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Medical DX編集部 2021.10.25
加藤浩晃先生に聞くデジタルヘルスの現在地

オンライン診療、PHRの普及促進はどうなる?【加藤浩晃先生に聞く】

9月1日から、「デジタル庁設置法」、デジタル社会の基本方針などを定める「デジタル社会形成基本法」(一部を除く)、またその関係法律についての整備を行う「デジタル社会の形成を図るための関係法律の整備に関する法律」(一部を除く)が施行され、デジタル庁が発足した。

まずはその基盤となるマイナンバーカードの普及・活用を早急に推進し、それによって国民ひとりひとりのニーズにあったサービスを受けられるようなデジタル社会の実現を目指していくことになる。

内閣官房ホームページ、成長戦略会議(第9回)「資料4:デジタル社会の実現に向けた取組」より引用

このデジタル庁の理想の下、医療のDX化の流れはどう変わっていくのか、加藤浩晃先生にうかがった。

※本稿は9月27日に収録されました。役職等の名義は収録時のままとなっております。ご了承ください。

「社会全体にわたるデジタル化」の最初に「医療」


──今回は、デジタル庁と医療の関係について、お話をうかがいたいと思います。

加藤:これまで何度かお話ししてきたことのおさらいになりますが、デジタル庁は既存の各省庁を横断して、デジタル改革に取り組むものです。

「デジタル社会形成基本法」では、デジタル庁の長・主任となる大臣は内閣総理大臣で、その事務を統括するのがデジタル大臣とあります。さらには、円滑に事務を遂行するため、「関係行政機関の長に対する勧告権等を規定する」と書かれています。

──他の省庁に勧告できるとなると、だいぶ強力な権限になりますね。

加藤:そうですね。それを踏まえて、デジタル庁のホームページに掲載された平井卓也デジタル大臣のメッセージを見てみましょう。

(前略)
デジタル庁では3つの柱に重点的に取り組みます。
第1の柱は「行政のデジタル化」。
スマートフォン一つで、役所に行かずともあらゆる手続きがオンラインでできる社会を作るため、システムの統一・標準化、さらにデジタル化の基盤となるマイナンバーカードの普及等を推進します。
第2の柱は「医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化」。
オンライン医療・教育を実現して、日々の暮らしを便利に変えていきます。ベースレジストリを社会で広く共有し、新しい雇用や投資を生み出すことで、豊かに成長する経済社会を作っていきます。
第3の柱は「誰もが恩恵を享受できるデジタル化」。年齢、地域、経済状況などによらず、全ての国民が情報にアクセスでき、デジタル化の恩恵を享受できるようにします。(後略)
デジタル庁ホームページ「平井大臣メッセージ」より引用

加藤:ここで平井大臣は「医療・教育・防災をはじめ、産業社会全体にわたるデジタル化」を第2の柱として発表していますが、その最初に「医療」をもってきています。デジタル庁の成り立ちと、このメッセージを重ね合わせると、強い意志をもって医療のデジタル化に当たろうとしていることがうかがえます。

オンライン診療、PHRの普及推進の行方


加藤:また、このデジタル庁の発足に伴って、9月6日に「第1回デジタル社会推進会議」が開催されました。


デジタル庁ホームページ、第1回デジタル社会推進会議「資料1 新たな推進体制について」より引用

加藤:上の図を見ていただくとわかるとおり、議長はデジタル庁の長である内閣総理大臣なんですね。そこに、各省庁の大臣が出席する。つまり、国の中でも最も重要な会議のひとつとなっていることがわかります。

──そういったなかで、「社会全体にわたるデジタル化」という目標の最初に「医療」の話をもってきているということは、オンライン診療なども含めた医療のデジタル化が、これまで以上に加速する状況になってきたと考えてもいいのでしょうか。

加藤:今回のデジタル社会推進会議では、「今後のデジタル改革の進め方」として、マイナンバーカードを活用してのスマホへのワクチン接種証明を搭載する案や、オンライン診療およびPHR(パーソナル・ヘルス・レコード)を推進する案などがあげられました。

当初、厚生労働省の医政局にある医事課によるひとつの会議で話されていたオンライン診療やPHRの議論が、首相が議長となる会議で議論されるになったわけですから、その規模感の違いが見て取れると思います。これまで以上に議論が加速していくことは間違いないでしょう。

──どれくらいの速度感で行われていくのでしょう。

加藤:具体的には、12月の中下旬を目標に、デジタル庁として初めての「重点計画」を策定するということになっています。


デジタル庁ホームページ、第1回デジタル社会推進会議「資料5:今後のデジタル改革の進め方」より引用

加藤:こうした計画の中に、先に挙げられていたオンライン診療や、PHRの活用促進が含まれるでしょう。またPHRの推進にからんで、現在多種多様なフォーマットが存在する、電子カルテの規格の標準化も行われていくのではないかと期待されます。

医療の問題が、医療業界だけのものではなくなる日


加藤:個人的に、もうひとつ注目しているデータがあります。8月26日に厚生労働省の令和4年度の概算要求の概要が公開されました。

このなかで、デジタル庁が計上するものとして、「全国の病院等を検索できる医療情報サイトの構築」という予算案が出されています。

厚生労働省ホームページ「令和4年度 概算要求の概要(厚生労働省医政局)」より引用

加藤:この文章だけだと、まだくわしいことはわかりませんが、「国民の医療機関への上手なかかり方を広めるシステム」を国が作ろうとしているという動き自体が、大きなことだと思います。

──これまでのお話をうかがっていると、これまで以上に、医療のDX化に向けて医療ベンチャーなどが参画できる素地ができつつあるように思えますが……。

加藤:これまでは医療に精通した会社がIT化しようというサービスが多く見受けられましたが、逆にIT/ICTの企業が医療のサービスに参画してくることが、より多くなるのではないかと、私は考えています。逆にITに精通した人たちのアイデアが、医療に活かされる時代になっていく、と。特に、IT系の企業の方がデジタル庁のCxO(最高責任者)として参加されていることが、大きな後押しになるかもしれません。

一般的に、医療業界はクローズドな部分が大きいと言われてきました。そういった別業界の感覚が入って、「こうすればもっと満足な医療が受けられるのではないか」「この制度はおかしいのではないか」といった新たな「気づき」が得られることもあると思います。

医療の問題が、医療業界だけのものではなくなっていくことで、より充実した医療サービスの提供が目指せるのではないでしょうか。

<プロフィール>
加藤浩晃(かとう ひろあき)
2007年浜松医科大学卒業。2021年一橋大学大学院金融戦略・経営財務MBA(経営学修士)。専門は遠隔医療AIIoTなどデジタルヘルス。16年に厚生労働省に出向、退官後はデジタルハリウッド大学大学院客員教授、AI医療機器開発のアイリス株式会社取締役副社長CSO、厚生労働省医療ベンチャー支援(MEDISO)医療ベンチャー支援アドバイザー、京都府立医科大学眼科学教室、千葉大学客員准教授、東京医科歯科大学臨床准教授など幅広く活動。『医療4.0〜第4次産業革命時代の医療』(日経BP社)『デジタルヘルストレンド2021』(メディカ出版)など40冊以上の著書がある。
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