創薬
Medical DX編集部 2020.7.30

デジタル技術で薬と患者の関係はどう変わる?

モバイルヘルス市場がいよいよ活性化


医療の世界にデジタル技術はさまざまな可能性と活用方法を及ぼしている。とくにウェアラブルデバイスをはじめとした、IoT(モノのインターネット)デバイスの活用が進み、日進月歩で進化している。

医薬品の世界では、ここ10年ほどモバイル端末を医療に活用するモバイルヘルス(mHealth)という考え方が高まり、アプリケーションが患者に治療効果を与える「治療用アプリ」の開発が盛んになっている。とくに2010年、アメリカのFDA(食品医薬品局=日本の厚生労働省にあたる)が初めて糖尿病治療のためのアプリ「BlueStar」を医療機器として認定して以降、「アプリを処方する」ケースが増えてきている。

日本でも、ベンチャー企業CureAppが開発した、ニコチン依存症を治療するためのCureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCO チェッカーが、厚生労働省から薬事承認された。

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世界初のデジタルメディスンも登場


さらに一歩進んだ医薬品として話題となっているのが、「デジタルメディスン」だ。主な活用方法としては、医薬品と医療機器のコンビネーション(Drug-Device Combinations=DDC)。製薬会社とテクノロジーベンチャーがタッグを組んで急速な開発競争が行われている。

ことに話題となったのは、2017年11月、アメリカのFDAが、世界で初めてデジタルメディスンを承認したことだ。それが、日本の大塚製薬と、アメリカのベンチャー企業プロテウス・デジタル・ヘルス社が共同開発した「エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite)」。

患者は、大塚製薬が創製した抗精神病薬・エビリファイの錠剤にプロテウス社が開発した極小センサーを組み込んだ製剤を服薬、パッチ型のシグナル検出器・専用アプリを組み合わせることで服薬状況を記録できるというもの。患者側の同意が得られれば、スマートフォンなどのデバイスを通じて、医療従事者とも情報を共有し、細やかな治療を目指すことができるという。

アマゾンが処方薬の販売へ着手


医薬品の販売という面でも、デジタル技術やインターネットの活用が進みつつある。日本ではようやく今年からオンライン服薬指導が始まったばかりだが、アメリカでは先行して普及している。

オンライン薬局の大きな問題点は、処方から配達のタイムラグだが、アメリカの大手薬局ピルパック(Pillpack)では、慢性疾患の患者を中心に処方することで、問題を解決している。

2019年、そのピルパックをアマゾンが買収、医薬品販売へ本格的に乗り出した。アマゾンではそれまでの配送網にプラスして、ドローンを使って注文から30分以内に薬を届ける「プライム・エア」のサービスや、自社のAIスピーカーなどで家庭の常備薬を管理し、簡単に注文できるというサービスを検討している。

また、アマゾンのクラウドコンピューティング部門が、スイスの大手製薬会社ノバルティスと提携し、アマゾンのAI技術を活かして、医薬品製造と供給を支援する試みも発表した。

アマゾンが動いたことによってアメリカではオンライン薬局の競争が激化している。その一例として、新興薬局NowRxでは、患者が薬剤師とビデオチャットで相談したあと、AIを使ってその日のうちに薬を届けられるシステムをとっている。患者側としてはありがたいサービスではあるものの、業界全体のコスト高となる懸念の声も上がっている。

いっぽう、日本では先述のとおり、オンライン服薬指導が始まっており、これに対応したアプリやソフトウェアなどが登場している。

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デジタル技術と医薬品の結びつきは、今後もさまざまな場面で進んでいくこととなるだろう。創薬などではAI(人工知能)の活用も進む。デジタル技術を活用した服薬の形も当たり前になっていくだろう。


大塚製薬「世界初のデジタルメディスン『エビリファイ マイサイト(Abilify MyCite®)』米国承認」
https://www.otsuka.co.jp/company/newsreleases/2017/20171114_1.html
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