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Medical DX編集部 2021.6.30

眼科の遠隔診療に光〜スマホで行えるスリットランプ検査技術の現在

OUI Inc.発表のプレスリリースより「Smart Eye Camera(SEC)」

昨年来、新型コロナウイルス感染症の感染拡大が進むなか、世界各国でも対面とオンラインを組み合わせるかたちで、オンライン診療の普及が進みつつある。

日本でも遠隔診療に適する診療の仕組み、診療報酬に関する問題の解決などの議論がされる一方で、遠隔診療に対応する機器の開発が進んでいる。とくに遠隔診療においては、適切な映像・画像処理がなされれば、診療科によっては大きなメリットを有することになる。

その診療科のひとつがじつは眼科だ。遠隔診療は難しいと考えられてきた眼科だが、画像データを共有することによって、専門的な診察が可能になるのではないかと期待されている。そしてその眼科の診察において重要な、前眼部検査用の細隙灯顕微鏡(スリットランプ)に、大きな技術革新が起こっているのだ。

OUI Inc.「Smart Eye Camera(SEC)」


スリットランプによる検査では、細い光を当てて、角膜、結膜、眼房、虹彩、水晶体など、眼球各部位の状況を観察する。それによって角結膜炎、虹彩炎、白内障、緑内障といったさまざまな疾患を診察していく、というものである。

これまでも、細隙灯顕微鏡の小型化における技術は進んでいたが、ここ数年開発が進んでいるのは、スマートフォンに装着し、動画や静止画として記録できる、という技術だ。

その日本発の一例が、慶應義塾大学医学部の眼科医が2016年7月に立ち上げたベンチャー企業、OUI Inc.(ウイインク)が自社で開発している「Smart Eye Camera(SEC)」だ。ゼロからiPhoneのアタッチメント型医療機器を開発し、前眼部検査が可能となる機器を、約1年半で完成させたものである。

OUI Inc.発表のプレスリリースより「Smart Eye Camera(SEC)」検査の例

iPhoneのカメラと光源を利用した眼科診療機器としては本邦初のもの。動物実験を行って既存機器と同等の性能を実現したのち、2020年8月に人間の眼における臨床研究結果をMDPIに論文として発表した。

日本人の白内障患者・64名の眼(128眼)を、最初に眼科医が従来の固定式細隙灯顕微鏡で確認、次に非眼科医がSECで撮影した画像を眼科医が評価するというかたちで臨床が行われ、結果として既存の細隙灯顕微鏡検査と同等の信頼性のある診断結果を証明したのだ。

ちなみにスリットランプ診察のみならず、拡散光診察もスマホ1台で行えるため、遠隔地などの場所を選ばず、眼科的診察を行うことが可能となった。SECは世界規模での展開を視野に入れており、アフリカ南部のマラウイ共和国では、すでに診察に試験導入されている。

世界の失明人口は3,600万人、30年後には1億2,000万人を越えると言われており、その約半数は白内障によるものだという。OUI Inc.は、2025年までに世界の失明を半分に減らすことを目標として、失明のない世界を目指すという。

MITAS Medial+タカギセイコーの「モバイスリットランプMS1」


また、スマートフォンの機種を問わず、スリットランプ検査が行える「モバイスリットランプMS1」が2020年9月から発売されている。眼科医によるベンチャー・株式会社MITAS Medialと、プラスティック製品などを主に製造してきた株式会社タカギセイコーとの共同開発によるものだ。

株式会社MITAS Medialプレスリリースより、「モバイスリットランプMS1」使用例

眼科診療の経験がない人でも必要な問診・眼画像が撮れるシステムとして、現在80か国で販売を開始しており、MS1と専用アプリを使用しての遠隔診療システムが2020年1月からカンボジアの首都プノンペンにある外資系総合病院で採択され、今年4月からはモンゴルで初の遠隔眼科検診プロジェクトを開始した。

JICA(独立行政法人国際協力機構)による2020年度第一回「中小企業・SDGsビジネス支援事業」に採択こともあり、さらなる展開にも注目される。

また、同様のスマホ用スリットランプ検査機器としては、スマートフォンやコンパクトデジタルカメラ用のコンバージョンレンズを製造する株式会社井澤が製造する「スリットランプMETORI-50」を、株式会社エムイーテクニカを販売元として発売している。

一般的に普及しているスマートフォンへのアタッチメントということで、場所を選ばず手軽に扱えること、さらにいずれも既存機器より約1/10ほどの安価で提供できることから、今後よりいっそうの技術開発が期待されるところだ。
 
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