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加藤 泰朗 2021.4.12
遠隔医療のDX

続々スタート! 5Gを活用した遠隔医療の実証実験

■世界で進む5G普及を見越した遠隔医療


5Gの普及を見越し、高速・大容量の通信能力を活かした遠隔医療のかたちを模索する動きが世界で広がっている。

5G先進国・中国では、すでに2019年にブタを使った実験で、5G遠隔操作外科手術を成功させている。新型コロナウイルス感染症が流行の兆しを見せた2020年2月には、北京と武漢の病院を5Gネットワークでつなぎ、遠隔診療を実施している。

アメリカでは大手通信業社のベライゾンが2020年2月、ジョージア州にあるエモリー大学付属Emory Healthcareと戦略的パートナーシップを締結。5G対応の医療トレーニング用ARVR技術を活用して、救急車から救急治療室(ER)まで、あらゆる現場に遠隔医療・遠隔患者モニタリングを提供するテストを実施している。

5Gを活用した遠隔医療実現への動きは、日本でも見られる。以下に、今年(2021年)3月に発表された注目の2つの実証試験をまとめる。

■光回線とローカル5Gでつなぎ、遠隔医療でがんを発見


3月24日、長崎県、長崎大学病院、長崎県五島中央病院、社会福祉法人なごみ会、井上内科小児科医院、NTT西日本グループは、ローカル5G*を使った遠隔診療支援に関する実証事業についての結果を発表した。

実証事業は、総務省が公表した「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」の課題のひとつ、「専門医の遠隔サポートによる離島等の基幹病院の医師の専門外来等の実現」を受託し、1月12日〜3月3日の1カ月半にわたって行われたものである。

長崎県には971の島があり、そのうち有人離島数は51島(ともに全国1位)。離島人口は124,462人(2018年実績)で、県の人口(1,377,187人)の約9%を占める。多くの離島からは高度な専門知識をもつ医師のいる医療機関へアクセスすることが容易でなく、専門的な医療を受けにくい状況にあった。今回の実証事業では、参加した6者がもつそれぞれの強みを活かし、相互に連携・協力しながら、こうした地域の課題を解決する方法を探った。

実証事業では、「専門医の遠隔サポートによる高度専門医療の提供」と「高齢者施設等における遠隔診療・ケアサポート」の2つが行われた。

前者の事業では、本土の長崎大学病院と離島の中核病院・五島中央病院とをNTT西日本が提供する光回線で接続し、五島中央病院内にはローカル5Gを構築。4K内視鏡や部屋全体を撮影する4Kカメラなどを使って撮影した五島中央病院での診療の映像を、ローカル5Gと光回線を使ってリアルタイムに長崎大学病院に伝送し、診断の正確性や扱いやすさ、治療効果などを検証した。4K内視鏡カメラで送られてきた画像では、従来は食道炎と鑑別することがむずかしい食道がんを発見できたという。

「専門医の遠隔サポートによる高度専門医療の提供」の実証内容

後者の事業でも、同じく光回線とローカル5Gを使って、離島にある高齢者施設とかかりつけ医のいる医療施設とを接続。施設で働く看護師が装着したスマートグラスから送られる情報をもとに、医師がオンライン診療を正確に行えるかなどを確認した。

「高齢者施設等における遠隔診療・ケアサポート」の実証内容

2つの実証事業で、遠隔診療支援ツールとして十分実用可能であることがわかった。6者は、引き続き取り組みを継続し、ほかの離島医療圏や他都道府県でも活用できるモデルになるよう検討を続ける。

*ローカル5G:地域・企業主体で、自らの建物内や敷地内などの特定エリアに自営で構築・運用・利用する5Gネットワーク

■5Gで伝送した画像でAI画像診断補助を行う


5Gを活用した遠隔医療をさらに進める実験が3月上旬に行われた。AIメディカルサービスとソフトバンクは3日・4日の2日間に、5Gで伝送した内視鏡検査画像をAIに画像診断補助させる実証実験を行った。「内閣府 戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」で採択された、「AIホスピタルによる高度診断・治療システム」の社会実装に向けたプロジェクトとして実施した実験である。長崎の実証事業と同様、離島や僻地での医療格差解消をめざし、さらにAIを活用することで、高度な専門知識をもつ医師の不足という問題にまでリーチするものである。

実験ではまず、内視鏡専門医が伝送映像を比較した。内視鏡装置とモニターをネットワークで接続し、あらかじめ撮影した内視鏡検査の映像を5Gと4G経由でモニターに伝送。画質やスムーズさ、病変の確認可否について、それぞれを目視で確認して、通常の内視鏡検査時と比較した。

さらに、内視鏡検査の映像から直接切り出した画像と、同じタイミングの画像を5G/4Gで伝送したうえで切り出したものとを用意し、AI画像判定システムで読み込み、疾患有無の確率を比較した。

伝送された内視鏡検査の映像を確認する様子(右)とAI画像判定システムの画面(左)

内視鏡専門医による伝送映像の比較では、4Gでは画像の乱れがあり、小さな病変を確認できなかったり、判断に迷う場合があったが、5Gでは画像が鮮明で、微細な血管やポリープなども鮮明で確認しやすいことがわかった。AIによる画像判定では、5G/4Gを経由した画像でも、内視鏡から直接画像を読み込んだ場合とほぼ同等の正しい数値を算出できた。

5GおよびAI画像判定システムの有用性が十分に確認できたことを受けて両社は、今後もシステム開発を共同で進め、AIホスピタルプロジェクトの医療AIプラットフォームへ実装することをめざすという。


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WRITTEN by

加藤 泰朗

1973年生まれ。人文系・建築系・医学看護系の専門出版社を経て、独立。
フリーランスとして、編集・ライティングを行う。
難しいことを楽しく、わかりやすく伝えることを大切にしています。
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