創薬
Medical DX編集部 2020.7.1

臨床試験もオンラインで!バーチャル臨床試験の時代がやってくる

■患者の声を最大限に生かした臨床試験ができる!


新しい治療機器や、医薬品が開発される際に、それを健康な成人の志願者や少数の患者に使用して、その効果や安全性、治療法を確認するために行う臨床試験。医療が進歩していくためには重要なプロセスだが、医療機関に出向く時間や手間などの負担があり、なかなか参加者が集まらないのが悩みの種であった。

そんななかで、海外、特に欧米では「バーチャル臨床試験」の活用が広がっている。バーチャルの名のとおり、患者が医療機関に行くことなく、臨床試験に参加できるという試みだ。オンライン診療、スマートフォンやウェアラブルデバイスなどIoTデバイスを組み合わせて活用しながら、遠隔で臨床試験を行うものである。

とりわけ、ウェアラブルデバイスなどで終日データを管理できる利点から、糖尿病や慢性的な疾患、呼吸器系の疾患、皮膚の疾患などの臨床試験に向いていると考えられている。

ともかく、治療機器、医薬品の開発において、患者の声を最大限に生かす考えが広まっている今の時代に、バーチャル臨床試験の登場は、患者にとっても開発者にとってもプラスになるシステムとなるはずだ。

■欧米で進むバーチャル臨床試験


それでは、実際にどのようなサービスがあるのか代表例を紹介していこう。

バーチャル臨床試験の取り組みは欧米で最も進んでいる。土地も広大で、民族も、その生活習慣なども多様なことから、より多くの被験者を集めたいという事情もあるだろう。

欧米でバーチャル臨床試験の代表的なプラットフォーマーとして知られている企業が、アメリカのScience 37社だ。

Apple社のiPhoneを利用したシステム「NORA(Network Oriented Research Assistant)」は、資材は被験者の自宅へ郵送、必要とあれば看護師訪問、通院も組み合わせるが、基本的にはIoT機器を通じて臨床試験を行えるものである。

このNORAは数々の大手の製薬会社が提携をしている。スイスを拠点とするノバルティス社は、NORAを利用して、群発性頭痛、脂肪性肝疾患などを対象とした臨床試験を実行している。

フランスの大手・サノフィ社もScience 37と提携しているが、それとは別に、2016年に行った「VERKKO」と呼ばれる糖尿病のバーチャル臨床試験を行ったことは特筆すべきだろう。Facebookで被験者をつのり、通信機能のついたグルコース計を通じてクラウドでデータを収集するというものだった。

また、独自のEDC(Electronic Data Capture=電子的臨床検査情報収集)臨床試験システム「Rave」を持つアメリカのメディデータ社では、EDC製品で世界のトップシェアをほこる同社の経験を生かした、合理的かつ低コストな臨床試験を目指している。


■日本にもようやくバーチャル治験の時代がやってくる?


昨今の新型コロナウイルス感染症(COVID-19)で、バーチャル臨床試験はよりいっそうの注目を集めるようになった。

PRAヘルスサイエンス社は、スマートフォンなどのアプリベースで「モバイル・ヘルス・プラットフォーム(MHP)」を展開しているが、この新型コロナにおいて外に出られない患者と、臨床試験の依頼者がつながりやすくなるよう、サポートするという。

翻って日本では、なかなかバーチャル臨床試験の動きが進まなかった。日本イーライリリー株式会社が日本初の「訪問型治験」を行ったのが、2018年になってからのことだ。だが、ようやく日本でも、この新型コロナ禍の最中に、国内初のバーチャル臨床試験システムが提供されることになったのである。

それが、日本で初めてCRO(医薬品開発支援)事業を始めたシミック株式会社と、オンライン診療サービス「クロン(curon)」を擁する株式会社MICINのタッグで作られたシステム「MiROHA (ミロハ)オンライン診療」である。

このシステムを活用すれば、医療機関側の受け入れが困難な状況でも、被験者に対するオンラインでの診療が可能。

CROの実績と、クロンでのオンライン診療の実績を生かして、日本にもようやくバーチャル臨床試験時代がやってくるのではないかと期待されている。

国内でも大手製薬会社がバーチャル臨床試験への関心を持っているとされ、前述のPRAヘルスサイエンス社も「モバイル・ヘルス・プラットフォーム」の導入を準備中だという。


■バーチャル治験、普及のための課題とは?


バーチャル臨床試験には、薬の投与から一部の診療プロセスを省略する方法や、必要な血液の採取といったこと以外のほぼすべての行程をバーチャルにする方法など、さまざまな考え方があるが、一切の通院不要で行うフルバーチャル化が究極的な理想であるとされる。

臨床試験のバーチャル化によって、デジタル化されたデータ照合の効率化や、費用に対する効果が高いなどのメリットがあげられる。なにより、通常では短くても3年ほどかかると言われている臨床試験の期間を短縮できるというのが最大の利点だろう。

しかし一方で、高齢者をはじめとしたデジタルデバイスを取り扱えない患者のデータが取りづらかったり、対面ではないことで臨床試験依頼者と被験者との信頼関係をどう作っていくか、さらにはビッグデータにはつきものの個人情報の取り扱い方など、懸念材料が立ちはだかっているのも事実だ。

バーチャル臨床試験の普及は、依頼者・被験者に対してこれらの懸念をどう払拭し、メリットを周知させていくかにかかっているのではないだろうか。


Rave Virtual Trials | Medidata Solutions
https://www.medidata.com/jp/products-rave-virtual-trials/
PRA Health Sciences
https://japan.prahs.com/ja-jp/locations/japan/
「MiROHA オンライン診療」を本日より提供開始 | シミックグループ

写真:Shutterstock
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Medical DX編集部

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