診断
加藤 泰朗 2020.9.28
世界の医療DX事情

AI分野を中心に、急速に進化する中国のデジタル医療【世界の医療DX事情】

世界トップ水準を目指す中国のAI戦略


アメリカと並ぶデジタル大国・中国。医療分野でもデジタル技術を活用した、さまざまな革新的な挑戦がなされている。

なかでも発展がめざましいのがAIを活用した医療だ。巨大な人口を抱える中国は、医療AIに欠かせないデータを大量に収集しやすい環境にある。個人情報の扱いも他の先進国と比べて制限が厳しくない。

国家からの強力なバックアップもある。2017年7月に発表した「次世代人工知能(AI)発展計画」では、2020年までに自国のAI産業を世界水準に、2030年までに世界トップ水準に向上させるという目標を国として掲げている。

さらに2018年には、「自動車の自動運転」「医療画像診断」「スマートシティ」「音声認識」「顔認識」の5つの分野について具体的な企業を選定し、国家主導でAI産業の発展を促進させてきた。

2020年7月に上海で開催されたAIに関する国際会議では、中国が国際的な医療AI研究プラットフォーム(MedNet)を立ち上げると発表している。


医療画像診断技術で活躍する企業


医療画像診断でリード企業として選定されたのは、Tencent(テンセント)社である。同社は医療AI分野で300以上の特許を所有する、中国の巨大IT企業だ。

Tencen社の医療用AIプラットフォーム「Tencent Miying(覓影)」では、肺がんや食道がん、大腸がん、乳がん、糖尿病性網膜症などの早期スクリーニングや診断補助を行うことができる。同社のデータによれば、たとえば初期の食道がんならば90%の精度で認識できるという。

2019年には、子宮頸がんのスクリーニングのための診断支援システムの提供を開始し、注目を集めている。

Tencent社と双璧をなすAlibaba(アリババ)社は、系列研究機関Alibaba DAMO(達摩院)がAlibaba Cloud(阿里雲)社と共同で、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)をAIで診断する技術を開発している。新型コロナウイルス感染症に罹患した疑いのある患者のCT画像を、AIを使って判読するもので、判読時間は20秒以内、分析結果の精度は96%に達するという。

なお、日本のエムスリー社は2020年6月、Alibaba Cloud社と共同で新型コロナウイルス感染症のAI診断支援システムを開発したと発表した。(「AIは新型コロナウイルス感染症診断の救世主となるか?」内「アリババグループとエムスリーの新型コロナ検出プログラム」参照)

Imsight Technology社も新型コロナウイルス感染症の対応する肺のCT画像診断を補助するAIシステムを販売している。画像1点に読影にかかる時間はわずか10~20秒で、スクリーニングの精度は99%以上。1日約600人分の画像を処理が可能だという。

驚くべきはその開発スピードで、2020年1月20日にシステム構築のプロジェクトが開始され、そのわずか2カ月後の3月17日に実用化されている。

BioMind社が開発した「BioMind(天医智)」は、頭蓋内腫瘍のMRI画像ソフトウェアだ。スクリーニングだけでなく、CT画像やMR画像を用いて、脳腫瘍、脳卒中など、さまざまな神経疾患の診断とリスク評価を行い、医師の診断をサポートする。診断支援に用いるソフトウェアでは中国で初めて中国国家薬品管理局(NMPA)の3類医療機器(安全性審査が最も厳しい)の認可を取得している。

オンライン診療でも進むAI活用


Ping An Healthcare and Technology社の健康管理アプリ「Ping An Good Doctor(平安好医生)」は、登録ユーザー数は2億8900万人(2019年6月末現在)を誇る、中国国内第1位のモバイル医療アプリだ。

患者はアプリを使ってオンライン相談を開始すると、チャット形式でAIアシスタントが症状、年齢、性別など基本事項を確認し、そのあと医師が診断やリハビリテーション指導、薬物使用に関するアドバイスを行う。初期段階のスクリーニングにAIを活用することで、1日40万回の診断を行っているという。

2020年4月には、中国のAIヘルスケアシステムとしては初めて、WONCA(世界家庭医機構)から最高レベルの認定を受けている。

なお、Tensent社にも同様のオンライン医療アプリ「We Doctor(微医)」があり、新型コロナウイルス感染症の拡大を背景に存在感を強めている。

広大な国土を持ち、都市部と周辺地域との医療格差が大きい中国では、もともとオンライン診療をはじめとしたデジタル医療が広がる土壌がある。Daily China(中国日報)によれば、新型コロナウイルス感染症の流行や、5G環境の整備やIoT技術などの最新技術の採用によって、ヘルスケアサービス業界のデジタル化が進み、今年(2020年)は、中国のオンラインヘルス市場が爆発的に成長する見込みだという。

中国に医療AIは、画像診断分野を超えて、今後ますます急速に拡大し続けていくことが予測される。
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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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