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Medical DX編集部 2020.7.1

世界の病院は、AI・人工知能をどのように導入しているのか?

AI(人工知能)が医療に導入されることによって、いち早い病気の発見、正確な治療を行うことが期待されている。研究は進んでいるが、実際に病院へはどのように導入されているのだろうか。アメリカ、中国を中心に海外の先行事例について紹介する。

■アメリカ〜遠隔医療からAIの取り組みへ


1993年にアメリカ遠隔医療学会が創設されたアメリカでは、早い段階から遠隔医療の整備が進められてきた。

遠隔医療の普及が急速化したのは、2010年にオバマ大統領主導による健康保険制度改革「オバマケア」が施行されたことに端を発し、16年に高齢者医療保険制度(Medicare)で遠隔診療が保険償還できるようになったことが背景にある。以降、特定の箇所でオンライン診療が認められてきたが、この3月にはトランプ大統領がオンライン診療の制限解除令にサインしている。

IoTを積極的に活用している例としては、ミズーリ、アーカンソー、カンザス、オクラホマの4州で病院ネットワークを経営しているマーシー・ヘルス・システム(Mercy health system)があげられる。これまでの遠隔操作システムを統合させて運営する「バーチャル・ケア・センター」を立ち上げ、ICU収容患者からIoTデバイスを持った在宅患者まで、統括してモニタリングできる施設を開設している。

マーシー・ヘルス・システムの紹介動画

また、AIを使った取り組みを積極的に取り入れている病院も多数ある。
代表例としては、ニューヨーク・メモリアル・スローン・ケタリングがんセンター。IBM社が開発したワトソン(Watson)を取り入れ、これまでの膨大な症例を学習させることによって、がんの早期発見、またその正確な治療法を導き出す方法をとっている。

また、カリフォルニア州の小児病院チルドレンズ・ホスピタル・ロサンゼルスでは、IoT医療機器を使ってモニタリングしたデータをもとに、AIが病状悪化の可能性の高い子どもをいち早く察知し、医者に伝達できるシステムを導入している。

■ドイツ〜国民病・糖尿病の合併症もAIで早期発見


ヨーロッパではドイツがAI研究に力を入れており、アメリカのシリコンバレーにならった「サイバーバレー」計画を発表、ヨーロッパ最大の研究クラスタを目指している。

そんななか、デュースブルク・エッセン大学の医学部とエッセン医科大学は「医療人工知能研究所(Institut für Künstliche Intelligenz in der Medizin)」を設立し、医療用のAI研究を進め、将来的にはエッセン大学病院をスマートホスピタル化する予想図を立てている。

現在においても、ドイツの病院ではAIが使用されている。ドイツ初の糖尿病専門病院・メルゲントハイム糖尿病センターだ。ドイツは750万人が糖尿病を患っているとされ(2017年、IDF調べ)、糖尿病網膜症(DR)による失明などの合併症が深刻な問題となりつつある。

そこで、メルゲントハイム糖尿病センターではアメリカEyenuk社のAIアイ・スクリーニング・システム「EyeArt(アイアート)」を導入することによって、約10%の糖尿病網膜症の発見に成功している。

Eyenuk社による紹介動画

■中国〜病院からオンライン、そして無人診療所?


そして、アメリカと並ぶAI先進国・中国。スマートホスピタル化は進んでいたものの、この新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響で、一気にオンライン診療が加速した。

2019年には国家衛生健康委員会指導のもとで「5G技術に基づく病院ネットワーク構築標準」が制定されるなど、そもそもの地ならしができていたとはいえ、2月に武漢市や上海市といった新型コロナの被害が大きかった都市からオンライン診療に関する規制が緩和されると、3月には国としてオンライン診療の保険適用が決定された。なんとも脅威のスピードだ。

オンライン診療においては、EC大手アリババ傘下の「阿里健康(アリヘルス)」、同じくEC京東集団(JDドットコム)の「京東健康(JDヘルス)」など多数のプラットフォームが公開されているが、このコロナ禍において最も多く活用されたのが保険大手・平安保険グループの「平安好医生(Ping An Good Doctor)」だという。

平安好医生はオンライン以外にも、画期的な試みを行っている。それが無人診療所「ワンミニッツ・クリニック」だ。

証明写真撮影のようなボックスに入り、AIがカメラ・音声により医療診断をする。その判断を人間の医師がリモートで確認、処方箋まで出してもらえるというもの。隣には一般的な100種類ほどの薬も置かれており、昨年より一部地域で導入されている。

ここまでの国よりも若干医療現場のAI化が遅れていると思われる日本。

この6月に、内閣府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)から、2022年までに社会実装を目指した「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」という計画が打ち出された。医療現場で簡単に活用できるさまざまな支援AI(人工知能)を提供し、医療の質を確保し、関係者の負担軽減を目指すというものだ。

早期の実現を望みたい。


Mercy Virtual Care Center - Mercy Virtual
https://www.mercyvirtual.net/worlds-first-virtual-care-center/
Memorial Sloan Kettering Cancer Center
https://www.mskcc.org/
Homepage - AI Futurelab
https://ai.uk-essen.de/
Children's Hospital Los Angeles – Pediatric Hospital Treating Children in Southern California
https://www.chla.org/
内閣府 日本医師会 医薬基盤・健康・栄養研究所共同記者会見 | 日医on-line
http://www.med.or.jp/nichiionline/article/009398.html

写真:Shutterstock
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Medical DX編集部

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