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Medical DX編集部 2021.6.29

薬局から見た医療提供のあり方〜かかりつけ薬局化支援サービス「kakari」が考える、地域包括ケアを踏まえたサービス

2020年9月1日、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律等の一部を改正する法律」(改正薬機法)の第一段が施行され、薬局には「オンライン服薬指導の導入」が認められたほか、「服薬フォローアップの義務化」が求められることになった。今年8月には「認定薬局制度の導入」の施行を控え、10月にはオンライン資格確認でのマイナンバーカードとレセプト記載の薬剤情報との紐付けが予定されており、薬局のDX化に注目が集まっている。

そんななかで注目されるのが、医師専用コミュニティサイト「MedPeer」を中心に事業を展開するメドピア株式会社が提供する、かかりつけ薬局化支援サービス「kakari」だ。患者向けスマートフォンアプリ「kakari」と薬局向けの「kakari薬局システム」によって構成されるサービスで、薬局が自局のアプリとして患者に薦め、患者に利便性と安心を提供し、患者からの信頼を得てリピート(かかりつけ化)を狙うというサービスだ。

kakariが目指す薬局体験、そして医療のあり方とは何か? メドピア株式会社 プライマリケアプラットフォーム事業部 事業部長 後藤直樹さん(写真)にお話をうかがった。

地域包括ケアを踏まえた「kakari」のサービス


──まず「kakari」のサービスを始めたきっかけからお教えください。

後藤:メドピアは医師でもある代表の石見が2004年に立ち上げた企業で、祖業であるMedPeerというサービスは、オンライン上で医師同士が情報交換をすることができる医師専用コミュニティサイトです。会社のミッションも、”Supporting Doctors, Helping Patients”であり、創業の原点は医師の支援にありました。

ところが昨今の医療は、「地域包括ケア」という言葉に代表されるように、従来以上に医師だけでは完結しない医療になっています。管理栄養士や薬剤師が関わる予防領域、在宅医療・介護をはじめとした慢性期・終末期の医療、いずれも多職種の連携によってなりたっています。医療×ITの領域でサービスを提供している当社も、3~4年前から多職種にむけた医療サービスの立ち上げを検討してきました。そうした取り組みから結実したサービスの1つが、かかりつけ薬局化支援サービス「kakari」です。

ただ、kakariが現在のコンセプトとして提供されるまでには紆余曲折があったんです。

kakariが提案するコンセプト図

──どういった変更があったのでしょう。

後藤:サービスを検討していた2018年の終わりごろは、ちょうど薬機法の改正案がまとまってきたころでした。服薬期間中のフォローアップが義務化されることが見えてくるなかで、最初は服薬記録や服薬期間中のフォローを支援するアプリを作ろうと考えていたんです。しかし、このプランでユーザーインタビューやニーズ調査をしていくなかで、当時、服薬記録には大きなニーズがないことが見えてきたんです。むしろ患者さんへのヒアリングや調査から見えてきたのは、「薬局での待ち時間を解消してほしい」という別の大きなニーズでした。

kakariはこうして、待ち時間のような患者さんの大きな「アンメットニーズ」をまず解消し、そうしたわかりやすい価値の上に、さまざまな次のステップの機能を載せていく。そういったステップで今のようなサービスが形作られていくことになりました。

──kakariはサービスイン以降、導入されている薬局も増加傾向にあり、ニーズが拡大されていると見受けられます。その理由はどんな部分にあると考えられていますか?

後藤:ひとくちにユーザーのニーズといっても、薬局側のニーズと患者さん側のニーズは異なります。薬局側のニーズには、たとえば「効率化」というものがあります。先ほどの薬機法改正でいえば薬局の新たな役割が定義されたわけで、そういう新たに生まれた業務・役割をいかに的確に推進していくかというニーズです。もっと具体的に言えば、患者さんへの服薬期間中のフォローを電話だけで行うのは大変ですので、そういった部分でkakariを使いたいというニーズがあります。

一方で、患者さん側のニーズは、法改正とは関係ありません。患者さんは改正薬機法についてや、服薬期間中のフォローアップが義務化されたことも知らない方のほうが多いと思われます。患者さんがニーズとして持っているのは、たとえば医療機関や薬局での待ち時間の負担を減らしたいという、シンプルなニーズです。

kakariのような薬局と患者さんを繋ぐサービスにおいて重要なのは、こうした薬局と患者さん、双方のニーズを互いに満たすというところにあります。kakariのニーズが拡大しているとしたら、こうした2つのニーズの両立、というところにその要因のひとつがあるように思います。

──新型コロナの流行以降、二次感染のリスクを防止したいというニーズも出てきましたよね。

後藤:ええ。「待合室で待たなくていい」という価値は、待ち時間削減というニーズだけでなく、二次感染防止というニーズも満たすことになりました。ただ強調したいのは、患者さんの待ち時間の問題というのは、コロナ禍によって一層顕在化することになりましたが、これは何十年もニーズとしてありながら解消されてこなかった問題だったということです。患者さんがkakariを利用して感じられる価値は複合的なものですが、その最も大きなものは「待ち時間の解消」にあると考えています。

