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加藤 泰朗 2021.6.14
遠隔医療のDX

初診からのオンライン診療・服薬指導、恒久化へ前進

■2022年度からの恒久化をめざすと発表


オンライン診療恒久化への動きが、また一歩前進した。河野太郎規制改革大臣は2021年6月8日の記者会見で、規制改革の実施計画にオンライン診療の恒久化を盛り込む方針であることを表明した。18日には閣議決定される見通しで、2022年度からの実施をめざすことになる。

オンライン診療については、新型コロナウイルス感染症の拡大を受け、2020年4月より特例措置(410事務連絡)として、初診からの診療が解禁されている。今回の方針表明は、特例措置の内容を恒久化し、コロナ収束後も初診からのオンライン診療を認めようとするものである。あわせて、これまで特例的措置として認められてきたインターネットなどの情報通信機器を用いたオンライン服薬指導についても、恒久化をめざすことが発表された。

発表内容はこうである。オンライン診療については、原則、かかりつけ医が実施(初診から可能)する。かかりつけ医がいない場合は、健康診断の結果やほかの医療機関での診察記録などがあれば実施を認める。また、それらの医療情報がない場合でも、事前に医師とオンラインでやりとりをし、両者の合意が得られれば、初診からのオンライン診療を可能にするというもの。

オンライン服薬指導については、従来のオンライン診療または訪問診療を受けた場合だけでなく、対面診療を受診した場合にも実施できるようにする。さらに今回の発表にはなかったが、一部の報道によると、介護施設などに居住する患者へのオンライン服薬指導についても検討されているという。

■特例措置があっても進まない状況を変えられるかがカギ


初診からのオンライン診療が特例として認められて1年以上経った。しかし、残念ながら普及しているとはいえない状況である。

厚生労働省によると、2021年4月末時点で、電話や情報通信機器を用いた診療を実施できるとして登録した医療機関数は16,843施設。全医療機関(110,898施設)の約15%にとどまっている。

登録数の推移を見ても、2020年4月が10,812施設、5月は15,226施設と数を伸ばしているものの、6月に1万6000施設台に到達して以降(16,095施設)、ほぼ横ばいである。オンライン診療実施件数に関しても、緊急事態宣言時には増加しているが(2020年4月9,746件、2021年1月8,569件、2月9,956件)、それ以外の月は8,000件を下回っている。
オンライン診療を実施できるとして登録した医療機関数の推移(厚生労働省「令和3年1月〜3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」)

コロナ禍が続き、人と人の接触機会の減少が課題になっているなか、非接触で、インターネットやアプリを使って手軽に行えるオンライン診療は、若者を中心にニーズが高い。一方で、先日のワクチン接種予約の件でも明らかになったように、デジタルデバイスの操作に不慣れな人が多い高齢者層には、インターネットやアプリを使ったオンライン診療のハードルは低くない。先ほど紹介した厚生労働省の資料でも、オンライン診療の実施数の6〜7割が電話によるものという結果だった。

患者側の問題だけではない。オンライン診療のためのインフラ整備・セキュリティ管理、日常の対面診療業務とオンライン診療との両立、診療後の患者フォローなど、病院側の負担は少なくない。一方で、オンライン診療によって得られる診療報酬は、対面診療よりも少ないため、医療機関が容易に踏み込めない状況にある。

医療の質を理由に、日本医師会がオンライン診療の解禁に慎重な姿勢をとっている影響も少なくないだろう。昨年9月の発表ではあるが、日本医師会はオンライン診療への考え方として、「解決困難な要因によって、医療機関へのアクセスが制限されている場合に、適切にオンライン診療で補完する」と発表している。

オンライン服薬指導についても、同じく普及しているとはいえない状況である。背景には、医療機関との連携が進まないこと、薬局自体の体制が整わないことなどが指摘されている。

医療機関の偏在による受診機会の地域格差や社会保障費の抑制など、日本社会が抱えるさまざまな医療的な課題にとって、オンライン診療・服薬指導の恒久化は大きな前進であることに間違いはない。今後は、制度の法整備と同時に、上記で挙げたようなボトルネックをいかに解消できるかが、普及のカギとなる。


「令和3年1月〜3月の電話診療・オンライン診療の実績の検証の結果」
https://www.mhlw.go.jp/content/10803000/000786235.pdf
「オンライン診療についての日本医師会の考え方」
https://www.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20200924_1.pdf
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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