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Medical DX編集部 2020.11.11
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

【加藤浩晃先生に聞く】オンライン恒久化で、デジタルヘルスが加速する

今年4月10日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症の拡大に際しての電話や情報通信機器を用いた診療等の時限的・特例的な取扱いについて」の事務連絡を行い、特例として電話・テレビ電話での初診からのオンライン診療を認めた。また、8月6日にはさらにこの特例を3か月延長し、現在にいたっている。

そんななか、10月9日に田村憲久厚生労働大臣は、閣議後の記者会見で、この前日、河野太郎規制改革担当大臣、平井卓也デジタル改革担当大臣と会談し、新型コロナの収束後も、テレビ電話などの映像を使った診療に限って、原則的に初診からオンライン診療を恒久化に向けた具体的な検討に入ることで合意した、と明らかにした。

遠隔医療やデジタルヘルスの可能性を追求している加藤浩晃先生に、今回はこのニュースについて、どういったことに注目するべきかを語っていただいた。

※編註:本項はすべて10月22日取材時点の情報です。

今後行われる「指針改定会議」に注目すべき


──国としてオンライン診療恒久化の検討に入った、このニュースをどうご覧になりましたか?

加藤:まず、今年4月10日の事務連絡があり、8月6日にはさらに3カ月の延長をしたわけですが、現状において電話も含めた初診からのオンライン診療は、特例的、時限的措置ということでいつかはストップするわけです。この特例以前の2020年診療報酬改定の状態ですと、オンラインで診療できる疾患は制限され、初診は不可という状況に戻ってしまう。そこで、田村厚労大臣の会見後に、そのあたりをどうするかという検討を、厚労省医政局の医事課、オンライン診療の指針の検討会を行っている部署から、指針改定会議で検討を進めていくという説明があった……というところが現状です。まだ具体的な通知や事務連絡も出ていないので、まずは今後行われる指針改定会議に注目していく、ということがポイントというところでしょうか。

──4月10日の事務連絡では電話を含めていましたが、この恒久化の検討においては外されていますね。

加藤:田村大臣の会見で「安全性と信頼性をベースに初診からオンライン診療を解禁する」とありましたね。ですから、聴診とか打診とかもできない上に、視診というか、視覚情報は安全性、信頼性の担保として含めておきたい。そこで、オンラインは電話ではなく映像があることを原則とする、ということになったのでしょう。ただ、注目しておきたいのは、田村大臣のこのあとの「対象となる病気はどういうものか三大臣(田村厚労大臣、河野行革大臣、平井デジタル大臣)で詰めていきたい」という発言です。

──対象の疾患をこれから大臣たちの相談で決める、と。

加藤:この初診の意味は、当然「保険上の初診」なんですね。だから「クリニックに初めて来た」ことが初診ではないわけです。たとえばいつもは高血圧の治療をしているけれど、アレルギー性鼻炎の治療をしたいという場合、「保険上の初診」になります。ただ、このあたりは、患者さんにご説明するのは難しいところですよね。

──たしかに生活者の視点からすると、いつものかかりつけのお医者さんに行っているから初診ではない、と思ってしまうかもしれません。

加藤:また、患者さんは自分の病気に対して専門家ではありません。風邪だと思ってオンライン診療をしてみたら、違う病気だった、というケースだってあり得るわけです。だから、オンライン初診できると思って受診してみたら、実はこの病気はオンラインでは診ることができません、来院していただけますか、という事態も出てくると思います。疾患で区切ってオンライン診療ができる/できない、とするのは難しいのではないかと思っています。

私はオンライン診療を推進することに賛成です。が、ひとりの医師としてどんな場合でも初診からオンライン診療をする、ということには懸念があります。実際に、日本医師会もそういった懸念を発していますね。このようなオンライン診療の理想と、実際の医療現場との現実的な着地点、いわば「落としどころ」のようなものを、指針検討会議を通して探っていくのだろうと思います。ですから、今後の指針検討会議には注目したいと考えています。そして、この対象疾患を考えていく上で鍵となるのが、8月の「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」で出された資料になるでしょう。

──前回の連載1回目で解説していただいた資料ですね。

加藤:はい。そこで4月から6月までのオンライン診療の実態の数字が出されています。

先ほどの初診の問題に関して言えば、該当のクリニックに来たことある患者さんと、来たことがない患者さん。以前来たことはあるけれど、今回は違う病気でオンラインを利用した患者さん……。こういった「初診」に関する分類の仕方ということも、個人的にはまだまだ議論の余地があると考えています。

また、対象疾患に関しては、湿疹などの皮膚疾患といったものはテレビ電話でのオンライン診療で多く診られていたとか、こういったデータを活用して、今後の指針を検討していっていただきたいと思います。

「恒久化の検討」でオンライン診療の導入が進む!?


