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Medical DX編集部 2020.7.31

病気の早期発見へ──コロナ禍にも対応するAI問診サービス「AI問診Ubie」の挑戦/Ubie株式会社 阿部吉倫先生インタビュー

医療機関向けのAIによる問診「AI問診Ubie」、生活者向けの受診相談サービス「AI受診相談ユビー」を提供するUbie株式会社。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の流行の渦中、注目されるAIの問診・受診相談が目指す未来とは? Ubie株式会社共同代表取締役 医師・阿部吉倫先生に話を聞く。


現場の視点からのエンジン、生活者の視点からのUI


──Ubie株式会社を立ち上げた経緯をお教えてください。

阿部:私はもともと大学時代の2013年から、久保恒太(現:Ubie株式会社共同代表エンジニア)と一緒に自動問診のエンジンを研究開発していたんです。その後、医学部を卒業した後に、東京大学医学部附属病院、健康長寿医療センターに勤務することとなったのですが、ここで体感したのが、カルテの記載業務に大幅に時間をとられる実情でした。「患者さまと向き合うよりも、事務作業をしているほうが長いのでは?」と感じることもあったほどです。そこで、久保と開発していたエンジンを、「AI問診」としてソフトウェアで提供すれば、医療現場の事務効率もかなり削減できるのではないか、と考えました。
「AI問診Ubie」より。患者の感覚的な訴えにも細かく答えられるエンジンとなっている

──生活者の視点から言うと、紙の問診票では症状を説明する際に、頭痛ひとつとってみても、「ズキズキ痛い」「ガンガン痛い」とか、感覚的な言葉というか、ファジーな表現しかできないことがあります。「AI問診Ubie」では、そういった場合の処理をどうされているのでしょうか?

阿部:問診に限らず、実際に診察をするときにも、患者さまがファジーな言葉で症状を訴えられる、一時的な表現は聴取したいわけです。その言葉を、医師の側で拍動性の頭痛なのか、電撃性の頭痛なのか、頭の中で処理しています。「AI問診Ubie」は、簡単に説明すると、患者さまが訴えられた症状のキーワードを拾い出してAIが翻訳し、そこから検索された問診が次々と生成されていく、というエンジンです。

──このエンジンができるまでにどれくらいかかったのでしょうか?

阿部:研究開始から創業までにおよそ4年、また創業後もアルゴリズムを日進月歩で更新しています。実は、エンジン以外に最も頭を悩ませたのが、ユーザーインターフェイス(UI)でした。病院を訪れるのはご高齢の方が多いですから、使い勝手を考えなければいけなかったんです。

「AI問診Ubie」の画面。高齢者にもわかりやすいインターフェイスとなっている

──リサーチはかけられたんですか?

阿部:我々が考えたUIを持ち寄って、公園に集っている高齢の方に、実際に使ってもらったり、お話をうかがったりしました。日常生活でタッチパネルを操作される場面を聞いてみると、駅の券売機や、銀行のATM、図書館の検索機、カラオケの電子リモコンなど……。そういった使い尽くされたUIに馴染みがあるということがわかりました。このリサーチを参考に約1年研究開発し、80代の方々でも90%の入力率を得ることができたため、医療機関へのサービス提供を開始しました。実際に使用された患者さまからは、紙に書く問診票より、設問に答えていくだけなので、ご自分の言わんとすることが伝えやすくて楽だというご意見もいただきました。

コロナ禍のなかで──「COVID-19トリアージ」支援システムの導入



──医療機関側からのご意見は?

阿部:導入された医療機関さまからは、スタッフの業務効率向上はもとより、患者さまの待ち時間が短くなったというご報告をいただいています。一例をあげると、長野中央病院さまでは待ち時間が約30分短くなったようです。地域の中核病院など、医療機関の規模が拡大するほど、患者さまの情報を取得する時間を要し、結果的に診察時間が短くなってしまう傾向にありますが、「AI問診Ubie」を使うことによって、患者さまの状況がわかったうえで診察できるため、よりドクターと患者さまの対面コミュニケーションが充実する、というメリットが生まれます。

──現在のところ「AI問診Ubie」は大規模の病院に多く採用されていますね。

阿部:そうですね。これまでは大規模の病院さまから、業務効率化や、看護師、事務スタッフへのタスクシフティングという理由で採用していただきました。また、我々もAIのアルゴリズム生成という観点から、データ量の豊富な大病院さまでの導入を進めていました。現在、こうした実績をもとに、中小規模のクリニック、診療所さまへの導入に注力しているところです。

──これまで「AI問診Ubie」を採用された医療機関から、要望などがあると思うのですが、どのように対応されていらっしゃいますか?

