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Medical DX編集部 2021.6.24
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

プログラム医療機器、未来への流れを読む【加藤浩晃先生に聞くvo.8】

3月24日、中央社会保険医療協議会(中医協)の第477回総会が開かれた。その議上で治療用アプリを含む、プログラム医療機器にかかわる診療報酬上の対応の検討のあり方について議論が行われた

昨年11月にCureAppのニコチン依存症を対象とした治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー(CureApp SC)」が承認され、さまざまな疾患の対策として開発が進んでいるプログラム医療機器の世界。その未来のために議論されるべきこととは何か、加藤浩晃先生にうかがった。

発展する治療用アプリの先に


──中医協の議論が行われた背景についてうかがえますか?

加藤:はい。まずは、この議論で出された資料を見ていただきたいのですが、

1.背景
○ 疾病の診断・治療を目的とした様々な新しいプログラムの開発により、アプリや人工知能(AI)を使用したプログラム医療機器として薬事承認され、保険収載される事例が出てきている。
・デジタルな部分について、技術料で評価していくのか、あるいは医療材料で評価していくのか、そういった考え方はやはりきちんと今後整理していかないといけないのではないか。
・治療に資するプログラムの診療報酬の当てはめ方について、現行のような準用する形式でいいのか、あるいはまた新たな体系をつくる必要があるのか、諸外国等の事例も踏まえて議論を深めておく必要があるのではないか。(令和2年11月11日中医協総会における指摘)

中医協第477回総会 資料より引用

加藤:この日時に注目していただきたいんですが、これはCureApp SCが中医協で承認された日なんですね。その際に、治療に資するプログラムの診療報酬の議論が始まったわけです。

──そして12月1日から保険収載された、と。

加藤:はい。現時点では「在宅振戦等刺激装置治療指導管理料・導入期加算」として140点、「疼痛等管理用送信器加算」600点を4回分ということで2400点、合計で2540点の算定がされています。CureAppのニコチン依存症を対象とした治療用アプリ「CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー(CureApp SC)」はニコチン依存症治療アプリとCOチェッカーのデバイスの2つの要素からなっているため、デバイスとアプリの料金を合わせて算定されています。

──今後CureAppとは違ったかたちの治療用アプリが出てくると、どのような算定になるのでしょうか?

加藤:現在、2型糖尿病や、高血圧など、さまざまな疾患に対する治療用アプリの研究が進んでいます。これらが、有効性および安全性の担保のうえで、薬事承認がされていく可能性は極めて高い。その際に、どのように保険適用がされていくのかと思っています。CureAppの場合の保険点数はデバイスとアプリの料金が合わさっているものなので、今回の保険点数の中でどれくらいがアプリ部分なのかわかりません。

──疾病も違えば、治療法も、使用する機器も違いますし……。

加藤:そういうことですね。治療用アプリというこれからの新しい治療法に対して、現用の保険点数の決め方でいいのかということが今回議論になっているのです。評価を明確化して、2022年度の報酬改定で整備されていくことが求められています。

これまでの医療報酬とは違った評価を



──それ以前は、治療用アプリの報酬に関する議論はなかったんですか?

加藤:ここ数年、ところどころで議論はされてきていました。今回の議論の一つのきっかけとなったのが、私も参加させて頂いたのですが、2019年の8月から、公益財団法人医療機器センターが中心となって開催された、「デジタルヘルスの進歩を見据えた医療技術の保険償還のあり方に関する研究会」における提言書です。

そもそもこれまでの保険診療は基本的には、対面診療での「行為」に対して保険点数が設定されています。わかりやすく言うと「行為」をしたら保険点数がとれるということです。一方、治療用アプリのようなデジタルヘルスというのは、デジタル技術の特性を踏まえることでアウトカム評価、つまり成果による評価もできるのではないか、と。

