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Medical DX編集部 2021.8.20

ボトムアップで遠隔医療の課題を解決する「地域スマート医療コンソーシアム」

2021年5月18日、地域住民が自宅で簡単に診療・服薬指導を受けられる、スマート医療の実現を目的とした「地域スマート医療コンソーシアム」が、医療関連事業者とケーブルテレビ事業者などによって設立された。

2020年4月から、新型コロナウイルス感染症対策の特例的措置として、オンライン診療・服薬指導の実施条件の規制緩和が行われて関心度が高まっているが、その一方で課題が見えてきているのも実情である。

そうしたなか設立された「地域スマート医療コンソーシアム」は、遠隔医療地域医療の課題をどのようにとらえ、そしてどのように解決していこうと考えているのか? 理事長である千葉大学医学部附属病院患者支援部部長・特任准教授の竹内公一さんに話を聞いた。

■遠隔医療を普及させるため、医療と患者をつなぐ橋渡しをする


――まず、地域スマート医療コンソーシアムが設立されるにいたった契機からお聞かせいただければと思います。

竹内:もともとは、J:COMさんの社内ベンチャーのプロジェクトをされている方が、千葉大学の履修証明プログラムにある「遠隔医療マネジメントプログラム」を受講されたことから始まります。その方は、遠隔医療はケーブルテレビを使って実現できるはずだという信念をもっている方でした。その方を応援する形で、千葉大学附属病院の私たちのチームがプロジェクトのお手伝いをするようになったことが、コンソーシアムにつながっていく、そもそものきっかけだったと思います。

――大学の履修証明プログラムの受講から始まったというのは、興味深い話ですね。「遠隔医療マネジメントプログラム」とは、どのようなものなのでしょうか?

竹内:まず、履修証明プログラムとは、社会人などの学生以外の者を対象としたもので、いわゆる生涯学習の一環として提供しているものです。「遠隔医療マネジメントプログラム」はそのうちのひとつで、遠隔医療の仕組みと現場をつなぐ橋渡しをする人材を養成しようという講座です。

遠隔医療はさまざまな類型がありますが、いずれも最近まではあまり活発でなかったといえます。その原因は技術が劣っているからではなく、現行の仕組みが残念ながら、臨床現場の医師や患者さんに届いていないからではないか、その橋渡しをする人材が不足しているからではないかと考え、「遠隔医療マネジメントプログラム」をつくりました。

具体的には、遠隔医療の実際の導入や運用、開発に活躍できる人材の養成を目的とした講座で、導入に際して必要な実践的な分析法や評価の学習を通じて、継続的に遠隔医療の普及に貢献する能力を身につけてもらうための講習を行っています。


――「橋渡しをする人材」というのは、具体的にはどういうイメージでしょうか?

竹内:つなげたい人たちがどういうふうに行動するのかがよくわかっている人をイメージしていただけるとよいと思います。医師はどういう特性をもっていて、何を欲しているのか、患者さんは何に困っているのか、そして技術に関しては何が強みなのか、弱点があるとしたらどうやったら補えるのか、といったことを考えられるのが、私たちが考えるマネジメント人材です。

――なるほど。そうした大学のプログラムでの出会いから始まって、コンソーシアムを設立するまでにいたったのはなぜでしょう?

竹内:社内ベンチャーからスタートしたJ:COMさんの遠隔医療の実証実験が2019年に行われました。J:COMさんの担当者が、お客様の家庭のテレビにデバイスをつけて、患者さんが使えるところまで説明し、さらには初めてのオンライン診療には立ち会うといった形で、人・設備などケーブルテレビの特性を生かした遠隔医療の実証実験をしたのです。もちろん、医療機関や医師のサポートも行いました。そのときに現場から出てきた課題を学び、知識を共有するための組織として、コンソーシアムを設立するにいたりました。

――設立時のコンソーシアム参画事業者を見ると、医療機関、保険調剤薬局事業者、オンライン診療プラットフォーム事業者、ヘルスケア関連事業者、ケーブルテレビ事業者で構成されていますが、今後はより幅広い参画企業や団体が出てくるのでしょうか?