阿部:クラウドサービスならではの特徴を生かし、細かな問題や課題は順次解決しております。また5月より開始した「AI問診Ubie」の新規機能「COVID-19トリアージ」支援システムは、このたびの新型コロナウイルス感染拡大に伴い、医療機関さまの声を参考に開発しました。従来であれば院内で患者さまの容態を聞いて、個室へ誘導するなどの対策をとられていたと思います。

「COVID-19トリアージ」支援システムの概要

──今回の新型コロナは、罹患していても症状が軽い場合も多いですよね。

阿部:はい。非典型的な症状でも、感染の疑いが生じたら、当然院内での感染リスクが発生します。ですので、我々は厚生労働省のガイドラインに沿ったかたちで、「AI問診Ubie」を使って事前にすべての症状をスクリーニングして、関連症状が確認された場合に、医療機関にアラートを表示する機能を追加しました。加えて、院内滞在時間を少なくするため、院内ではなく、患者さまの自宅など院外で問診できるよう、「AI問診Ubie」の導入医療機関さまのホームページ上から来院前に問診できる機能も提供しました。

生活者向けの受診相談サービス「AI受診相談ユビー」



──コロナの院内感染防止ということでいうと、現在、患者側では「通院控え」が起きています。いわゆる不要不急の症状ならいいのですが、病院に行かねばならない場合もある。その疑問を解いてくれるのが、無料で提供されている生活者向けの受診相談サービス「AI受診相談ユビー」ということになると思います。

阿部:今年4月から始めたサービスですが、私が病院に勤務していた頃のある原体験をもとに創業前から着想していました。夜間当直をしていたときに、中年の男性の患者さまがいらっしゃいまして「2年前から血便が出ていたんだけれども、仕事が忙しくて病院に来られなかった。でも、今日は背中が痛すぎて眠れないので病院に来た」とおっしゃるんです。お話をうかがうだけで、大腸癌の骨転移を疑いました。MRIを撮ってみると、案の定の結果でした。そのとき、2年前に気づいたときに病院に来ていただいていれば、医者としても治療のオプションをたくさん持っていたのに、と悔やみました。

それで、こうした事態を避けるためにはどうしたらいいのか、という気持ちがわいたんです。医師としても患者さまとしても、最も重要なことは病気の早期発見、早期受診です。そのためには、患者さまと医師の距離を遠くしてはいけない、と考えています。


「AI受診相談ユビー」より。左画面のような質問に順次答えていくと、右画面のように結果が出て、近隣の医療機関も探すことができる

──「AI受診相談ユビー」を使えば、来院のタイミングをはかることができる、と。

阿部:そうですね、安心して判断して、医療機関にかかっていただけるようなサービスを目指しています。現在は、その受診相談の結果によって、近隣の医療機関を探せますが、今後は受診を希望される方の症状を、事前に医療機関へ送信できるようにしたいと考えております。病院選びも、たとえば内科にしてもリウマチがご専門だったり、不整脈がご専門だったり、と、個々のドクターの専門と患者さまの症状をマッチングさせていけるようにしたいです。

──医療機関向けの「AI問診Ubie」について、今後の展望をお聞かせください。

阿部:AI問診のサービスは世界的にも類を見ないものなので、グローバル展開も見据えながら国内でのサービス提供と改善を重ねてまいります。課題先進国・日本だからこそ培える技術をもって世界中の健康に資する事業を展開してまいります。


AIを活用したサービスとして脚光を浴びているUbie。現場の課題をテクノロジーで解決していくという姿勢がサービスの拡大につながっている。医療現場のDXを推進する存在として、これからのUbieの事業に注目していきたい。


あべ よしのり
2015年東京大学医学部医学科卒。東京大学医学部付属病院、東京都健康長寿医療センターで初期研修を修了。血便を放置し48歳で亡くなった患者との出会いをきっかけにデータサイエンスの世界へ。独学でアルゴリズムを学び、Ubie質問選定アルゴリズムを開発。データベース構築に使用した論文は5万件以上。
2017年5月にUbie株式会社を共同創業、医療の働き方改革を実現すべく、全国の病院向けにAIを使った問診システム(AI問診Ubie)の提供を始める。2019年12月より、日本救急医学会救急AI研究活性化特別委員会委員。2020年 Forbes 30 Under 30 Asia Healthcare & Science部門選出。

Ubie株式会社
https://ubie.life/
AI問診Ubie
https://introduction.dr-ubie.com/
AI受診相談ユビー
https://ubie.app/

Photo by 齊藤葵
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Medical DX編集部

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