診断
Medical DX編集部 2022.4.30

オンライン診療時代における、クリニックのデジタル化のモデルケース──「THIRD CLINIC」が目指す、新たな医師と患者の関係

2022年4月、東京・銀座に新たな「THIRD CLINIC」という新たなクリニックが誕生した。常勤医師が院長の三輪綾子先生ひとりというこのクリニックだが、実は今後のデジタルヘルスへの指針となる試みが詰まっているのだ。

今回の開業にあたって、院長の三輪先生と、共同経営者としてシステムの選定などをされた、本メディアの連載でもおなじみの加藤浩晃先生にお話をうかがった。

■理想の患者体験と医療提供を目指して

やわらかい雰囲気ではあるが、過度に「女性向け」というデザインは避けたというクリニックの内装。広々とした受付カウンターもシンプルなデザイン

──まず、「THIRD CLINIC」という名前の由来からお聞かせ願えますか?

三輪:THIRDは3番目という意味なんですが、社会学者のレイ・オルデンバーグが提唱した「サードプレイス」、つまり「3番目の居場所」という言葉からきています。1番目の居場所である家、2番目の居場所である学校や職場とは違った、居心地の良い居場所という意味ですね。そんな自ら望んで気軽に赴くような場所を、クリニックとして提供できないかと考えていたことによります。

私は女性のヘルスケアを仕事としてきましたが、経験上、体調の変化の悩みをなかなか相談できずに、だいぶ悪化してから受診されるというケースが多く見られるんです。ですので、もっと日常に近い感覚のクリニックがあれば、そういったケースを防げるのではないかと思ったのが、「THIRD CLINIC」を開設したひとつのきっかけです。

──いわゆる顧客ニーズに応える「患者体験」という部分ですね。

三輪:そうです。「レディースクリニック」という名乗りをしなかったのも、患者さんの持つお悩みの内容に縛られず、気軽にご相談いただきたいという、ひとつの理由です。


──先ほどから「ひとつ」というお言葉が出てきていますが、他にもテーマがあるということでしょうか。

三輪:もうひとつは働く側、医療従事者の体験も向上させていきたいというものです。医療者にはそれぞれスペシャリティがあります。各々の専門分野の知見によって、患者さんに最適な医療を提供することが医療の理想ですし、医療者が本来目指していることなんです。

ですが、既存の大学病院などで働く場合、そこでの患者さんの層や、しきたりなどがあって、医療者の理想と100%合致することはなかなかありません。

その理想を実行するためには自分で開業しなければなりませんが、開業が難しいドクターもいるわけです。そこで、理想の医療を提供したいという医療者のために、場所を提供できるようにしたい、と考えました。現在(2022年4月開院時)の常勤医師は私ひとりですが、将来的には、先ほどお話ししたような専門分野を持ったドクターに診療室を使ってもらって、診察が行えるようなシステムを構築しています。このシステムを作るにあたって、加藤先生にご相談して、さまざまなかたちでご尽力をいただきました。

■オンライン診療の加速を目指した、医療の「場」づくり


──では、加藤先生に今回この「THIRD CLINIC」をつくられた経緯をうかがいます。

加藤:これまでも私の連載でお話をさせていただいたとおり、とくに今年の4月の診療報酬改定によって、オンライン診療や、クリニックのデジタル化において、できることが増えてきたんですね。さらに次の連載第15回でお話をさせていただきますが、同じく今回の報酬改定によって、薬剤師さんの仕事についても、DX化がより加速する方向へ進むであろうと考えています。

そういった状況のなかで、三輪先生からお話がありました。ちょうど三輪先生が考えられている新しいクリニックのかたちと、私が現在考えうるデジタルヘルスへの考えが一致して、今回の開業にいたったわけです。

──クリニックの具体的なお話をうかがっていきますと、患者目線で見たときに、受付も含めて大変シンプルになっていますね。

加藤:まず、この「THIRD CLINIC」には診察券がありません。LINE上で確認できるシステム「Nest Reserve」(株式会社ボットロジー)を使って予約や診察日程の確認などが行えるようになっています。

精算に関しては自動精算機(株式会社GENOVA)を設置して、患者さんの病院内での滞在時間をできるかぎり短くするようにしています。

LINE(https://line.me/R/ti/p/%40771scyqd)から予約や予約状況の確認、クリニックの情報の確認などができる


三輪先生の診療室(写真上)と、他のドクターに使ってもらうことも考慮されている診療室。カルテなどはクラウドサービスを利用するため、セキュリティを担保したWiFiが院内に飛んでいるが、いっぽうで据え置きの大きなPCなどはなく、内装とも相まってシンプルな印象

──たしかに、待合のスペースに比べて診療室が多いように感じますね。もうひとつ特徴的なのが、受付を隔てて、女性向けの診療スペースと反対側に、いくつかの部屋と待合スペースがあるのですが……、これは?