──これまでの医療と一律にとらえず、それぞれに合った評価をしていくべきだということですね。

加藤:ええ。それらを踏まえて、5つのエグゼクティブサマリーを提言しています。

①包括評価
デジタルヘルスに関する医療技術(うち、医療機器に該当するもの)は、技術料のなかで「包括評価」を行う。改善・改良が頻繁に行われる医療機器でも、製造販売承認が得られた後、早期に保険導入できる環境が整えられる。
②得られる効果(アウトカム)による評価
デジタルヘルスに関する医療技術の保険償還は、ストラクチャー評価(構造)およびプロセス評価(過程)を主とした出来高による評価体系を、当該技術によってもたらされる効果(アウトカム)も評価する仕組みに見直す。
③データの収集と医療技術の再評価
アウトカムに関するデータ収集は、PHR(personal health record)やePRO(患者報告アウトカム電子システム)などから収集されたデータを、医療技術としての再評価(加算、減算もあり得る)する仕組みを導入する。
④デジタルヘルスに関する医療技術を評価する新しい組織の設置
デジタルヘルスに関する医療技術は、これまでの医療技術で評価してきたものと異なる分野の専門性(ヘルスデータサイエンス、アルゴリズム設計・解析、ビッグデータ解析、行動経済学など)を求められているため、その分野の専門家も、医療従事者とともに評価する視点が必要だ。よって中医協総会や診療報酬基本問題小委員会での通常の議論とは別に、専門性やその業界の意見を反映した専門的な検討が行われる新規の専門の組織を中医協に設置することが必要である。
⑤デジタルヘルスに関する医療技術に即した報酬項目の新設
④と並行し、その報酬上の評価の位置づけも、点数表上新たな項目を設けることが必要だ。項目の新設については、手術の手技料のように、既存の類する技術料の枝番として評価を追加する方法や、特掲診療料の「部」(医学管理等、在宅医療、処置、手術などと同じ扱い)そのものを追加し、別の評価項目とする方法などが考えうる。別項目の評価として明示することで、医療保険で評価されているデジタルヘルスに関する医療技術とそうでないものを明確に区別できる。

デジタルヘルスの進歩を見据えた医療技術の保険償還のあり方に関する研究会(略称:AI・デジタルヘルス研究会)からの提言」より要約

加藤:この提言と昨年11月の中医協の指摘が、昨年12月の規制改革推進会議でとりあげられて、この3月の中医協でプログラム医療機器の評価の明確化の話につながっている、という流れなんです。

「プログラム医療機器」の明確化


──そうなると、今後はどういった議論がなされるのでしょうか。

加藤:これは大きく2つで、ひとつはプログラム医療機器で患者さんに対して提供される医療の質において評価する、アウトカム評価ができるのではないかということです。もうひとつは、先進医療として保険外併用療養費制度の活用ができることを周知させて、選定療養の枠組みの適用についても検討しませんか、というものですね。

また、これとは別に承認申請をもっと明確化しましょうという話もあるんです。それが、今年の4月からPMDA(独立行政法人 医薬品医療機器総合機構)に設置された、最先端のプログラム医療機器(SaMD:Software as a Medical Device)に関する一元的相談窓口です。

これまでPMDA内で集約されていなかったプログラム医療機器への対応が一元化されたものです。

──そんな窓口ができたんですか。

加藤:昨年11月に厚生労働省から「プログラム等の最先端医療機器の審査抜本改革(DASH for SaMD)」が公表されたことで、設置されたものです。さらに、3月31日からプログラム医療機器のガイドラインも発表されています。

──プログラム医療機器におけるシステムが、少しずつ整理されてきているということですね。

加藤:そうですね。DASH for SaMDによって、指針が明確化して、今後の開発への見通しが今までよりはわかりやすくなってきました。ただ、まだ他領域の企業が参入しようと思えるほど制度がわかりやすく伝えられていないように思っています。並行して、診療報酬の議論もなされている。これがプログラム医療機器における現況です。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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