竹内:そうですね。遠隔医療を普及させるためにも幅広く参加を受け付けています。現時点ではたまたまケーブルテレビが中心になっていますが、家にアプローチできるサービスであれば、たとえば街の電気屋さんのグループであったり、警備会社、ガス会社、電力会社でもありえる話だったと思っています。そのなかで最初がケーブルテレビだったというのは、どの家庭にもあるテレビが使えて、地域ごとに拠点となる局と人がいて、その人が患者さんや医療機関、医師のサポートを提供できるという強みがあったからです。


■オンライン診療や地域医療の課題とコンソーシアムの役割



――現状のオンライン診療の普及状況をどのようにとらえていらっしゃいますか?

竹内:現状としては、トライ&エラーというか手探りの状況が続いていると思います。慎重な医師たちから見れば、対面に比べてどうなのかという問題があり、一方でアクセスが悪い地域などでは早く普及させようという声があります。しかしそれは、それぞれがバラバラの視点から話をしているのであって、議論としてはなかなか噛み合っていないというのが実情ではないでしょうか。

そういうなかで、私たちは患者さん側の課題を克服していこうというスタンスです。医療側の課題は、たとえば糖尿病学会や腎臓病学会といったそれぞれの学会が、医療の専門家としての立場から、オンライン診療という技術がどの程度の価値をもつのか、ということを今後見極めていくと思います。


――オンライン診療や地域医療の課題はどのようにとらえていらっしゃいますか?

竹内:コロナ禍のなかで初診からのオンライン診療が認められたりと話題性は高まってきましたが、いろいろな調査結果などから判明しているように、いかんせんサービスを届けたい高齢者や、医師の地域偏在などの課題が多い地方にあまり届いていないというのが実状だととらえています。

そういった課題に対して、ケーブルテレビは地域ごとに局があるので地方でも対応でき、高齢者であっても、テレビはすでに家庭のなかにあって、日常的に使い慣れているリモコンで操作するというのが、大きなポイントになると思っています。

――コンソーシアムは名称として「スマート医療」を名乗られていますが、ここでいう「スマート医療」とはどういったものまでを射程に入れているのでしょう?

竹内:オンライン診療やオンライン服薬指導を皮切りに、患者さんの生活を診る、重視する医療をめざしていきたいと思っています。いま、生活を可視化できるさまざまなツールが出てきていますが、まだ規制などもあって医療の現場ではあまり活用されていません。そうしたIoT技術で集まってくる情報や、患者さんの行動変容も数値化できるようになってきているので、将来的にはそれらを活用できる医療を「スマート医療」としてイメージしています。

――そうした将来像を実現していくために、コンソーシアムが果たしていく役割とは何でしょうか?

竹内:コンソーシアムとしてまずやらねばならないことには、普及や人材の交流、知識を高めていくための研修などがあります。とくに人材の交流と研修では、将来を見据えながら、いまある技術やシステムをどのように融合させて、どのように届けるかまでを議論していくのが重要になってくると思います。

また、コンソーシアムという緩い連携だからこそ、各地域の実情に合わせながら進めていくこともできるはずです。たとえば地域の病院によって強みも異なりますし、山間部と離島でも事情が異なりますから、日本全国で統一的に進めるよりも地域ごとに進めるほうがはるかに現実的であり、円滑に物事が回るのではないかと考えています。

コンソーシアムがそうした役割を担いながら、まずは遠隔医療を普及させていければと思っています。

取材・文:編集部/撮影:齋藤葵

地域スマート医療コンソーシアム
https://cons-tch.jp/


竹内公一(たけうち・こういち)

地域スマート医療コンソーシアム理事長。千葉大学医学部付属病院 患者支援部 部長・特任准教授。
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Medical DX編集部

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