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Medical DX編集部 2021.5.6
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

デジタル改革関連法案とデータヘルス改革【加藤浩晃先生に聞くvol.7】

3月26日に、厚生労働省の第142回社会保障審議会医療保険部会が開かれた。そのなかで、3月末から始めようとしていたオンライン資格確認の本格運用を延期し、遅くとも薬剤情報の閲覧開始を予定している10月までに本格運用を開始する、という報告がされた。

このことによって、データヘルスの改革プラン、医療のデジタルトランスフォーメーション(DX)化にどういった影響が出るのか、加藤浩晃先生に語っていただいた。

【加藤浩晃先生に聞く】これまでの回はこちら

オンライン資格確認、本格運用遅延の理由


──オンライン資格確認の本格運用が遅れるというニュースが入ってきましたが、さまざまな理由が重なったようですね。

加藤:社会保障審議会医療保険部会で報告されたところによると、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響などによってシステム改修が遅れたことが挙げられています。また、これも新型コロナによるテレワークの拡大などの影響もあると言われていますが、全世界的に半導体が需要過多になって、資格確認に使用するためのPCの調達がなかなか難しくなっているようです。また、カードリーダーの生産の遅れも報告されています。

──新型コロナが導入の準備に影響した、と。

加藤:あとは、3月4日から54の医療機関や薬局において、オンライン資格確認のプレ運用が行われていますが、そこでデータの不備からくる資格確認エラーが起きていたりすることも指摘されていました。

──それらの問題を解消するための延期、ということですか。

厚生労働省 第142回社会保障審議会医療保険部会「資料2 オンライン資格確認等システムについて」より引用

加藤:この表を見ていただくとわかると思いますが、システム改修の面では、4月から6月にかけて個人番号の誤⼊⼒をシステム的にチェックする機能を導入することになっています。またPCやカードリーダーの確保や、資格情報の確認・修正も行うということです。これによってシステムの安定性、データの正確性を確保していくということです。

──厚生労働省によれば、3月21日の時点で、カードリーダーの申込数は約10.3万機関(44.9%=全体約22.8万機関)。そのうち、病院は約5,000(全体約8,000病院の60.4%)、薬局は約4.0万(全体約6万薬局の66.5%)とされています。

加藤:そうですね。この期間中に、運用する医療機関を順次拡大していくという計画になっています。

データヘルス改革への流れは変わらない


──このあたりまでが、この報告のあらましなのですが、注目するポイントというのは、どういった部分でしょうか。

加藤:あくまで、3月末を目処にしていた本格運用、つまり医療保険の確認と、マイナンバーカードと特定健康診査(特定健診)のデータとの紐づけに関する本格運用が遅れただけであって、当初から10月に予定していた、薬剤情報の閲覧開始の日程は変わらないというところは注目しておくべきでしょう。

以前この連載で、10月から薬剤情報の閲覧が開始されることで、医療機関と薬局の連携が強化され、広域にシステムが統合されていくのが、オンライン資格確認から始まるデータヘルス改革における、理想のひとつだと申し上げました。本格運用がずれ込んだだけで、薬剤情報の閲覧開始時期設定を変えなかった。ということは、データヘルス改革への流れは変わらない、と考えます。その意思の表れは、厚生労働省は3月末までに申し込みを行った機関には、オンライン資格確認の導入費の全額補助を行っていたんですが、その申し込み期限の延長しなかったことからも垣間見えます。

──メリットの大きさを考えると、生活者の目線からいっても、そうあってほしいと思います。

加藤:実際にプレ運用をした医療機関などからは、実際にそういった報告があるようです。患者さんから保険証をもらうけど、その確認ができるのは、レセプトを出した後なんですね。転職したり、生活を独立したりというときに、実は保険が切れていた、ということは意外と多いんですよ。やはりその都度都度で保険の資格が確認できるということは、医療のDX化という面でのメリットは大きいんです。

デジタル庁の発足で変わるもの


加藤:あと、もうひとつ注目すべきことは、この4月6日に衆議院を可決して、現在参議院で審議が始まった「デジタル改革関連法案」の行方です。

──「デジタル庁設置法案」「デジタル社会形成基本法案」「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律案」の3本が柱となっているものですね。

加藤:おそらく、現在の流れでいくと、5月くらいには参議院でも法案は可決するでしょう。「デジタル庁設置法案」が成立すれば、デジタル庁が9月1日に発足することになります。

──デジタル庁は「庁」でありながら、各「省」と同じように、内閣直下に置かれるもの、とされています。

加藤法案によれば、「デジタル社会の形成のための施策に関する基本的な方針に関する企画立案・総合調整」とありますが、いわば各省庁におけるデジタル政策の調整を横断的に行う、いわば横串のような存在になるわけです。

──公的な情報データベースなど、ひとつの省庁において縦割りで決めきれない事象も、デジタル庁が調整して整備を行うことができる、と。たとえば、医療分野においてはどういった影響が出てくるのでしょうか。

加藤:自民党のデータ改革委員会などでは、電子カルテシステムの標準化について、議論が深まっています。広域にシステムが統合されていくことによって、データヘルスの基盤がより固まっていきます。もちろん、オンライン資格確認はその基礎の部分にあたるわけですが、デジタル庁の発足によって、データヘルスの基盤づくりは大きく進んでいくと考えられます。

また、9月にデジタル庁ができることで、社会全体においてデジタル改革、DX化に対する空気感も変わってくるでしょう。そういった機運のなかで、オンライン資格確認の本格導入が始まるということになれば、患者さんからしても、マイナンバーカードを保険証と紐付けるとか、健康情報を自分のスマホなどで見るとか、といったようなことが受け入れられやすい空気になっているのではないか、と思います。

【加藤浩晃先生に聞く】第1回〜第6回の記事はこちらから


加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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