──このニュースによって、医療機関がオンライン診療を導入する数は増えていくのではないかと考えられますが……。

加藤:そうですね、私も感覚としてはそう考えています。前回のデータの中で、電話を含めたオンライン診療を導入したクリニックの数は約1万6,000施設と出ていました。これをテレビ電話だけに絞ると、おそらく1万いっていないのではないかと思います。全国で約11万のクリニックがあるので、10%に満たないだろう、と。

ただ、多くのクリニックは、まわりが導入すれば、クリニックの設備のひとつとしてやらなくてはいけない、という雰囲気になっていくでしょう。また、これも先日お話ししましたが、ちょうどタイミングよく11月からLINEヘルスケアがサービスインを発表していますね。これによって、エリアで限定すると、東京だけでもキャズム(16%程度)を越えることにはなるだろうと考えています。

──以前、加藤先生は、ご著書『医療4.0』などで提起されていたデジタルヘルスの未来像よりも、若干予定が早まった、というお話をされていました。このコロナ禍で、さらに早まったような気がするのですが、いかがでしょうか。

加藤:もちろん、新型コロナの問題もひとつの要素ですが、日本全体のデジタル化が思ったより早く進んだ、ということだと思います。今回は菅義偉内閣になって初めての規制改革会議で、ハンコの問題や教育の問題なども含めて、デジタル化の機運が進んだわけです。以前、僕がインタビューで答えたときは、コロナ禍によって、医療業界としての感覚としてデジタル化、オンライン診療の必要性を欲する機運が高まった、という意見でした。ですが、政権が変わって、さらに国全体のデジタル化の後押しが入った感覚ですね。

──今後、インフラとして5Gがさらに整備されてくると、デジタルヘルスはもっと加速する可能性があると思います。

加藤:そうですね、今ちょうど総務省で5G×医療の検討の委員会も開かれるなど、議論も進んできていると思います。ですが、私は、5Gが本格的に真価を発揮するのは「センサー時代」になることだと思っています。

──センサー時代とはどんなものでしょう?

加藤:今だと、混雑するターミナル駅などに行くと、ひとつのエリアに通信機器がたくさんあるので、回線が繋がりにくくなったりするじゃないですか。それが低遅延性、大容量、多数接続を特徴とする5Gでは、1エリアあたりの接続可能数が増えるわけです。そうすれば、今後もっとセンサーを備えた機器が生活に入ってくる。服も靴下も、指輪もウェアラブルなIoT機器で、家の中でも鏡やバスタブにセンサーを入れて、という時代ですね。そこから大量のバイタルデータが上がってくることになると思います。

──そういう時代になれば、だいぶ様変わりしますね。

加藤:今までの10年とこれからの10年では、だいぶ様変わりすると思っています。私は、最も医療が5Gで真価を発揮するのは、医療のDX(デジタルトランスフォーメーション)化だと思います。診察や手術においても遠隔操作が可能になっていく、といった個々の分野も期待されますが……。

医療のDXは、大きくふたつにわけることができると思うんです。ひとつは現場のDXと、もうひとつは患者さんのDX……顧客体験DXのようなもの。この両方が医療現場に必要だと考えています。DXの概念で、全体最適、部分最適という言葉があるんですが、医療に当てはめると電子カルテだけなら部分最適ですよね。けれど、患者さんの健康状況、電子カルテ、さらにはレセコンから受付業務、患者さんの待ち時間が減るといった顧客体験的な部分まで含めて、病院全部がデジタル化されるのが全体最適。これが、5Gによってより近づいていくだろう、と思います。

そうなれば、先にお話ししたセンサーで取ったデータをもとに、かかりつけ医が患者さんの健康状態を事前に把握してから診察を行う、そういったことが可能になってくるのではないかと考えています。

【プロフィール】
加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。専門は遠隔医療、AI、IoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。
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