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Medical DX編集部 2022.4.28
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

リフィル処方箋とオンライン服薬指導がもたらす薬局のDX化【加藤浩晃先生に聞く】

2022年4月より、診療報酬改定および調剤報酬改定が行われた。今回はそのなかでも調剤報酬改定の注目点について取り上げたい。図表はいずれも厚生労働省 保険局 医療課「令和4年度調剤報酬改定の概要(調剤)」より引用した。詳細な点数等はこの資料を参照していただきたい。
 
厚生労働省が挙げた改訂のポイントとしては、診療報酬改定でも唱えられている効率的かつ効果的で、質の高い医療を提供する体制を強化することが基本にある。

そのうえで、服薬状況等を一元的かつ継続的に把握して管理および対物業務を効率的に行うことで、薬局薬剤師業務を「対物中心」から「対人中心」への転換するということだ。

それにともなって、薬局薬剤時業務の評価体系を見直し、対人業務に対する評価の拡充がなされている。薬剤調整料、調剤管理料、服薬管理指導料が新たな報酬として加算され、薬剤師が地域医療に貢献する存在としてより機能するべく、地域支援体制加算の評価も高くなった。

「薬局での調剤業務の流れについて」(令和4年改定)

同「薬局・薬剤師業務の評価体系の見直し」

さらに注目すべき点は、本メディアでも紹介している「リフィル処方箋」の導入、オンライン服薬指導の評価の見直しと、オンライン資格確認における「電子的保健医療情報活用加算(3点)」の評価の新設があげられるだろう。

■参考記事:4月からスタートしたリフィル処方箋、利用促進には課題も


上記2点「情報通信機器を用いた服薬指導の評価の見直し」

前置きが長くなったが、DX化の観点から、この改定が今後の医療にどのような影響があるのか、加藤浩晃先生にお話をうかがった。

■リフィル処方箋の導入とオンライン服薬指導の関係


──加藤先生が考えられる、今回の調剤報酬改定における注目のポイントをうかがえますか?

加藤:今回の改訂において注目されるのは、リフィル処方箋の導入と、オンライン服薬指導の評価となります。このふたつは、医療のDX化という部分から見たときに切り離せない、同一のベクトルに向いた方策だからです。

まずリフィル処方箋について簡単にご説明すると、「症状が安定している患者について、医師の処方により医師及び薬剤師の適切な連携の下、一定期間内に処方箋を反復利用できるリフィル処方箋の仕組み」と定義されています。医師が患者の健康状態を判断したうえで、一定期間内において同じ処方箋で3回まで、医師の診察がなくても薬をもらえるようになります。

たとえば、慢性疾患で状態が安定している状態の患者さんや、花粉症の患者さんなどにおいて、1回目に診察と服薬指導を受ければ、2回目、3回目はオンライン服薬指導によって患者さんは薬を受け取る、といったこともできるようになりますね。

──患者さんにとっては、リフィル処方箋とオンライン服薬指導の合わせ技によって、クリニックや薬局に行く手間がはぶけるというメリットがあるわけですか。ということは、医療機関へ出向く患者が減ってしまう方向へ向かうわけですから、医療機関としては、リフィル処方箋を導入することにあまりメリットが感じられないと思いますが。

加藤:そういう見方もあるでしょう。ただ、医療機関のなかでも規模の大きい病院に勤務する医師としては、メリットが生まれますと考えています。日本ではどうしても大病院志向があって、どんな病気であっても、患者さんが大きな病院へ行く傾向があります。

しかし、急を要しない患者さんが大病院に多くつめかけることで、大病院での緊急診療や、専門的な治療を必要とする患者さんへの対応、ケアにかける労働力が不足してしまうこともあります。

このように、それぞれの患者さんに対して最適化された医療を提供するということを考えたとき、リフィル処方箋は大きなメリットとなる場合があるのではないでしょうか。

■薬剤師も自宅からオンライン服薬指導ができるように?


──いまのご意見を踏まえると、リフィル処方箋を活用するのは大きな病院が多くなるということになりますね。

加藤:そうですね、いわゆる大病院の「門前薬局」に対する影響が大きくなるでしょう。

大病院を受診する患者さんは、ある程度、遠方から来る方が多いと思います。となると、薬を受け取るために病院を受診して門前薬局へ、という労力はそれなりに大きい。

ですが、リフィル処方箋が発行されたら、患者さんが直接、大病院や門前薬局へ出向かなくても、薬を処方してもらうことが可能です。つまりここで、オンライン服薬指導が大きな意味を持ってくるわけですね。

現在では薬品の配送も、バイク便で届けたり、宅配ロッカーを使ったものであったりといった、さまざまな形が拡大しつつあります。こういった点を考えると、今後薬局の競争がさらに競争が激しくなり、オンライン服薬指導の導入やDXが必須となってくるのではないかと考えています。

──最初に挙げた資料のとおり、今回の報酬改定でオンライン服薬指導もこれまでより高い評価となっています。

加藤:大病院の近くにある門前薬局もひとつではありませんから、今後の生き残りのためにはオンライン服薬指導をいかに有効に活用していくかが重要なポイントになってくると思います。

──となると、薬局の薬剤師さんたちの働き方もだいぶ変わってくるような気がしますね。

加藤:今回の薬剤診療改定のなかでも指摘されていますが、以前から厚生労働省は「患者のための薬局ビジョン」として、薬剤師の役割については「『門前』から『かかりつけ』、そして『地域』へ」という言葉で表しています。薬剤師も「かかりつけ」の時代にあって、「地域」医療の担い手として、大きな役割を期待されているわけです。

そういった意味でもオンライン服薬指導が持つ意義は大きいのですが、現在は薬剤師がオンライン服薬指導を薬局以外の自宅などからは行えない状況にあります。

そこで、3月10日に厚生労働省の「第2回薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」のなかで、「薬剤師が自宅から行うオンライン服薬指導について」という論議がされました。

簡単にご説明すると、調剤を行う薬局で調剤業務に従事・勤務している薬剤師であれば、補完的業務の範囲としてオンライン服薬指導を行えるようにしてはどうか、ということです。

──なるほど。こうした議論が進めば、オンライン服薬指導に関する新たなシステム構築も必要となってきますね。

加藤:そういうことになります。現在医師が使っているような、セキュリティが担保された状態のオンラインカルテと同様のシステムが、薬局用にも必要になります。こうしたソリューションの開発にも期待が持たれるところですね。

私は2030年に向けて医療の多角化、個別化、患者さんの主体化が進む、と申し上げてきましたが、そこに向けての具体的な議論が、少しずつ熟成しつつあるように考えています。

加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。2021年一橋大学大学院金融戦略・経営財務MBA(経営学修士)。専門は遠隔医療AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)など40冊以上の著書がある。新刊『デジタルヘルストレンド2022』(メディカ出版)が発売中。
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