診断
加藤 泰朗 2020.9.14

オンライン妊婦健診は、これからのスタンダードになるか!?

■慶應義塾大学病院がオンライン妊婦健診を実施


2020年1月中旬に国内で初めて感染者が確認されてから8カ月が経ったが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の勢いは依然として続いている。

このような状況を受けて慶應義塾大学病院は、6月よりオンラインによる妊婦健康診査(妊婦健診)を導入した。原則として、血液検査や超音波診断検査が必要な時期や出産予定日が近い妊婦以外は、オンラインによる健診に移行するという。

厚生労働省は、妊婦が受診することが望ましい健診回数を14回程度としている。

望ましい妊婦健診の回数
妊娠初期〜23週まで:4週間に1回(合計4回)
妊娠24週〜35週まで:2週間に1回(合計6回)
妊娠36週〜分娩まで:1週間に1回(合計4回)
*厚生労働省「子ども・子育て関連法における妊婦健診の位置付け」より

この決して少なくない健診回数を、可能なかぎりオンライン健診に切り替えることで、外来通院の機会を減らし、移動中の公共交通機関や病院内で新型コロナウイルス感染症に感染するリスクを最小限に抑えることが狙いだ。

■オンライン妊婦健診を支えるデジタル技術


慶應義塾大学病院の提供するオンライン妊婦健診は、妊婦が事前にオンライン健診用の問診票に必要事項を記入し、予約した時間にビデオ通話と専用アプリを使って医師の問診を受けるという流れで実施される。このしくみを支えているのが、メディカルデータカード社と中部電力のシステムだ。

医療情報プラットフォームである「MeDaCa PRO」には、新たにビデオ通話機能が追加された(メディカルデータカード社プレスリリースより)

診察は、メディカルデータカード社が開発した、医師と患者のコミュニケーションツール「MeDaCa PRO」を活用して、 ビデオ通話を介して行われる。また、妊婦が同意のもとで使用する同社のパーソナルヘルスレコード(PHR)アプリ「MeDaCa」に、検査結果や超音波検査画像、処方箋控えなどのデータを送り、情報を共有する。

さらに医師は、中部電力の提供するデータプラットフォームを介して、妊婦が自宅で計測・記録した体重や血圧値を確認しながら診察を進める。

ビデオ通話を活用することで、妊婦は医師の顔を見ることができ、安心しながら受診することができる。また、検査結果や体重・血圧値などのデータを活用することで、オンラインでも病院での対面に近いかたちで健診を受けることが可能になるという。

■新型コロナウイルス感染症対策を契機に、広がる「新しい診療のかたち」


今回の健診は、慶應義塾大学病院が内閣府より受託した戦略的イノベーション創造プログラム「AI(人工知能)ホスピタルによる高度診断・治療システム」研究開発事業の支援の一環として行われたものである。

同事業は、AIやIoTなどを活用し、先進的な医療サービスの提供、画像診断や問診などの補助、教育やコミュニケーション支援などを行い、医療の質の向上や医療現場での負担軽減を目指すものだ。

したがって、今回のオンライン妊婦健診の導入は、新型コロナウイルス感染症対策としての側面をもつが、それだけに留まるものではない。事実、将来的にはスマートフォンを活用し、定期的な妊婦健診は可能なかぎりオンラインで実施することを目指すという。

厚生労働省が8月6日、「第10回オンライン診療の適切な実施に関する指針の見直しに関する検討会」を開催したことは、当メディアでも既報である。検討会の報告によれば、7月末に電話・テレビ電話での診療に対応している医療機関は、医療施設総数(2020年4月末時点)の約14.6%だという。新型コロナウイルス感染症対策のもと、徐々にではあるが、オンライン診療の裾野は広がっている。

今回の慶應大学病院のような実践の積み重ねが、オンライン診療という「新しい診療のかたち」を切り拓いていくことだろう。


厚生労働省「子ども・子育て関連法における妊婦健診の位置付け」
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-12601000-Seisakutoukatsukan-Sanjikanshitsu_Shakaihoshoutantou/0000035240.pdf
オンライン妊婦健診移行のお願い | お知らせ | 産科 | 慶應義塾大学病院
http://www.hosp.keio.ac.jp/annai/shinryo/obstet/oshirase/detail/40234/
PHRアプリ「MeDaCa」
https://www.medaca.co.jp/about_medaca/

印刷ページを表示
WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
他カテゴリの記事を読む

DXによる医療・ヘルスケアの
変革を伝えるメディア

会員登録

会員登録していただくと、最新記事を受け取れたり、その他会員限定コンテンツの閲覧が可能です。是非ご登録ください。