患者から「選ばれる」薬局になるためのサービス


──「薬局から」という意味では、kakariは「かかりつけ薬局化支援サービス」という独自の枕詞がついていますが、これはどういう意図なのでしょう。

後藤:そもそも現在の薬局のあり方の中心は、門前薬局というかたちです。医療機関の近くにある薬局ですね。たとえば、ひとつの家族を単位で考えてみて、ご自分は皮膚科へ、お子さんは小児科へ、ご両親が整形外科へ通っているケースがあったとします。そうしたときこれまでの薬局体験の多くはどうなっているかというと、通う病院ごとに別々の門前薬局へ行っている。これがこれまでの薬局体験のスタンダードだったわけです。

しかし、行政が大きく進めようとしているのは、「門前薬局」から「かかりつけ薬局」への転換です。厚生労働省が2015年の10月に「患者のための薬局ビジョン」という指針で、「『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ」という標語のもと、患者さんが普段からかかる薬局をひとつに絞りましょう、という道筋を示したんです。

患者さんが複数の医療機関や診療科にかかっていた場合でも、薬の情報がかかりつけ薬局で一元化されれば、重複投薬の防止はもちろん、併用禁忌の処方も未然に防げます。何より、ひとつの薬局、ひとりの薬剤師が患者さんの服薬歴の把握を通して、健康上のアドバイザーとなることができます。

──患者にとってはメリットが大きいですね。

後藤:かかりつけ薬局は、患者さんが選ぶものです。逆に言えば薬局は、患者さんに「選ばれる」かかりつけ薬局になっていかなくてはなりません。kakariが、「かかりつけ薬局化支援」というコンセプトで目指すのは、「門前薬局」か「かかりつけ薬局」への「変化」を支援するサービスでありたいということです。ですから、業務の「効率化」以上に、選ばれるための「差別化」を図るためのサービスであることを目指しています。

「kakari」が実現する薬局のイメージ

安心して頼れる「かかりつけ薬局」の体験を「あたり前」に

kakari、2021年5月現在のサービス概要

──具体的にはどのような部分で「選ばれる」ことを支援するのでしょうか。

後藤:患者さんに処方せんに則ってお薬を調剤し、お渡しする対物業務は、薬局によって別のお薬が出るということはないように、差別化が難しい領域です。だとすると、薬局として差別化できるポイントは対人業務です。患者さんがコミュニケーションの部分で「他の薬局とは違うな」と感じていただけるような体験を作っていくことを、いかに支援していけるかをkakariでは考えています。

まず先ほど挙げた、処方せん事前送信サービスによる「待ち時間の減少」そして「二次感染リスクの減少」ですね。ふたつめは「安心の提供」です。患者さんが薬剤師に、これまでは電話でしか行えなかったお薬に関する相談を、チャット機能でいつでも気軽に相談できる機能をつけています。そして3つめが「手間の削減」です。お薬手帳の機能をアプリに取り込むことで、家族分も含めてスマホの中にお薬手帳をしまって持ち歩くことができます。

とはいえ、こうした機能自体は類似のサービスでも提供されているものです。「選ばれる」を支援するという視点で、kakariがユニークな理由は別のところにあります。kakariには薬局検索機能がなく、店頭で5桁の薬局専用コードを入力すれば、その薬局のロゴと薬局情報が画面いっぱいに表示される、「自薬局専用アプリ」として勧められる設計になっている点です。kakariはこのように、薬局に来られている既存の患者さんにとって、自局をあらためて「かかりつけ薬局」として選んでもらう、そうした設計に振り切っていることが最大の特徴だと考えています。

店頭で配布するチラシの一例

──オンラインだけではなく、リアルのコミュニケーションの部分に働きかけるサービスなんですね。

後藤:わたしたちは、医療はオンラインだけでは完結するものではないと考えています。kakariは、リアルでのコミュニケーションを補完するためのサービスなんです。

──今年の10月からオンライン資格確認も本格始動しますが、そういった対応もされていく予定ですか?

後藤:はい。国のデータヘルス計画として、オンライン資格確認基盤に紐付くかたちで、電子処方せん基盤が2022年の夏を目処に構築されることが示されています。さらに、電子処方せん基盤は電子お薬手帳とAPI連携がされ、患者さんが自身の服用している薬剤情報を取り込むことができるようになり、電子お薬手帳がPHR基盤として活用されるようになっていく未来も示されています。kakariでもこうした動きに、可能な限り迅速に対応していきたいと思っています。

このようにデータヘルスや薬局におけるDXは間違いなく進んでいきますが、大切なのは「かかりつけ薬局」という薬局体験を「あたり前」のものにしていくということだと思います。患者さんにとって、薬局での待ち時間がなくなり、簡単に薬剤師の先生に相談ができて、電子お薬手帳がもっと身近に便利なって──ということが当たり前になっていく、その一助にkakariはなりたいと思っています。

現在全国には約6万の薬局があり、院外で処方される処方せんは約8億枚あります。しかし、この院外処方せんが増加を続けるのは今後5〜10年が山で、やがて需要は減少していくことが見込まれています。このように薬局はいま、大きな転換期にあります。kakariは、患者さんに「選ばれる薬局」になるために、競争力の強化を目指したDXという視点で利用されるサービスとして、転換期にある薬局・薬剤師の先生方の一助になれればと思っています。


メドピア株式会社「kakari」
https://kakari.medpeer.jp/
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WRITTEN by

Medical DX編集部

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