・健康分野にかぎってもスタートアップの数は多く、人口500万人弱のニュージーランドで300社を超える(2021年6月時点)。以下に、注目のスタートアップをいくつか紹介する。

■次世代のヘルスケアサービスをアプリで実現


Tend社は、「次世代のために、よりよい医療システムをつくる」をミッションに掲げるヘルスケアスタートアップだ。

同社のアプリ「tend」では、オンライン診療の予約・診察、電子処方箋の発行依頼などができる。また、同社が独自に運営するメディカルセンターでの対面診療の予約も可能だ。2021年6月時点で、総勢20人のGP(General Practitioner。日本のかかりつけ医)、看護師がサービスに登録している。

アプリでオンライン診療かクリニックかを選択し、選択した受診方法に対応できるGP、看護師と受診時間を予約する。

オンライン診療を選択した場合、診療時間に患者はアプリの専用画面にチェックインし、ビデオ通話を介して受診する。予約時間直前には診療時間を知らせるテキストメッセージがアプリに届くので、予約を忘れる心配も少ない。

診察後、必要に応じて医師は電子処方箋を発行し、患者はそれを使って希望する薬局で薬を受け取れる。一度Tendの医師の処方を受けていれば、処方箋の再発行の費用なしで、アプリから同じ薬の「リピート」を依頼することも可能だ。

予約メモやケアプランは常時、アプリ上で確認でき、メッセンジャー機能を使えばケアチームとも連絡をとれる。

なお、Tendのサービスを利用できるのは、いまのところオークランド在住者に限定されている。

■スマホのカメラを活用して肌の健康状態を遠隔診断するアプリ


Firstcheck社が開発したサービスは、皮膚の健康状態をスマートフォンのカメラを使って遠隔診断するアプリである。

アプリの画面から診察を受けたい皮膚がん専門医を選択し、スマートフォンのカメラで自分のほくろやシミを撮影。アプリ上の問診票に必要事項を記入して皮膚の写真とあわせてデータをアップロードすると、指定した専門医が診断し、24〜48時間以内に診断結果を送り返してくる流れだ。

スキンイメージングレンズ「dyplens」を装着して撮影した肌写真

同社が開発した特殊なスキンイメージングレンズ「dyplens」をスマートフォンに装着すると、高倍率の肌写真の撮影が可能になり、より精度の高い診断を受けられる。

■アプリで患者の主観的・客観的データを収集、分析


The Clinician社の「ZEDOC」は、医療機関が患者の健康データを効率よく収集し、活用するためのクラウド型ヘルスアウトカムプラットフォームである。

システムは病院の電子医療記録(EMR)と連動可能。そこから自動・手動で抽出した患者に、ZEDOC患者用アプリへのリンクを含むSMSを配信し、患者がリンク先の質問に答えることで、「患者報告アウトカム尺度」(PROMs:patient reported outcome measures)データを収集できる。

さらに患者が身につけているウェアラブルデバイスから、患者のバイオメトリックデータを収集。上記のPROMsデータとあわせて分析することで、患者のアウトカム向上やケア提供内容の改善、医療費抑制などに役立てられる。

■脳卒中などのリハビリテーションサポートツール


ableX社が提供するのは、脳卒中や脳損傷後の自立性回復をはかるリハビリテーションサポートツールである。

リハビリには、臨床的に証明されたセラピーゲーム(コンピュータゲーム)と、上肢トレーニング用の携帯型コントロールデバイスを使用。患者は、セラピストから導入指導を受けたのち、自宅でableXを使って自立と自己管理のための訓練をする。システムには、臨床チームによる患者個人に適したトレーニングメニューの処方、進捗状況の遠隔モニターなどの機能も備わっている。

セラピーゲーム画面(上)と、上肢トレーニング用の携帯型コントロールデバイス(下)

脳卒中後の身体的および認知的なリハビリを促進するだけでなく、脳外傷、脳性麻痺、多発性硬化症、認知症など、そのほかの障害をもつ患者のサポートにも使用可能である。

■新型コロナウイルス感染症対策でもデジタル医療が活躍


ニュージーランドは、世界でもっとも新型コロナウイルス感染症(COVID-19)対策に成功した国である。早期からの徹底した入国管理や都市ロックダウンなどを実施した効果が大きいが、デジタル医療の分野でもスタートアップの素早い対応がとられてきた。

2020年6月に開発されたDatamine社の「ëlarm」は、心拍数など生体データの変化をAIで解析し、COVID-19感染パターンを発症2〜3日前に警告するアプリだ。2021年4月には、最大500人の国境警備隊を対象に、1カ月間試験的に導入し、その効果を検証した。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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