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Medical DX編集部 2020.12.14
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

オンライン診療での初診とは?かかりつけ医の役割とは?【加藤浩晃先生に聞く】

この連載では前回から、遠隔医療やデジタルヘルスの可能性を追求している加藤浩晃先生に、議論が進む「初診からのオンライン診療の恒久化」についてのお話をうかがってきた。

前回の収録後からも、さらに状況は進んだ。

10月29日、田村憲久厚生労働大臣、河野太郎行政改革大臣、平井卓也デジタル改革担当大臣の会談があり、安全性と信頼性、およびオンライン資格確認をベースに、「かかりつけ医」を対象にしたオンライン診療の恒久化を目指し、今年中に方針を打ち出すと合意。30日の閣議後会見で田村大臣が内容を発表した。

その後、厚生労働省では11月2日に第11回「オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」(以下「検討会」)、11月13日に第12回の検討会が行われた。

今回は、その検討会において、何を中心に議論されているのかを加藤先生に解説していただいた。前回の内容と、上記の流れを踏まえてお読みいただきたい。

(※データはすべて11月18日収録時のものです)


──前回のあと、日本医師会のほうから10月28日に会見がありまして、今回のオンライン診療の恒久化に関しての懸念について発表がありました。

加藤:厚生労働省が4月10日の事務連絡で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行における緊急事態を鑑みて、初診からの電話も含むオンライン診療を時限的に認めたわけですが、そもそもこのときも、日本医師会は懸念を示していたんですね。それは安全性と信頼性の点からいって、今まで1回も会ったことがない患者さん、かかりつけで来たこともない患者さんに対しての初診オンライン診療は、リスクが大きいのではないか、という主張をしていたんです。

──4月の際は緊急事態宣言がありましたし……。

加藤:そうですね。そのときと比べて、少しずつではあるものの、新型コロナウィルスについて解明がされてきていますし、ワクチンに関しても光明が見えつつある。そういった状況から見ると、現在の状況で、まったく知らない患者さんをオンラインで診療する、ということにはリスクが生じるわけです。

ですから医師会は「安全性と信頼性」の部分も含めて、受診歴がなくて、かかりつけ医の情報提供もない患者さんについては、原則的に初診のオンライン診療を認めない、というコメントを出したんです。その前日には、オンライン診療についての独自のガイドを発表している(※)。日本プライマリ・ケア連合学会も、初診からのオンライン診療のリスクを発表しています。

最大の論点は医師と患者の関係性について


厚生労働省 第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会「資料1」より引用

──田村大臣は30日の会見で「『かかりつけ医』の要件、対象疾患などはこれから議論して、年内に方向性を」という発言をしています。そのうえで、11月2日に第11回の検討会、13日に第12回の検討会が行われています。

加藤:まず、第11回の検討会の要旨は、第12回検討会の資料として、厚生労働省のホームページで見ることができます。この内容は第12回でも引き続き論じられていることなので、まずはこれを読んでもらうとわかりやすいかと思います。

検討会での論点


① 医師・患者関係について

② 地理的な観点について
③ 医療の質について
④ 診断・治療等の診療における観点
⑤ 医師の技術・研修
⑥ オンライン診療(受診勧奨を含む)のさらなる活用と課題
⑦ 地域におけるオンライン診療の提供体制について
⑧ システム提供者およびセキュリティついて
⑨ 高齢者への対応について
(詳細は厚生労働省 第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会「資料1」を参照のこと)

──このように大きく9つほどの論点が語られていますね。

加藤:このなかでも、最大の論点は①の医師・患者関係についてです。今回はこの論点についてお話しできればと思います。

厚生労働省 第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会「資料1」より引用

加藤:論点の6番目の項目に「かかりつけ医の定義について検討すべきではないか」と書かれていますね。まだ、ここの時点においては「かかりつけ医」とはこうです、という明確な定義はないということです。ですが、ここで言う「かかりつけ医」は、10月30日の閣議後会見で田村大臣が発言したように、「患者さんが普段かかっている医師」を指しているということになります。

──「かかりつけ医」という定義づけは、これまでされていなかったのですか?

