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Medical DX編集部 2021.1.30

診療所の経営危機で医療機関にM&Aの波?〜医療承継問題の現在

新型コロナでさらなる打撃〜医療機関経営危機問題


新型コロナウイルス感染症の流行が、医療機関の経営に大きな影響を与えている。

日本医師会「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響─2020年7〜8月分─」より引用

日本医師会による「新型コロナウイルス感染症の診療所経営への影響─2020年7〜8月分─」によれば、1施設あたりにおける前年同月比の医業収入(公的保険外収入を含む)は、1回目の緊急事態宣言下の5月に-16.5%を記録し、解除後はゆるやかに改善したものの、7月に-6.8%、8月に-4.9%と、いまだ厳しい状況が続いている。

それ以前から、少子高齢化と社会保障財源の削減によって、医療費抑制の動きが強まり、苦しい経営を迫られる医療機関が多く見られるようになっていた。

こうした世情にあって、深刻になっているのが、医療機関の後継者不在問題だ。

厚生労働省が平成30(2018)年に行った「医師・歯科医師・薬剤師統計の概況」の統計によれば、診療所の医師の平均年齢は60.0歳となり、60代以上の医師の割合が49.8%とほぼ半数を占めていることがわかる。

勤務医と違って引退時期を自分で決定できるため、生涯現役、という開業医も少なくないという。しかし、とくに地方のクリニックは、その土地の多くの人たちが「町のかかりつけ医」として信頼している場合も多く、継承問題は地域にとっての大きな問題にもなってくる。
日本医師会総合政策研究機構(日医総研)ワーキングペーパー「医業承継の現状と課題」(2019年発表)より引用

日本医師会総合政策研究機構(日医総研)ワーキングペーパー「医業承継の現状と課題」(2019年発表)によれば、後継者不在率(正確には後継者未定の割合)は無床診療所において89.3%、有床診療所において79.3%、診療所全体では86.1&と極めて高い割合であることがわかる。さらに、地方別にすると、東北・北海道における不在率は92.0%を示している。

ここに新型コロナ禍における診療所の経営難が加わるため、さらに後継者を迎えることが困難となってくる。

問題を解決する一助に〜「医療承継」支援サービス


そんな状況のなかで、現在脚光を浴びつつあるのが「医療承継」支援サービスの存在である。

ここ数年、経営難にある医療機関が企業経営の手法を取り入れて業績を改善したり、他の医療法人が買収して再生させる、M&A(Mergers and Acquisitions)のような手法が注目されてきた。

それに加え、先に挙げたような後継者問題・地域医療の継続問題を解決するための医業承継のケースも増えているという。

新規にクリニックを開業する平均年齢は、日本医師会「開業動機と開業医(開設者)の実情に関するアンケート調査」によると、41.3歳とされている。こうした世代の勤務医が新規開業をするうえで、初期投資が抑えられるうえ、患者からの需要がある医療承継が受けられるとするならば、医師側・生活者側の双方にとってメリットは大きいだろう。

こうした支援サービスは、ここ数年増加している。

近年、とくに注目されたのが、医療従事者専門サイト「M3.com」を持つエムスリー。独自の医院継承支援サービスを展開しているが、昨年、医療機関の後継者不足問題解決に向けたトライアル事業において、日本医師会と包括連携協定を締結したことで話題となった。エムスリーの持つ28万人以上の医師会員データベースを活用しながら、都道府県医師会、郡市医師会などとも連携して支援に取り組んでいる。

ほかにも代表的な例として、リクルートが提供する「ヒキツグ」は日経メディカル経営サポートと連携、独自の経営分析データでサポートするという。また、医師紹介事業や産業保健などに関するサービスで知られるエムステージも、昨年10月から「医業承継サポート」をスタートしている。

以上はほんの一例である。コロナ禍における経営危機の一方で、オンライン診療の恒久化の議論などで「かかりつけ医」の存在が注目されつつある昨今、この医療継承サービスがより注目されていくだろう。
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Medical DX編集部

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