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Medical DX編集部 2020.7.1

AIは新型コロナウイルス感染症診断の救世主となるか?

■オープンソースによる深層学習モデル


新型コロナの報道で一般的に知られることとなったPCR法の検査。PCRとはPolymerase Chain Reaction(ポリメラーゼ連鎖反応)の略称で、DNAやRNAというウイルスの遺伝子=ポリメラーゼを増幅して検出する方法だ。

新型コロナに感染したかどうかを判断するために利用されているが、検査の感度が50〜70%といわれることや、検査時の感染リスク、また、そもそもリソースの少なさなど、問題点も残されている。

そんな診断への救世主になるのではないか、と期待されているのがAIによる画像診断である。

3月末、カナダのダーウィンAI社、同じくカナダのウォータールー大学を中心とした研究チームが、胸部のレントゲンからCOVID-19を識別する深層学習モデル「COVIDネット(COVID-Net)」を開発し、オープンソースの畳み込みニューラルネットワークを発表した。

AIで画像診断を行うためのモデルだが、まだ開発途上であることから、オープンソースとして広く世界の研究者に協力を訴えかけ、改善を進めていく予定だという。

■アリババグループとエムスリーの新型コロナ検出プログラム


新型コロナで多くの犠牲者を出した中国では、深刻な医師不足と、病院内の感染リスクに見舞われた。

そこで注目を集めたのが、オンライン診療やオンライン調剤。平安医好生(Ping An Good Doctor)、京東健康(JD Health)などのサービスが一気に浸透したと言われている。

Alibaba.comなどの企業間電子商取引(B2B)のオンライン・マーケットからスタートし、世界最大の流通総額を持つIT界の巨人・アリババグループも、早くから「グローバル・メディエクスチェンジ・フォー・ファイティング COVID-19(Global MediXchange forFighting COVID-19)」という新型コロナ対策に向けた取り組みを打ち出してきた。

グループ傘下のアリババヘルス社によるオンライン診療のみならず、同じくグループ傘下のアリババクラウド社が「DingTalk 国際医療専門家コミュニケーション・プラットフォーム(DingTalk’s International Medical Expert Communication Platform)」を開設、世界各国の医療機関から新型コロナに関する情報や知識を集めて共有する取り組みを始めている。

そのアリババクラウドの開発機能アリババDamoが開発したAIアルゴリズムを利用し、厚生労働省に医用画像解析ソフトウェアの承認申請をしたのがエムスリーだ。その「COVID-19肺炎検出プログラム Ali-M3(仮称)」は、胸部のCT画像からCOVID-19による異常領域が存在する可能性を抽出し、医師による診断の支援を行うものだ。


■進む新型コロナ下の画像診断


画像診断の研究開発は、コロナ対策としても急速に進んでいる。

株式会社NTTデータと、インドのAIスタートアップのDeepTek社も、X線やCT画像を取り扱う放射線科医が世界的に不足していることを踏まえ、AI画像診断アルゴリズムを開発。インドの病院Ruby Hall Clinicにおいて活用を始め、インドをはじめとするAPAC各国で提供を開始し、日本への展開も検討するとしている。

医療画像診断のワークフロー「REiLI(レイリ)」を提供している富士フイルム株式会社も、新型コロナにおけるAI画像診断の診断支援技術の開発を開始した。神奈川県立循環器呼吸器病センターを皮切りに、患者を受け入れている国内の医療機関との共同研究を進めていくという。

■画像診断だけではなく、治療薬にも?


ここまでは主に罹患したかどうかの判断をする技術について取り上げたが、ここでひとつ治療薬についてのニュースを。

創薬スタートアップのBenevolentAI社が開発したAIが、イーライリリー社とインサイト社が開発した関節リウマチの治療薬オルミエント(バリシチニブ)が新型コロナに良い効果をもたらす可能性があるという仮説を出し、「The Lancet」誌にも発表された。それにより、米国立アレルギー感染症研究所(NIAID)が試験を開始している。

この仮説が正しければ、新型コロナ対策だけではなく、AIによる創薬にまたひとつ光明が見いだせるのではないかと期待されている。

現在もAIは新型コロナと戦い続けている。

International Medical Expert Communication Platform - Alibaba Cloud
https://www.alibabacloud.com/ja/solutions/dingtalk/international-medical-expert-communication-platform
A「医用画像解析ソフトウェア:COVID-19肺炎検出プログラム Ali-M3(仮称)」 | エムスリー株式会社
https://corporate.m3.com/press_release/2020/20200603_001610.html
AIを搭載した画像診断支援ソリューションがCOVID-19の診断支援に貢献 | NTTデータ
https://www.nttdata.com/jp/ja/news/release/2020/052501/
AI技術を用いた新型コロナウイルス肺炎の診断支援技術開発を開始 | 富士フイルム [日本]
https://www.fujifilm.com/jp/ja/news/list/4968
Baricitinib as potential treatment for 2019-nCoV acute respiratory disease - The Lancet
https://www.thelancet.com/journals/lancet/article/PIIS0140-6736(20)30304-4/fulltext
GitHub - lindawangg/COVID-Net: COVID-Net Open Source Initiative
https://github.com/lindawangg/COVID-Net/

写真:Shutterstock
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Medical DX編集部

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