
■AI活用がもっとも期待される画像診断支援
医療分野におけるAI活用においてもっとも進んでいる領域といえるのが、画像診断支援だろう。AIは、正常な細胞からなる組織画像とがん細胞を含む組織画像を見分けるといった画像解析の場面において、大きな力を発揮することが期待されている。
日本において発症の頻度が高い疾患で、罹患数、死亡数ともに増加傾向にある大腸がんは、前がん病変である腫瘍性ポリープから発生することが明らかになってきている。そのため、早期発見し、内視鏡的切除を行えれば、大腸がんの罹患率を76~90%抑制し、死亡率を53%抑制することができるという報告が、アメリカではなされている。
そこで、早期大腸がん、および前がん病変を発見するための大きな力として期待されているのが、2020年11月30日に医療機器として承認され、21年1月12日から国内での販売が開始された「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」だ。
■リアルタイムで病変が疑われる部位を自動検知
2016年からNECと国立がん研究センターとが連携し、10,000病変以上の早期大腸がん、および前がん病変の内視鏡画像250,000枚(静止画・動画)を専門医の所見とあわせてAIに学習させ、開発した「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」は、病変が疑われる部位をリアルタイムで自動検知するソフトウェアだ。

その特徴としては、内視鏡から映し出される画像全体を網羅的に、かつ瞬時に解析することにある。また、発見がむずかしいとされている表面型・陥凹性腫瘍を重点的にディープラーニングしていること、そして主要内視鏡メーカー3社の内視鏡に接続が可能という使い勝手のよさも特徴に挙げられるだろう。
こうした内視鏡画像解析AIが登場することで、内視鏡医とAIが一体となって検査するが可能になる。それによって、内視鏡医が意識していなかった場所も意識できるようになり、診断精度の改善・向上が期待できる。言い換えれば、AIが人間の視野の限界を補うことで、大腸内視鏡検査中の大腸がんの見逃しを回避できる可能性が高まるということだ。
■「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」がめざす未来
今後の「WISE VISION 内視鏡画像解析AI」の展望としては、人間には認識が困難とされる陥凹性病変や平坦型腫瘍の学習をさらに進め、その精度をより上げていくこと、また大腸病変の質的診断や大腸がんのリンパ節転移の予測研究を進めていくという。
さらには、CT画像、病理画像や分子生物学的情報などの情報とリンクさせ、より利用価値の高いマルチモーダルなリアルタイム内視鏡画像診断補助システムをめざすとしている。
高度医療や個別化医療、遠隔診断の実現に向けても、さらなる開発研究が望まれるといえるだろう。
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