加藤:いえ、診療報酬においてはされています。たとえば、平成30年度の診療報酬改定から、「かかりつけ医機能を有する医療機関における初診の評価等」という項目で、機能強化加算という点数が付けられています。「かかりつけ医に係る診療報酬を届けている医療機関において、専門医療機関への要否の判断等を含めた、初診時における診療機能を評価する観点から、加算を新設する」とされています。

──病気のことを相談できて、必要な時には専門のお医者さんに紹介できる、地域のお医者さんというところでしょうか。

加藤:②の地理的な観点という中でも論じられているのですが、患者さんの中で、東京と大阪にふたつの拠点をもたれている方がいるとしますよね。その場合、オンライン診療における「かかりつけ医」は、これまでの診療報酬の定義とはまた別軸の話をしていかないといけないのではないか、と。今までの話より広い観点で「かかりつけ医」を考えていかなくてはならないわけです。

「かかりつけ医」の定義とは


加藤:……ところで、みなさんが思う「かかりつけ医」って、どんなお医者さんですか?

──そうですね……、生活者の視点としては、風邪をひいたときに薬をもらうような町のお医者さん、つまり内科というイメージでしょうか。

加藤:そういうイメージをもたれますよね。では、普段通っている眼科のクリニックがあったりした場合は?

──眼科だと、「かかりつけ医」とはあまり言わないですね。

加藤:そうですよね。眼科だと、あまり「かかりつけ医」のイメージはないでしょう。ですが、今回の「かかりつけ医」の定義は、みなさんがイメージされている、内科だけはないんですよ。オンライン診療に関しては、治療の継続をしやすくしたり、その人の状態について一番よく知っている専門の医師が患者さんを診るということに大きなメリットがあるわけです。全身トータルではなくても、各診療科で自分の身体のことをよく知っている医師が、「かかりつけ医」になる、ということです。

厚生労働省 第12回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会「資料3」より引用

──そういった中で、上の図のように、初診のオンライン診療を適切に実施するための「医師・患者関係」について、ケースを4つに分けて考えようという提案がなされていますね。

加藤:たとえば、眼科に緑内障で通っている病院で、今度は目がかゆい、というような症状がでました、という場合。これは、ケース1にあたるわけですね。ケース2の場合は、アトピー性皮膚炎で過去にクリニックに通っていたことがある患者さんに別の腫れが出てきた、という例だとしましょう。これらに関しては、オンライン診療を初診から可能にしてはどうか、ということになっています。

──さらに、ケース3、4とありますが……とくに3に関してうかがえますか? 「過去に受診歴のない患者に対して診療を行う場合」、「同一医療機関において、一定期間内(例:12ヶ月以内)に予防接種や検診を受けていることで、患者の状態を把握している場合には」初診からのオンライン診療を可能とする、という提案ですね。

加藤:ここが最も議論になっているところですね。「予防接種だけで患者さんの状態は把握できないのではないか」とか「一定期間を12ヶ月ではなく、2〜3年に延ばしたらどうか」といった議論があります。

──たしかに、インフルエンザの予防接種を受けただけで、健康状態を把握できるかといったら、難しい気がしますね。

加藤:ただ、その下の提案にも関わってくるのですが、勤労世代の方が、忙しいのでオンライン診療を受けたい、という方が初診からオンライン診療を使うためには、ハードルが大きくなってくるんですね。なぜなら、勤労世代の20代から40代あたりの方は、一般的に病気が少ない世代です。その世代がいざという場合、病院にかかるというときに、普段かかっている医師がいない、ということが考えられるわけです。

けれども、予防接種、検診ならば病院に行きます。検診の場合は検診専門クリニックに行くかもしれませんが、予防接種なら保険診療クリニックとの親和性が高い。そういった部分で、このケース3に関する判断は、とても難しい議論なんです。どこかで線引きが必要にはなるので、今後の議論を注視していくべきところかと思います。

──ここまでオンライン診療の検討会についてうかがってきましたが、加藤先生は今後、オンライン診療のどういった部分が議論されるべきだと考えますか?

加藤:この検討会は、医師法に基づいたオンライン診療のあり方を議論しているので、診療報酬についてはまったく議論になっていません。しかし、診療報酬については絶対に議論が必要だと思います。対面診療と比べて2,000円くらい安いという問題は残されています。

──オンライン診療の普及のためにも、ここは大きな問題ですね。

加藤:安くてもオンライン診療をやってください、ということではなく、適切に評価して診療報酬を設定すべきだと考えています。

※「プライマリ・ケアにおけるオンライン診療ガイド Ver1.0」(日本プライマリ・ケア連合学会)
https://www.pc-covid19.jp/files/topics/topics-5-1.pdf


加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。
 
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