三輪:こちら側が、先ほど申し上げた、ほかのドクターたちに使ってもらえるようにする診察室となります。

──診察室の中にはデスクとディスプレイがあるくらいで、シンプルなつくりになっていますね。

加藤クラウド電子カルテを導入しているので、「THIRD CLINIC」に所属してもらったドクターには、セキュリティが担保されたPC上において、患者さんのカルテがすべてクラウド上で閲覧できるようになっています。いわば、どこでも患者さんのカルテを見ることができるわけです。

──オンライン診療に対応しやすいシステムということですか。

加藤:そうですね。以前から申し上げているように、今年の診療報酬改定、そして2024年からの医師の働き方改革問題などもあわせて、2030年に向けてオンライン診療の比重は増えていくでしょう。となると、これからは、患者さんが近くのクリニックを選ぶというよりも、医師を自分で選ぶという時代に変わっていくことになります。

たとえ引っ越しをしたとしても、オンラインであれば、自分のかかりつけの医師を変えなくて済む。ただ、けっして100%、すべてがオンライン診療に置き換わるわけではないですよね。実際に患者さんを診療できる「場」が必要ではあるんです。

三輪:そうなった場合に、患者さんにとっては「行きやすい場所」であったり、「ドクターに気軽に相談してみよう」と思えるように設計しておきたかったんです。それに、既存の病院で勤務していた医療者にとっても、自分が診てきた患者さんとコミュニケーションをとりつづけていきやすい場所として活用してもらえるようにしていきたい、と考えています。

加藤:医師は医療機関に所属しないと診療できませんから、そういった医療者に「THIRD CLINIC」へ所属してもらえればいいなと思いますね。

■将来像は「クラウド上の総合病院」



──お話をうかがっていると、新規開院するクリニックだからこそおふたりの理想が詰め込めたという部分が大きいように見受けられますね。

加藤:それは大きいですね。たとえば電子カルテでもクラウドのシステムでも、現在いくつものサービスがあるわけですよね。既存の病院だと、既存のプロセスを維持したままで個々の優れたサービスを少しずつ取り入れていくということになるでしょう。

ただ、そうした個別最適の部分は導入できても、連携までも含めたトータルの部分、全体最適という意味でデジタル化するのはなかなか難しいんです。ただ、今はDX(デジタルトランスフォーメーション)と言われているように、根本的な変化が求められています。

三輪:既存の病院ですと、どうしてもいらっしゃっていただいている患者さんの診療の邪魔をしないようにサービスを入れていかなければならないので、制限がかかる部分が出てくるんです。

加藤:今回の開院においては、全体最適という部分を強く意識したシステム構築を行っています。診察までに関わるLINEや電子カルテなどのシステムはもちろん、オンライン服薬指導、さらには処方薬を23区内であれば2時間以内などで配送を行えるような体制も整えています。

──患者体験、そして医師の働き方、患者と医師の関係性、そして本当の意味でのDXといった部分まで含めて、多くの新しい試みが詰まっていることがわかりました。

三輪:ありがとうございます。今後は、加藤先生に構築いただいたシステムを元に、今後はさまざまな科のドクターに所属してもらうことで、クラウド上の総合病院のように成長していけたらと考えております。

加藤:そうですね。「THIRD CLINIC」が、クリニックのデジタル化を目指す方々のモデルになれたらいいですね。

さらに私たちは、デジタルによる「患者中心の医療提供」だけではなく、企業との「デジタルヘルスの共創・社会実装」も目指しています。興味ある企業の方はクリニックのHPの問い合わせなどから連絡をもらえたらと思っています。自分たちが考えられていないような、クリニックを活用した面白い取り組みもぜひ提案してもらいたいと思っています。


「THIRD CLINIC」
東京都中央区銀座2-4-18 アルボーレ銀座4階
https://thirdclinic.jp/
LINE予約:https://line.me/R/ti/p/%40771scyqd


三輪綾子
みわ あやこ/THIRD CLINIC院長。札幌医科大学医学部卒業。日本産科婦人科学会産婦人科専門医。東京産婦人科医会広報委員、同母体保護法委員、一般社団法人予防医療普及協会理事などを務める。
加藤浩晃
かとう ひろあき/本メディア連載参照

取材:編集部
撮影:齋藤葵

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WRITTEN by

Medical DX編集部

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